トピックス/ アジアに広がるネットワーク―2

韓国研究センター創設五周年を迎えて

韓国研究センター長・法学研究院教授 石川 捷治

 
石川捷治
九州大学韓国研究センター長
李相億
ソウル大学教授(本センター客員教授)
服部民夫
東京大学教授
ルイス先生
オックスフォード大学
ダンカン
UCLA韓国研究センター所長
梅田博之
麗澤大学学長
李仁浩
韓国国際交流財団理事長

慶南国楽団による特別文化公演
高まるセンターへの期待

わたくしども九州大学韓国研究センターは、九州大学の理念と伝統にもと づき国・公立大学における最初で唯一の「韓国研究」を正面から掲げた施設 として、一九九九年(平成十一)十二月に創設(学内措置)され、二〇〇〇年 一月にセンター棟の開所式を行い、本年で五年目を迎える。昨年(二〇〇三年) も十一月二十九・三十日に本センター主催の国際シンポジウムを開催(第三回) したが、今回のシンポジウムは、本センターが五年目を迎えたこともあり、 第一日目は、「世界のKorean Studies,日本のKorean Studies 」というテーマで、世界そして日本の韓国研究の現状 と展望について講演および報告・討論をおこなった。

当日は、韓国国際交流財団の李仁浩理事長と日本における韓国語研究の権 威である梅田博之麗澤大学学長から講演を賜った。また、UCLA韓国研究 センターのダンカン(John Duncan)所長やオックスフォード大学のルイス (James Lewis)先生、東京大学の服部民夫先生をお招きするとともに、韓国 高麗大学亜細亜問題研究所の崔章集所長には韓国からインターネットでご参 加頂いた。韓国ソウル大学の教授であり本センターの客員教授でもある李相 億先生も加わり、世界・韓国・日本の第一線でご活躍の韓国研究者を一堂に 会したシンポジウムを福岡の地で開催できたことは、本センターが世界のコ リアン・スタディーズ・ネットワークの結節点としての機能を十分に発揮し うることを示したものであったといえよう。なお、韓国と会場とをインター ネットで結ぶという企画は、本学大学院システム情報科学研究院の荒木啓二 郎教授をはじめとする九州大学P&P「ITを活用した日韓学術支援」プロジ ェクトの皆様方からの技術提供によって実施できたものである。この場を借 りてお礼を申し上げたい。

また、今回のシンポジウムではあわせて、服部民夫東京大学教授に本セン ターの外部評価報告をして頂いた。服部先生は、本センターが日本の国立大 学で最初の「韓国研究の拠点」として設置されたことを高く評価されるとと もに、「韓国研究は西の拠点として九州大学、東の拠点として東京大学という 二極体制が形成された」として、「この二極が相互に協力することが研究の進 展に繋がる」という期待を表明された。このような、学外からの本センターに 対する期待は、社交辞令という側面を割り引いたとしても、国内・海外を問 わず年々高まってきているように思われる。

崔章集高麗大学亜細亜問題研究所長のインターネットによる討論参加

進む韓国研究のネットワーク作り

現に本センターは、二〇〇二年(平成十四年)四月に文部科学省令に基づ く「学内共同教育研究施設」となったことにより、(一)社会ネットワーク (二)政治経済システム(三)人間環境(四)研究企画の四部門の組織構成が確 立し、本センター専任教授に加えて各部門には各研究院から教授・助教授が併 任として配置され、それぞれ共同研究に従事することにより本センター発展の基 礎が築かれたといえよう。また、国外の研究機関との間では、高麗大学亜細亜問 題研究所をはじめとする韓国の各研究機関やUCLA韓国研究センター、ハワイ 大学韓国研究センターなど海外の著名な韓国研究機関との密接な関係を築いてき ている。

現在は、韓国の複数研究機関で組織された「二十世紀民衆生活史調査団」にも 参加し、長期継続型の本当の意味での日韓共同研究にも取り組んでいる。また、 将来の研究・学術交流の発展に大きな可能性を秘めた「玄海プロジェクト」によ る「光ファイバーネットワーク」(本センターと韓国各地を結ぶ)も現実化して いる。今後は、国内外の幅広い研究者・研究機関との連携による「アジアを先導 する韓国研究拠点の形成」という中期目標を掲げつつ、日韓のみならず広く研究 者の英知を結集して「東アジア・日韓共同生活圏・人間の共生」をテーマとする、 フィールドワークに立脚した総合的地域研究を目指したい。

このような本センターのビジョンは、「アジア総合研究」を基本的目標として 掲げる本学の中期目標とも重なりあうものである。

五年目を迎え、飛行機でいうならば離陸態勢に入り前輪が浮いた段階といえる だろう。はたして後輪をうまく滑走路から離れさせうるか。私たちセンター関係 者は、内外の期待の大きさと責任の重さをひしひし痛感している。今後とも一層 のご指導・ご支援をお願い申し上げる。

(いしかわ しょうじ/政治史・地域研究)

本センターでのワールドカップ日韓共同応援(2002年6月) 「二十世紀民衆生活史調査」による韓国木浦市の調査(2003年6月) 電動車いすによる日本縦断を目指す崔昌鉉さんの本センター来訪歓迎(2003年4月)

前のページ ページTOPへ 次のページ
インデックスへ