年頭所感

視線を 研究は世界に,教育は学生に

 21世紀の年頭にあたり、所感を述べさせていただきます。

 1991年10月に評議会決定された新キャンパス移転計画は,昨年6月に第T工区の造成工事に着手するとともに,世界の教育・研究拠点にふさわしいキャンパス全体のマスタープラン策定や,私の願いを受けて設立された学術研究都市推進協議会の第3次基本構想案策定も最終段階にあり,275haの用地の約4分の1はすでに国有地となっているなど,順調な進捗をみせております。

 総長就任以来,キャンパス移転前に,本学の教育と研究,そして社会連携の活力を最大限に高めておくこと,すなわちいかなる評価にも耐えられる「強い九州大学の構築」が急務であり,私に課せられた責務と考えて参りました。幸い,優れた矢田・柴田両副学長,各部局長を始めとした教官各位のご尽力と,精鋭である渡辺事務局長以下の職員各位のご協力により,昨年だけでも多くの重要なことが成されました。

 まず,全学大学院重点化が完了するとともに,大学院の教育研究組織であった研究科を分離して,大学院の教育組織「学府」と教官の所属する研究組織「研究院」が新たに設置されました。

 さらに,国内最大の免震構造を持った新病院第T期外装工事の完成,韓国研究センターの開設とアジア学長会議の開催,株式会社産学連携機構九州の設立及びその事務室や技術移転推進室,C&Cの研究室,レンタルラボを擁する創造パビリオンの開設,将来の研究能力による研究スペース配分のモデルである病院地区のコラボステーションの建設と薬学研究棟の改修工事,総合研究博物館と情報基盤センターの設置,応用力学研究所の全国共同利用化及び講義棟の整備,AO選抜の実施,21世紀プログラムの創設,全学教育機構の設置及び九州大学教育憲章の制定,評価に基づく予算分配システムの導入,専門大学院医療経営・管理学専攻及びシステムLSI研究センターの新設要求,などが挙げられます。

 本年は,これらを基盤に本学が一層の飛躍を遂げる重要な1年です。また残された課題に,財団法人九州大学後援会の設立があります。名誉教授,卒業生からの暖かいご支援もあって,設立基金の募金額にあと一歩のところまで来ました。本年の設立に向け,教職員各位のご支援,ご協力をお願いいたします。

 「社会の変化に応じて大学は変わるべき」も一理ですが,「大学が社会を正しい方向へ導く」のが本来の責務で,それは学問研究を介すること以外に,優れた人材,高い専門的能力と幅広い教養を身につけた真の教養人を多く社会に送り出すことによって成されます。昨今の我が国の指導的立場にある人々の多くが精神の陋劣さを見せる様は,亡国の兆しというよりも,もはや由々しき事態と思われます。研究大学として世界と競う研究の高度化とともに,学生あっての大学という原点を改めて見つめる年にしたいと考えます。


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