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概要

九大広報 Vol.99++

公共放送には非常に大きな責任がある。―― 日本を代表する企業のトップからNHKの会長への転身。会長職を引き受けるお気持ちになったのはどうしてですか。籾井: 70歳を過ぎた私に声がかかったことを意気に感じ、無心に引き受けてみようと思ったんです。でも、実は、引き受けても最終的には選ばれないだろうと思っていたんですよ。私のようなサラリーマンで取り柄もない人間をよく発見したなと思います。―― がらりと違う世界に入られて、何かとご苦労も多いのではないですか。籾井:確かに苦労も無いわけではありません。でも難しい局面であればあるほど、常にそこに飛び込んでいく方がいいと思っています。―― 「逃げない」とおっしゃっていましたね。籾井:「逃げずに仕事をする」のが私のやり方と思っています。NHK会長になってから常に考えてきたのは、公共放送には非常に大きな責任があるということです。日本には放送法というものがありまして、その法にある「事実に基づいて公平・公正、不偏不党。何人にも規律されず」という言葉を、唱えながら過ごしてきました。何度も口にすることで、自分自身もそうですし、周りの職員にもあらためて公共放送のスタンスを理解してもらうように努めています。視聴者のみなさんには、政治に興味をお持ちの方、文化に興味をお持ちの方、スポーツに興味をお持ちの方など、いろいろな方がいらっしゃいますから、バランス良く放送していくことが大事です。そして何よりも事実を外さないこと、なおかつ、その上で公平・公正であることが大事ですね。ただ実際には、こうして言葉にする以上に難しいことなんですよ。私自身が番組の制作に直接携わっているわけではありませんから、職員のみなさんにそのようなスタンスを常に伝えることが私の役目です。―― 放送の世界ならではのわくわくするような楽しさってありませんか?籾井:ありますねえ!「うまくできているな?」と思う番組は見ていてほんとうに楽しいですね。報道番組や時代劇などNHKが力を注ぐ分野も多く、感じ入りながら見ています。―― NHK会長としての夢をお聞かせいただけますか。籾井:NHKがより良くなっていけば、私はそれで十分です。確実に仕事をして任期を終えた後に「籾井もよくやったな」と言っていただけるのであれば、それが最高の幸せです。―― そもそもどうして九州大学に進もうと思ったのですか。籾井:私は筑豊の出身で7人兄弟でして、すでに上の3人が大学に通っていましたから、経済的に大変でした。当時は炭鉱も不景気になっていましたから、母親が「あんたも大学に行ってよかばい。でも博多の国立大学にしんしゃい」と言うわけですよ。そうすると九州大学しかないわけです。―― どうして経済学部を選んだのですか。籾井:実は、高校3年の3学期まで理系に進むつもりでした。ちょうど日本の鉄鋼が伸び盛りの時代で、工学部志望だったんですよ。ところが、なぜか物理が嫌いでしてね(笑)。どうしても物理との肌合いが悪くて。「そもそも物理って何だ?」とか色々考えてしまって、これは手に負えないな、と。これで理系に進んだら一生後悔するぞと思いまして。―― それで文系の経済学部に進まれたのですね。籾井:文系には文学部や教育学部とかもありますが、それも私には手に負えない(笑)。そこで法学部か経済学部の二択になるのですが、法律ありきの法学部よりも経済学部の方が自由だなと思って経済学部を選びました。―― 大学時代はどのような学生だったのですか。籾井:まじめな学生ではなかったですね(笑)。教養部時代は張り切って毎日通っていましたが、試験では友人のノートを借りたり、友人の代返をして先生に叱られたりね。あとはアルバイトをして、よく旅行に出かけました。九州一周とか北海道とかね。【聞き手】九州大学理事やまがた  ゆ み こ山縣 由美子08 KYUSHU UNIVERSITY Campus Magazine 2015.07