トピックス 2
杉岡総長から感謝状が授与される

講演する徐総領事

カムサハムニダ 徐賢燮 総領事
韓国研究センター長・法学研究院教授 石川 捷治

知日派の総領事,来福
 徐賢燮(ソヒョンソプSoe Hyun-Seop)駐福岡大韓民国総領事は,1998年5月18日に着任されました。前任の駐パプアニューギニア大韓民国特命全権大使から,自ら希望されての来福でした。(総領事によれば,5月18日は奥さんの誕生日で「いい誕生プレゼント」になったそうです。) 1975年12月からと1988年2月からの2回の駐日大使館勤務を経験しておられ,1988年には論文「近代韓日関係と国際法の受容」で明治大学から法学博士号を得られました(『近代朝鮮の外交と国際法受容』明石書店,2001年3月刊)。また『日本は無い』という本が韓国でベストセラーになったとき,日本に対する偏見がはびこるのは危険であると考え,『日本はある』(邦題『日本の底力』)を書いてこれに反論されたこともありました。このような知日派の徐総領事をこの時期に福岡へお迎えしたことは,九州大学にとって幸いでした。

九大を「韓国研究の拠点」へ
 徐総領事の来福からおよそ半年後の1998年11月30日,金鍾泌(Kim Jong-Pil)大韓民国国務総理(当時)が本学を訪問。「韓日関係の過去と未来」と題して日本語で講演し,大きな感動をあたえました。本学は金総理に名誉博士の称号を授与しました。これを契機として1999年7月1日,韓国政府の外郭団体である韓国国際交流財団(Korea Foundation)の李廷彬(Lee Joung-Binn)理事長(現大韓民国外交通商大臣)が来学して,九州大学を「韓国研究の拠点」と位置付けた5年間で100万米ドルにのぼる助成を中心とする協定に調印。これにこたえて九州大学は,韓国に関する研究と教育を推進し,九州大学と韓国との学術・文化交流の拠点となる施設として「九州大学韓国研究センター」を設置,2000年1月19日に開所式を行いました。そしてこれらのことは,2000年9月の「九州大学アジア総合研究機構」の設立や12月の「九州大学アジア学長会議」の開催へと展開していきました。
 これら一連の動きの中で,徐総領事は自ら汗を流してお力を尽くされ,それは「アジアに開かれた大学」を目指す九州大学の歩みを大きく加速させました。
 2001年1月18日(木),九州大学国際ホールにおいて,横浜への御転任が決まった徐総領事の御功績に対して杉岡総長から感謝状が授与されるとともに,「新しい韓日関係を目指して」と題した徐総領事による記念講演が行われました。その中で特に印象に残る部分を列記します。
 「東京に外交官として赴任して,日本について,日本人について考えました。日本を指す『倭』という言葉は,韓国では今でも小さく野蛮という印象を与える言葉です。イタリア,イギリス,ドイツ,日本の中で,面積は日本が一番広いと聞いて,韓国人は意外に思うでしょう。千年前に書かれた源氏物語は,世界的にも高く評価されています。世界における日本に対する評価は,隣国である韓国においてよりずっと高いのです。そのことへの疑問が,私の日本研究の出発点です。」
 「韓日関係の問題点は,三つのD,つまりDisregard(認めない),Distrust(信頼しない),Dislike(イヤである)です。この反対であるべきでしょう。」

韓日共生へ向かって
「ソウルオリンピックの成功は,もはや韓国は日本を超えたという気持ちを韓国人に抱かせました。しかし冷静に日本を観察すれば,まだ韓国は日本に追いついていません。」
 「韓日両国は,21世紀において,隣国として共生の方向へともに歩んでいかなければなりません。隣国から尊敬されないのでは,日本も国際的に尊敬されるというわけにもいかないでしょう。」
 「1965年の国交正常化以来,民主主義という価値観を共有している今,両国関係は一番いい時期にあると言えるでしょう。ワールドカップの成功が,両国関係の発展に大きな力を持つ若い人たちをさらに強く繋ぐ契機となれば,さらにすばらしい関係ができるでしょう。韓日友好関係を築いてきた日本側の先賢の一人である雨森芳洲(あめのもり ほうしゅう)の言葉『欺かず,争わず,真実の心を持って交わる』は,韓日関係のガイドラインではないでしょうか。九州大学には,世界一の韓国研究専門家の輩出を期待しています。」

外交官そして日本研究者としての的確な指摘と,常にユーモアを忘れない徐総領事の記念講演に,満員の聴衆は頷き,笑い,そして大きな拍手を送りました。

1998年11月30日、金鍾泌大韓民国国務総理(当時)は、満員の五十周年記念講堂で「韓日関係の過去と未来」と題して日本語で講演を行い、「両国関係を未来志向的に発展させ、両国民がともに手を取り、近くて近い隣人となりましょう」と呼びかけた。
1999年7月1日、韓国国際交流財団の李廷彬理事長(現大韓民国外交通商大臣)が来学して、九州大学を「韓国研究の拠点」と位置付けた百万米ドルの助成が決まった。写真左は徐総領事。
九州大学を韓国研究の拠点と位置づけた韓国側の助成にこたえて、九州大学は、韓国に関する研究教育を推進し、韓国との学術文化交流の拠点となる施設として韓国研究センターを設け、2000年1月19日に内外から多くの関係者を招いて開所式を行った。

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