環境をみつめるまなざしを感じて
佐藤剛史(さとうごうし)
生物資源環境科学府博士課程3年

 佐藤さんは、昨年、日本育英会が「地球環境」をテーマに 論文を募集した「第四回チャレンジ!21」で、Cクラス(大 学院生対象)の最優秀賞を受賞し、この快挙により九州大 学の学生表彰も受けました。
 受賞対象となった論文は「一枚の田んぼを守ること=地 球環境を守ること」。「一枚ごとに田んぼの個性が異なり、 その個性に応じた農業労働によって生物多様性が創出さ れる。生物多様性は地球環境保全の一つの柱。生き物の豊か な一枚の田んぼを守っていくことができれば、地球環境も守 っていける。」というものでした。
見晴らしのよい研究室で

Q…論文のテーマは、大学での研究内容 に沿ったものですか。
佐藤…
研究内容は農業経済の分野で、持 続可能な農業(環境保全型農業)をキー ワードにしたものです。研究を進めるな かで体験したり考えたりした、研究には 盛り込みにくいけど豊かなものをどう表 現しようかと考えていたとき、論文募集 が目に止まってまとめました。農業経済 で十分な実績はありませんが、論文を学 際的に評価していただきうれしく思いま す。表彰は日本育英会の平山郁夫会長 からでした。そのときは画家としてたいへ ん著名な方だとは知らなくて、あとでテ レビなどに出ていらっしゃるのを見て、す ごい人だったんだと分かりました(笑い)。

Q…出身高校は?御実家は農家ですか。
佐藤…
出身は大分の上野ケ丘高校で、実 家は大分市内、親は公務員でした。大学 で農業経済を学び考えるうちに、農薬を 使わず生き物に優しい農業に興味を覚 え、そこに環境をみつめるまなざしを感 じたのです。
 糸島で「ジャンボタニシ除草法」を実践 している農家があります。ジャンボタニシ は害虫で稲の苗を食べますが、雑草も食 べる。その生態をつかんで水管理などをコ ントロールすることで、雑草だけ食べさせ ることができるのです。また、農薬散布な どでウンカなどの害虫がいなくなると、そ れをエサとするクモなどの益虫もいなく なります。害虫だからといってすぐに殺 してしまうのではなく、共生へと発想を 転換し、自分たちで試行錯誤してその技 術を確立する。そこに自然をとらえる目 を感じましたし、身近なところに地球環 境を考えるヒントがあると考えました。


ジャンボタニシによって荒らされた田んぼ(左)と、
「ジャンボタニシ除草法」を実践した田んぼ(右)。

ジャンボタニシとその卵
Q…佐藤さんの一日を教えてください。
佐藤…
今は博士論文を書いているので、 勉強中心です。朝は六時半頃起きて弁当 を作ります。環境をテーマとするからに は環境保護を実践しないといけないと思 い、有機農家から米などを買って作ります。 八時半頃大学に来て勉強。昼は研究室で 皆と一緒に食べます。後輩も以前は弁当 を買っていましたが、今は自分と同じよう に弁当を作ってくるようになりました。 それから午後七時頃まで勉強し、帰宅し て夕食後、英語の勉強などして夜半過ぎ に寝ます。
Q…休日も勉強ですか?
佐藤…
環境保全ボランティアの団体に参 加していて、空いている休日は、棚田の修 復や、枝打ちや間伐など森林の生態系作 りに参加しています。欧米ではワーキング ホリデーとしてもっと一般的なのでしょう が、都市住民が農村住民と一体となって農 村環境を守ろうというものです。趣味と いうだけでなく、活動を通して自然の仕 組みを知ることができて、研究にも大い に役立っています。
 佐藤さんは「写真は苦手です」と照れ ながら取材に応じてくれました。まず自 らお茶を入れ、取材が終わると「わざわ ざどうもありがとうございました。」と 丁寧に一礼して、押しかけた広報担当者 をどぎまぎさせました。

森林でのボランティア活動

佐藤さんたちが中心となって農学部1号館の
屋上にできた「多面的機能実感田」




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