マスタープラン策定へ

 福岡市土地開発公社は,福岡市長の要請により作成を進めていた 「造成基本設計」の原案を,平成11年6月に九州大学に提示した。 これを受けて,九州大学では,7月27日の将来計画小委員会での了承のもとに, 学内専門家等と福岡市,土地開発公社,福岡県,都市基盤整備公団の関係者によって構成される 「造成基本設計(案)作成プロジェクトチーム」が設置され, 3号調整池及び道路の取り付け,雨水浸透施設の設置方法, 大原川の沢地法面の形状等に関する検討及び修正作業を行った。

 また,平成11年10月22日の将来計画小委員会で 「新キャンパスにおける交通のあり方について」の基本的考え方が了承され, これを受けて,12月17日の将来計画小委員会において, いままでのワーキンググループ及びサブグループの検討をもとに, 新キャンパス計画専門委員会及び将来計画小委員会等で決定・承認を得た事項を包括的に整理した 「九州大学新キャンパスマスタープランの基本的考え方」及び 「新キャンパスマスタープラン策定プロジェクトチーム」(委員長 矢田俊文副学長)が了承された。

 他方,「新キャンパスのマスタープラン(案)」の作成を 九州大学と共同して行うコンサルタントの選定作業がWTO政府調達協定に基づく 公募型プロポーザル方式によって行われ,平成11年4月に選定委員会 (委員長 渡辺定夫東京大学名誉教授)の設置, 8月11日に官報公示がなされ,約3 ケ月間に渡る慎重な選考を経て, 最終的に11月30日に三菱地所,シーザペリ・アンド・アソシェーツ・ジャパン , 三島設計事務所の 3者による設計共同体(MCM )と正式に契約するに至った。 この結果,平成11年12月から「新キャンパスマスタープラン策定プロジェクトチーム」と MCM 設計共同体との「新キャンパスのマスタープラン(案)」の策定作業が本格化し, これを考慮するとともに,現在の諸条件を前提とした 「新キャンパス造成基本設計全工区(案)」を仮に作成した。

 この「新キャンパスのマスタープラン(案)」は,さきに決定した 「新キャンパスの土地造成基本計画」で明示された5つの「新キャンパス計画の基本的考え方」 をマスタープラン作成において具体化するため,下記の5 点を指針とするものである。


1. 総合大学として新キャンパスの一体的土地利用を可能とする骨格の形成
2. 広大な施設群及び運動施設等の機能的でコンパクトな配置
3. オープンで快適な歩行空間の確保と移動性の重視
4. 丘陵地・沢地等のエコロジーと自然環境を生かした景観の形成
5. 古墳等の歴史的な環境への配慮


 しかし,造成工事が長期にわたり, そのために不可欠な埋蔵文化財等の発掘調査が今後も順次行われるとともに, 環境への影響等になお慎重な配慮が必要であり, かつ関係機関や地元との多角的な調整がその都度必要となることから, いまの時点で全工区にわたる「新キャンパス造成基本設計」を確定することは適当ではなく, 移転スケジュールを踏まえながら造成に必要な条件が整った工区ごとに 順次確定することが合理的である。 そこで,第1次の提案として,第1期の移転に不可欠であるとともに, 造成着工に必要な埋蔵文化財の発掘調査がほぼ完了した, 学園通線の西側の本部・交流ゾーンおよび理系ゾーンを含む第1工区に限定した, 「新キャンパス造成基本設計第T工区(案)」(図)が,3月21日の評議会に提示された。 この「新キャンパス造成基本設計第T工区(案)」を作成するに当たって,とくに配慮した点は, 以下の4点である。(図中の○部分)


1. 第T工区(学園通線西側)大原川上流の沢地(生物多様性保全ゾーン)法面及び周辺は, 現状地形に配慮しながらより自然を生かした法面形状とする。
2. 第T工区中央部北側は,西側の沢地にあわせた形状の法面を形成しながら, 一団の有効敷地を確保する。
3. 第T工区北西部造成高については,南側の造成高との差を縮めることにより法面の発生を低減し,有効敷地の一体化を図る。
4. 第T工区3 号調整池及び周辺については,造成によって本部・交流ゾーンの一体的利用を図る。


「新キャンパス造成基本設計第T工区(案)」の土地利用別面積は,おおよそ, 有効敷地48.2ha,法面 6.0ha,調整池 2.6ha,保存緑地 38.5ha ,合計95.3ha となり, 「造成基本計画」に比較して,有効敷地が1.0 ha,調整池が0.3ha 増加し, 保存緑地が1.3ha 減少するものの,大きな変化はみられない。 なお,環境影響評価,関係機関や地元との協議などに基づき,必要が生じたときには, 骨格を維持しつつ造成の実施過程において柔軟に対応するものとする。

(やだ としふみ)

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