トピックス/ アジアに広がるネットワーク―3
拠点大学方式による学術交流計画
次世代インターネット技術のための研究開発と実証実験
情報基盤センター ネットワークコンピューティング研究部門 助教授 岡村 耕二

●拠点大学方式とは

拠点大学方式といわれてもピンと来ない方も多いかと思います。拠点大学方式 とは、日本学術振興会(学振)がアジア諸国との交流において実施しているプロ ジェクトで、規模でいえば学振の他のプロジェクトと比較するとかなり大型のも のです。平成十五年度から日本側は九州大学、韓国側は忠南大学がそれぞれ拠点 となって、「次世代インターネット技術のための研究開発と実証実験」というこ の拠点大学交流プロジェクトが始まりました。学振が日韓でインターネットに関 する拠点大学交流を始めようとしたきっかけは、残念ながら学振が九州大学の日 韓の深いインターネットに関する交流を知っていたからではなく、学振の拠点大 学交流プロジェクトでインターネットに関するものがなく、トップダウン的に始 まったということでした。しかし、それでも九州大学に白羽の矢が立ったのは 我々の日常の努力のたまものだったと信じてやみません。

●テーマの選定

本拠点大学交流のテーマは、韓国側の拠点である忠南大学のコーディネータで ありまた韓国インターネット界の大御所である金大榮教授と協議してずばり次世 代インターネット技術そのものを表す「Development and Operation of the NGI (Next Generation Internet)Technologies」と決まりました。また、 これを「次世代インターネット技術のための研究開発と実証実験」と和訳して、 プロジェクトの内容の検討に入りました。当初、私と金教授が考えていたのは、 APAN( Asia Pacific Advanced Network )というアジアの先端的インタ ーネット研究コミュニティの活動に利用しようというものでした。しかし、九州 大学でコーディネータに指名された有川節夫副学長との議論で、APANだけで はなくもう少し広い範囲をカバーするように考えました。方針として、九州大学 のインターネットに広義に関連する研究者がなるべく本プロジェクトに関われる ようにとしました。そこで、主なテーマとして、本プロジェクトの主テーマであ る、「次世代インターネット基盤技術の研究開発」に加えて、「e-Learning 」、「GRID」、「セキュリティ」、「バーチャルリアリティ」を加えました。金教授はこ の九州大学からの提案に対して、すぐにそれを承諾して頂き、新しいテーマにも 賛同して頂きました。おおまかな方針として、全体の半分はAPANの活動にし て、残りをAPAN以外で使おう。さらにその残りの半分、つまり、全体の四分 の一は九州大学と忠南大学の研究者で、その残りつまり、全体の四分の一をそれ 以外のインターネット研究者で活用するようにという方針を決めました。これは あくまでおおよその割当なのでもちろんきっちりその通りというわけではありま せんけれど。また、その後聞いた話だと、韓国側の拠点大学である忠南大学も九州 大学と同様に、できればAPANに参加していない忠南大学の他の研究者も参加 できるようにして欲しいといわれているそうです。そのためこちらから提案した アプリケーションを盛り込んだテーマ案がちょうどよかったようでした。

●プロジェクトの開始

本拠点大学方式もやはり具体的な計画書の作成が必要です。しかし、私の研究 室と金教授の研究室は数年前よりいくつかのインターネットに関わる共同研究実 験をはじめておりましたので、具体的で迫力のある計画書をすぐに作成すること ができました。最終的には、有川副学長と私、国際交流課長が半蔵門にある学振 へ赴き、その内容を説明しました。学振での受けはよくて、あとは本当にとんと ん拍子で進みました。そして、八月一日に記念すべき第一回目のコアメンバー会 合を九州大学で行ない、引き続いて八月五日に忠南大学でリーダー会合を行ない ました(写真)。九月五日に忠南大学で本プロジェクト開始セレモニを行ない、 正式に本拠点交流プロジェクトが開始されました。年間のべ二〇〇人の日韓の研 究者の相互交流、一〇〇人規模のワークショップを年二回開催、教官の一週間程 度の短期滞在、博士学生の二カ月の長期滞在を可能とするインターネット分野の 拠点大学交流プロジェクトが開始したのです。プロジェクトは平成十五年に始ま り、期間は四年間、しかし、成果が良ければもう四年、さらにはその後二年の延 期が可能なので、結局最長十年のかなり長いプロジェクトになりそうです。本稿 を読まれている読者のみなさんの中で、次世代インターネットに関して韓国と共 同研究をなさっている方で、もし条件に合われる方がいらっしゃいましたら、御 一報頂ければと思います。

(おかむら こうじ/通信工学)
Eメールアドレス:oka@cc.kyushu-u.ac.jp

韓国忠南大学で開催されたリーダー会合後の記念撮影。
後列右から3人目が金教授。前列右から3人目が岡村助教授。

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