平成10 年5 月26 日は,あわただしく, かつ歴史的な一日となりました。午前 中には新キャンパス計画専門委員会, 午後には将来計画小委員会で,九 州大学の「新キャンパス造成基本 計画案」が審議決定され,引き続い て開催された評議会において最終 的に了承されたからです。

調査と話し合いを ベースにした計画づくり

 平成3 年10 月22 日の評議会にお いて,福岡市西区元岡・桑原地区を移転候補地とした「九州大学新キャ ンパス移転構想」が承認されてから, 「造成基本計画」決定まで,実に6 年 半近くを要しました。その間,九州大 学総長から福岡市長への新キャンパ ス用地275ha の確保の依頼(平成5 年 1 月),福岡市長から総長へのエリア確 定の報告(平成5 年11 月),総長から市 長への新キャンパス用地先行取得の 依頼(平成6 年2 月),市長から総長へ の土地開発公社により用地取得する 旨の回答(平成6 年3 月)など,用地確 保をめぐる大学と福岡市との話し合 いが,地元の積極的な協力のおかげ で順調に進みました。
  エリアの確定や用地買収が開始 されるとともに,「九州大学新キャン パス基本構想(0 次案)」の評議会 了承(平成6 年3 月)に続いて,「造成 基本計画」づくりが着手されました。 基本計画作成に不可欠な地形,地質, 地下水,気象,動植物生態,埋蔵文 化財など関係事項の基礎的調査が 実施され,新キャンパス計画専門委 員会に随時その結果が報告される とともに,次第に「造成基本計画案」 の輪郭が作られていきました。
  平成8 年11 月には,福岡市教育委員会から「埋蔵文化財調査の中間 報告」がなされ,これをめぐって学内 外の専門家の間で評価が分かれる 事態も生じました。これを踏まえて,平 成9 年7 月の将来計画小委員会にお いて,総長提案の「九州大学新キャ ンパス基本構想における埋蔵文化 財の取扱い方針」が決定されました。
  こうした経過の後,新キャンパス計 画専門委員会は,平成9 年11 月の将 来計画小委員会において「造成基 本計画案」を正式に提案しました。 その後,全学的議論のなかで各部 局からの意見の集約が図られるとと もに,学内外の関連する分野の研究 者や機関からのヒアリングが実施され, その過程で,農業用水の確保難,地 下水塩水化対策,自然環境への配慮, キャンパスのオープン性の確保,産 業廃棄物の取り扱いなど,幾つかの 重要な課題について,一層の検討 の必要性が指摘されました。新キャ ンパス計画専門委員会は,これらの 課題について一つ一つ真正面から 取り組み,課題解決に向けて関係機 関の協力を要請するとともに大幅な 修正を行い,平成10 年5 月に改めて 「造成基本計画案」を提出し,正式 決定の運びとなりました。

未来型キャンパスへ

 「新キャンパス基本計画」では,「基 本的考え方」として,次の5 つをあげ ています。

(1)センター・オブ・エクセレンスにふ さわしい研究・教育施設の整備

 世界的レベルの研究・教育拠点 の形成にふさわしい施設整備を行う とともに,将来の発展に柔軟に対応 できる計画とする。

(2)環境と共生する未来型キャンパ スの創造

 自然地形を残して景観資源とし て活用し,歴史的遺産を包摂すると ともに,再生水の有効活用,省エネル ギー,資源リサイクルなど環境に配慮 した未来型キャンパスを創る。

(3)地域に開かれた魅力的なキャン パス生活の創造

 大学としての象徴性に富む景観を 形成するとともに,地域に開かれた魅 力的なキャンパス生活を創造する。

(4)新しい学術研究都市の核となる キャンパスづくりと地域連携の推進

 糸島半島を中心として福岡から 唐津にいたる地域に展開する「九 州大学学術研究都市」の核となる キャンパスを構築し,地域との積極 的な連携を図る。

(5)キャンパス間の連携に配慮した 新キャンパスの創造

 キャンパス間の連携に配慮し,総 合大学の特色を生かした高度な研 究・教育が十分に機能する新キャン パスを創る。新キャンパスへの移転 が段階的となることから,建設過程に おいても大学の運営が円滑におこ なわれるような移転計画とする。

 具体的には,世界的レベルでの研 究・教育拠点をつくるために,移転予 定キャンパス(80.2ha)の約1.8 倍に あたる141.6ha の有効敷地を確保 するとともに,広大な土地のうち,大 原川上流の沢や南面の緑地など自 然地形を残してこれを景観資源として活用し,さらに,前方後円墳や山城 などの歴史的遺産を包摂するなど, 環境との共生に最大限の配慮がな されています。他方,桜井太郎丸線 と接するエントランス部分を平面タッ チにして,開放的キャンパスにするな ど「造成基本計画案」の大胆な修 正が行われました。また,再生水の 有効活用をはじめ,情報・交通・エネ ルギー・水などのインフラストラクチャ ーについて,学内外の専門家の協 力を得て,21 世紀にふさわしい新技 術を大胆に導入した未来型のキャン パスづくりに努めたいとしています。
  平成10 年5 月7 日には九州・山口経 済連合会,福岡県,福岡市など関係機 関の協力で「九州大学学術研究都 市推進協議会」が結成されました。 今後,協議会のもとで進められる, 糸島半島を中心として福岡から唐津 にいたる地域における学術研究都市 づくりにおいて,九州大学の新キャン パスはその核と位置づけられ,多様な 研究機関の立地や周辺のまちづくりが, 積極的に行われます。こうしたまちづ くりによって,初めて住みよく,学びや すく,かつ質の高い研究ができる環 境が整備されるからです。 なお,造成基本計画全体等は,新 キャンパス計画推進室ホームページ で提供しています。 (http://www.ofc.kyushu- u.ac.jp )


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