TOPICS 3 九州大学は壁を越える

増設される「先端科学技術共同研究センター」と「コラボ・ステーションII」

 筑紫地区キャンパス(春日市)と病院地区キャンパスに建設中の二つの建物をご紹介します。それぞれ、大学内外を隔てる壁を越えた産学連携とそれによる新産業の創生、部局間の壁を越えた学際的研究の推進という、九州大学に求められる大きな役割を担う施設です。

産学連携を推進する「先端科学技術共同研究センター」

−全学の活動拠点、新棟の建設が進行中−

先端科学技術共同研究センター長 教授 松尾 一泰

一、重要性を増す国立大学の産学連携

 わが国の経済・産業はバブル崩壊後現在も長期低迷を続けており、この低迷状態から脱出し、再生を図る方策として、政府は「科学技術創造立国」を標榜しています。この具体化策の一つが、大学の研究成果をもとに新産業、新規事業を創出することです。

 平成十一年には日本学術審議会も大学の果たすべき役割として、これまでの「教育」と「研究」に加えて、第三の柱として「社会への貢献」を明記しました。特に、大学に在籍する研究者数及び国内研究者総数に対する大学研究者数の割合を国別で比較すると、両者ともにわが国が世界一位であり、大学における「産学連携」に対する国民の期待がいよいよ大きくなっている所以です。

二、当センターの基本方針と組織体制

 当センターは一九九四年に大学と社会・産業界との産学連携の窓口として設置されました。一九九九年にリエゾン部門とプロジェクト部門からなる大幅な組織拡充が行われ、産学連携、技術移転、産学共同研究プロジェクトの推進などに積極的に取り組んでいます。

 現在、当センターは「産学連携による豊かな地域社会の実現」を基本方針として、「三つの目標と九つの方策」を定めてその実現に努めています。三つの目標は次のとおりです。 (A)プロジェクト部門…先端的プロジェクト研究による高度な産業技術シーズの創出 (B)リエゾン部門…産官学技術移転システムの構築と関連する新しい学問領域の創造 (C)両者融合による…産官学交流による地域社会への貢献

 なお、これらの「地域」には広くアジア地域までを視野に入れています。

 プロジェクト部門は四領域を四名の教授が担当しており、国や財団が募集する産学共同研究プロジェクトに積極的に応募し、高い競争率の中で採択実績を挙げています。また、リエゾン部門は全学的な「産学連携推進機構」(BLO…Business Liaison Office)の中で「技術移転推進室」のメンバーとして、事業推進の中核的な役割を担っています。

三、センター新棟が建設中

 現在、当センターの全学的な活動拠点となる新棟が筑紫地区に建設中であり、来年三月末には完成します。現在の建物はR C(鉄筋コンクリート)三階建て・床面積2000 m2 ですが、これに新棟のRC六階建て・延べ床面積3600m2 が加わります。新棟の外観はこれまでの国立大学ではほとんど見られなかったような、総ガラス張りの斬新なデザインで仕上げられる予定です。館内の共通部分も玄関ホールなどは二階吹き抜けの開放的な空間からなり、交流や休息などが行われるロビーも十分に確保されています。(完成予想図をご参照ください)

 研究室や実験室の配置はリエゾン部門が主に一、二階、プロジェクト部門と共同研究開発スペース(インキュベーション・スペース)が三.六階となっています。これらの中には、リフレッシュ・スペース、研究シーズ評価ルーム、TV会議室などが設けられ、今後のセンター業務の拡充発展を可能にしています。特に、共通スペースについては、ますます増加が期待される九大の教官による産学共同研究を円滑に且つ効率的に推進するため、新しい運営方式により、全学的に開放(供用)されることになっています。

四、産学連携今後の展望

 国立大学の独立行政法人化の進展によっては、共同研究、受託研究、あるいは委任経理金の獲得を増やすなど、適正な産学連携の拡充発展が望まれます。また、九大TLO「産学連携機構九州」との更なる連携・協力も必要となり、当センターの役割がいっそう重要になるものと推察されます。

 一方、当センターは中長期的にはプロジェクト部門を、より広領域をカバーするために八領域へ、リエゾン部門も二領域体制へと拡充する方針です。また、本学が元岡へ移転する計画の中で、当面は当センターのある筑紫地区も病院地区と共に「三極構造」を構成することが構想されており、今後の筑紫地区総合開発の一環として、当センターも今回の新棟に加えて、さらに「インキュベーション棟」や「MOT棟」などの建設を視野に入れながら、全学的な産学連携機能の拡充に貢献することを目的としています。

 当センターは今回の新棟建設を機に、産学連携活動をさらに充実発展させ、豊かな社会の実現に貢献する所存です。関係の皆さんのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

(まつお かずやす 超音速流体力学・衝撃波工学)

コラボ・ステーションII

 九州大学コラボ・ステーション(Kyushu University Station for Collaborative Research)は、科学技術の新たな展開とアイデアを創出する学術研究・情報発信拠点として、平成十二年四月、病院地区に設置されました。一階はセミナー室や談話室、二階は最新の機器を備えた多目的の視聴覚ホールがあります。そして、三階から九階までの共同実験室には、医歯薬の三部局を中心とする十五の研究グループが入り、人間生命科学をテーマとする共同研究プロジェクトが進められています。九月八日(土)には、杉岡総長、村田文部科学省医学教育課長も出席して、第二回研究報告会が開催されました。

 その隣に新たに建設が始まったコラボ・ステーションIIは、その対象を全学に広げ、プロジェクト型研究に加え、P&P(注1)やC&C(注2)といった制度から生まれる研究を含む広範囲な総合研究棟としての利用を目的としています。九州大学が大学院の重点的整備を終えて平成十二年度に設けた「学府・研究院制度」によって、研究・教育組織の編成がそれぞれ独自の論理で柔軟に行えるようになりました。この「学府・研究院制度」の成果を発揮する場所としても、コラボ・ステーションへの期待は高いものがあります。

(注1)P&P

 平成9年度から実施された本学独自の制度「教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト」の略。新たな学問領域の創設や教育の推進を目的とするプロジェクトを募り、年間約2億円の総長裁量経費などを充てて全学的にこれを支援する。目的や内容により三つのタイプに分けられている。

(注2)C&C

 平成9年度から実施された本学独自の制度「チャレンジ&クリエイションプロジェクト」の略。学生から自主研究や調査プロジェクトを募り、採択された年間約10件それぞれに、総長裁量経費から助成金50万円と創造パビリオン内の研究室(共同)を提供して支援する。1年後に成果発表を行い、特に優秀なものには総長賞が贈られる。

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