クローズアップ@

新しい大学院制度
九州大学副学長 矢田俊文
「学府」・「研究院」制度と管理・運営システム

平成7 年に定められた「九州大学の改革の大綱案」は,平成12 年度の「学府・ 研究院制度」の導入等でほぼ実現されました。また「大綱案」で構築を目指すと した「センター・オブ・エクセレンス(COE )」の器となる新キャンパスの建設も, 3 月に「第工区造成基本設計」が評議会で了承され,いよいよ造成工事が本格 着工されます。
本号のクローズアップは,@で「九大広報」第9 号で概要を紹介した「学府・研 究院制度」を法規的な側面から解説し,Aで「第工区造成基本設計」決定に至 る経緯を説明します。

「大綱案」に始まる改革

平成7 年3 月評議会で決定された「九 州大学の改革の大綱案」は,大学が自ら 策定した改革の長期計画で,こうした長 期計画の策定は全国の国立大学でも余 り例をみない先駆的なものです。
「大綱案」は「国際的・先端的研究教育 拠点(C0E )の形成」と「自律的に変革し, 活力を維持し続ける社会に開かれた大 学の構築」の二つを基本的なコンセプト とし,そのために「組織の再編・整備」,「教 育・研究の改革」,「管理・運営の強化」の 三つの側面から多面的な改革案を提示 しました。
なかでも,「全学の大学院の重点化」と「研 究院制度」の導入は,改革の中核的位置 を占めているものです。大学院の重点的 整備は,数理学,比較社会文化(平成6 年), システム情報科学(平成8 年),人間環境 学(平成10 年)など相次ぐ独立研究科 の設置,平成9 年4 月の医学系と工学研 究科からはじまり,平成12 年4 月をも って完了した各学部の「重点化」によって, ほぼ実現する運びとなりました。また, 全国の国立大学で始めて導入される,い わゆる「研究院」制度は,平成11 年5 月 の学校教育法の改正と,これを受けた国 立学校設置法,国立学校設置法施行令(政 令),国立学校設置法施行規則(文部省令) などの改正などによって,その内容も含 めて法的に明確に規定され,4 月から実 施されることになりました。
「研究院」制度の趣旨と内容については, 「九大広報」第9 号(1999 年11 月)に紹介 しましたので,今回は関連法規の整備に 基づく,組織上の位置づけについて解説 いたします。

法の整備_学校教育法

まず,今回改正された学校教育法では, 第53 条の「大学には,学部を置くことを 常例とする。ただし,当該大学の教育研 究上の目的を達成するため有益かつ適 切である場合においては,学部以外の教 育研究上の基本となる組織を置くこと ができる。」の規定に加えて,新たに第66 条に「大学院を置く大学には,研究科を 置くことを常例とする。ただし,当該大 学の教育研究上の目的を達成するため 有益かつ適切である場合においては,文 部大臣の定めるところにより,研究科以 外の教育研究上の基本となる組織を置 くことができる。」と規定しました。これ によって,従来の「学部」とともに,「研究科」 も教育研究上の基本組織となることを 明示するとともに,ただし書きによって, 「研究科」以外の基本組織の設置が可能 となりました。

平成12 年度になって九州大学は,全く新しい大学院制度,「学府・研究院制度」を導入した。旧理学研究科,数理学研究科では,さっそく玄関に「理学研究院 数理学研究院」の表示がなされた。

前のページ ページTOPへ 次のページ
インデックスへ