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概要

九大広報 Vol.99++

大学から生まれた新しい芽、つまりアイデアを民間企業と一緒になって形にしていくことも大学の大きな使命のひとつです。そして、技術開発者の育成や国際連携、将来のサイエンスを作っていくことも大学の役割です」 さらに佐々木センター長は人材育成の大切さを語ります。 「エネルギーの技術開発には、20年、30年といった歳月を要します。トヨタさんでも燃料電池自動車の市販までには23年もの時間がかかりました。言い換えれば、技術開発と並行して人を育てていき、技術をバトンタッチしていきながら初めて製品化されていくものなのです。だからこそ、エネルギー分野での人材育成はとても大事で、それができるのが大学です」 水素エネルギー国際研究センターでは、センター内に水素エネルギーや水素社会をわかりやすく解説するショールームを7月に開設し、九州大学の学生および一般の方々に開放していきます。 「夏休みには、ぜひ水素社会の将来を担う子どもたちや学生さんにたくさん来ていただきたいですね。ここで水素社会の未来に触れることで、いずれ日本や世界を変えていくような人材が生まれることを期待しています。若い皆さんがこれからの主役です」本格的なスマートキャンパスの実現へ 最近、スマートハウスという言葉を耳にする機会が増えました。スマートハウスとは、エネファームや太陽光発電などのマイホーム発電設備を備え、エネルギーの自給自足ができる住宅のことです。 実は、伊都キャンパスでもスマート化が進んでいます。 「伊都キャンパスの複数の食堂でエネファームを導入していますし、世界最新型の大型燃料電池も試験的に運用されています。さらに太陽光や風力によって作られた電気も活用していて、それらがどれくらいの電気を作り、キャンパス全体で二酸化炭素をどれくらい削減しているかがひと目でわかるシステムも作っています」 また、九州大学では、市販された燃料電池自動車「MIRAI」を公用車として導入しました。また、その車の給油所代わりとなる水素ステーションもキャンパス内に設置されています。 九州大学は、平成26年度にグリーンアジア国際戦略総合特区における「スマート燃料電池社会実証」事業を実施し、伊都キャンパスは水素エネルギーや再生可能エネルギーの研究の場としてだけではなく、社会実証の場としても活用されているのです。 水素エネルギーの研究は、一部の学部だけのものではありません。水素社会の実現に向けては、九州大学のあらゆる学部との接点が増えてくると、佐々木センター長は語ります。 「冒頭に経済の話をしたように、エネルギーと経済は切っても切れない関係にありますし、新たなエネルギー社会を形成するには、新たなルールづくりも必要になってくるでしょう。そこでは法的なものを整備する必要もあると思います。さらには、それぞれの国や地域の文化や資源も関係してくるでしょう。九州大学がこれからの水素社会をリードし続けていくには、総合大学としての強みをどれだけ活かせるかが大事なのです。これからは、人社系の先生方ともコラボレーションしながら、さまざまな成功事例を作っていきたいですね」 もしも、今回の特集で地球温暖化問題や水素社会に興味がもてたなら、自分の専門分野で何ができるのかを考えてみるのも良いかもしれません。これからの地球のため、これからの世代のために、できることはきっとあるはずです。佐々木 一成昭和62年に東京工業大学工学部を卒業後、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で工学博士号を取得。平成7年にドイツ・マックスプランク固体研究所の客員研究員。10年間の在欧後、平成11年に九州大学大学院総合理工学研究院 物質科学部門の助教授となり、工学研究院機械工学部門の教授を経て平成23年に主幹教授。現在、次世代燃料電池産学連携研究センター長も兼務。▲伊都キャンパス内で作られ、使われる電気がひと目でわかるエネルギーインフォメーション06 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.07