特集「社会連携」

「社会連携」 概説
 

総務部研究協力課

「社会連携」と「開かれた大学」

 九大広報は,これまで新キャンパス,大学改革の特集を行いましたが,本号では大学改革の一環として推進されている「社会連携」について特集を組みました。「社会連携」は比較的最近になって用いられている言葉であり,従来は「開かれた大学」を使う場合が多く,現在でもしばしば用いられています。どちらも明確な定義はありませんが,語感からくる違いはあります。
 「開かれた大学」には,それまで「開かれていなかった?大学」が生涯学習の進展という社会の要請により門戸を少しずつ開いているといった受身の感じがあります。「学校教育」に対する「社会教育」に高等教育機関である大学がより積極的に参画することを求めるものでした。同一世代の大部分が高等学校卒業である社会人の生涯学習に大学レベルの教育が求められることは必然であったと考えられます。

 これに対し,「社会連携」には大学が互恵の立場で社会とのつながりを深めようとする積極的な感じがあります。教育研究の成果を社会に還元し,生涯学習への対応だけではなく,社会や経済の発展により一層寄与するとともに,大学自身の発展のためにも社会からの支援が不可欠なものとなっていることによります。
 特に現在の経済不況を回復し,さらに新たな発展を期すには大学の研究成果を核に新規産業を創設することが求められており,一歩進んで,大学が育成した人材が自ら新たな事業を起こすベンチャ−・ビジネスも次第に広がろうとしています。また,新キャンパスを中心とする学術研究都市構想の推進に見られるとおり,本学の新たな発展には国・地元自治体・経済界・地域住民の支援が不可欠なものであることは明らかです。

 

社会連携推進の状況

 本学は,現在,「続・九州大学の改革の大綱案」が提起した「企業や市民との研究協力と交流の強化」に関する具体策を推進するため,社会連携推進委員会の審議を基に,関係委員会で検討を進め,産学連携推進機構の発足等一部には既に実施に移されているものもあります。
 本学における社会連携は,多様な分野で推進されていますが,大きく分けると大学の教育,研究,診療の機能ごとに展開されています。教育面では,主に生涯学習に対応し市民個人を対象とする教育の場の設定が中心となっています。研究面では研究成果の社会への還元が中心となります。本学の研究成果を個人が受けとめることは困難であり,おのずから国・自治体・企業等の各種法人が対象となります。診療は,本来,教育と研究に付随するものですが,本学の各病院は地域の中核病院として社会とのつながりの深い分野を担っています。

 

社会連携推進の課題

 本学の社会連携の推進については,幾つかの検討すべき課題があります。順不同で主な事項を列挙すれば次のとおりです。

  1.  九州大学は,世界的水準の教育研究の拠点(COE)を構築し,高度の研究大学として21世紀に飛躍することを目指し大学改革を進めることを明確にしています。従ってこれからの社会連携はこのような九州大学の特性に基づき推進する必要があります。
  2.  社会連携は,ある意味では教職員に負担を課すものであり,本学の教職員のマンパワーを考慮し,本学の教育・研究・診療との調和を図って進める必要があります。
  3.  社会連携は社会の要請が前提となりますが,九州大学として社会の要請の実態を十分把握しているとはいえない状況にあります。このため,体系的にデータの収集を行うとともに社会人の意見を日常的に汲み取るシステムを検討する必要があります。
  4.  社会連携の現場には新鮮な社会感覚が必要となります。国立大学の運営はすべて国が行うことが原則ですが,社会連携を有効に進めるために学生や社会人ボランティアの感覚を活用する余地はないか検討する必要があります。