ミャンマーの歯科医療を視察して

歯学部歯学科5年 見立 英史

2000年12月25日〜29日まで、東京歯科大学国際保健研究会主催「第2回ミャンマースタディーツアー」に参加しました。目的は「途上国の歯科医療の現状視察」で、引率は東京歯科大学衛生学教室の眞木吉信助教授、東京医科歯科大学大学院の阿部智先生、そして学生6名の参加でした。九大からは同じクラスの嶺恵里さんとともに参加しました。

●参加した経緯について

 1999年7月、九州大学歯学部主催の国際シンポジウム「歯科保健向上に寄与する国際協力のあり方」に渉外担当で参加した際、お相手させていただいた阿部先生からのお誘いがきっかけです。九大歯学部には国際保健分野のサークルはありませんが、関東ではかなり活発に活動されていて、今回のツアーでは準備段階からもかなり大きな刺激を受けました。

●ツアーの概要

 事前にミャンマーに関することを理解するべく学習会が都内で3回行われました。九州からの参加ということで3回目だけの参加でしたが、それまでの話についてはメーリングリスト上で活発に情報交換をしていました。

 今回の視察は歯科に関連したものということで、ヤンゴン大学歯学部と付属病院、医学部付属病院、地方の医療を担うRural Health Center 、小学校でのブラッシング指導の様子、さらには虫歯の罹患率の調査、その合間に観光名所であるパゴダ、マーケットにも。短期間でこれだけの内容をこなせたのは保健省、ヤンゴン大学歯学部のおかげです。

●現地の様子

 ヤンゴン大学歯学部と付属病院は同じ建物にあります。私も4年になるとだいたいの内容はわかりますが、その治療内容ー矯正装置や入れ歯(義歯)作成の様子ーは我々の実習とそう大差がありません。ただ違うのは日本に比べてモノが少ないこと、つまり素材を選ぶ余地が無い点。また診療室のチェアや器具は日本の大学から寄贈された中古であったりするため、時に「これは何ですか?」という機材が使われていたり。モノが少ないというのは患者も同様で、日本ではもうほとんど見られなくなった蜂窩織炎(ほうかしきえん)などが現地では見うけられました。初期に抗生剤を投与することで治療できる疾患も、こちらでは顎を腫らしている、というのが現状です。

 ミャンマーは識字率が高く、街中で新聞が売られています。技術習得など向上心が旺盛で、日本語を学ぶ学生が思った以上に多いのが印象的でした。これは将来日本では働きたいという者や、日本への留学経験者などで、英語より日本語で意思疎通できてしまったりします。街中は日本の中古車がほとんどで、中古バスも改造することなく走っています。「長崎駅前行き」本当の行き先はどこなのでしょう?現地の人の顔も日本人に近い部分があり、仏教の国でもあるため、どこか日本に近いものを感じます。

●現地を視察して

 識字率が高いということはそれだけ教育がしっかりなされているということであって、小学校でのブラッシング指導も徹底されています。生徒全員がラジオ体操のように音楽に合わせて磨くその様子を見ていて、この国の教育の徹底ぶりに驚きました。教室や保健所には歯磨きをしないと口腔内はどうなるか、どういう食物が虫歯になりやすいか、などのポスターが並んでいます。そのためかこの生徒たちの口腔内を診査すると虫歯はほとんどありません。きれいなものです。日本の歯科は「削って埋める」と不評ですが、こういったPrimary Oral Health Care に力を入れると、歯科治療の内容も変わってくるのではないでしょうか。

(みたて えいじ)
※蜂窩織炎(ほうかしきえん)
 歯科では顎の下部から首にかけてのあたりに多い炎症で、急速にかつ広範囲に広がります。初期に抗生物質投与で治りますが、現地ではなかなか薬がないようです。

 

「第1回九州大学マーケティング研究会」から

アドミッションセンター 教授 武谷 峻一

アドミッションセンター 講師 渡辺 哲司

 九大進学に関する最新情報を得る目的で、去る3月30日、大手教育関連企業スタッフを招いて標記の会を開催し、本学教職員、大学院生、高校教諭、企業スタッフ等約25名の参加を得ました。主催はP&P(Cタイプ)「高校との連携によるゼロ年次教育の推進と入学者選抜方法の改善」研究グループ(代表:武谷峻一)です。講師は、九大側の1名と企業側の6名が務めました。

以下に、九大に直接関わる内容を抜粋します。

[ 志願者、入学者の地域性の推移]

 過去10年間、九大への志願者・入学者数に占める福岡県の地位は一貫して圧倒的だが、入学者/志願者比(志願者中実際に入学した割合)は平均以下。入学者/志願者比は、従来最高であった九州(福岡以外)と中四国で大きく低下し、近畿以東で近年増加している。受験学力との関連で、九大の「全国区」化の兆しを本当に喜べるか否かは疑問である。こうした動向の把握・分析機能を整備したい。

[ 模試からみたポジション]

 九大合格者の偏差値は安定するも、受験・合格者数の地域シェアは変動し、理系では他地域からの流入が顕著。受験生の併願先に東大、京大等は少なく、最上位層での求心力を欠く。学内併願が多い特徴があり、優秀な学生を学内にとどめる策を、全学的観点から考えてはどうか。

[ 進路指導に合わせた情報提供]

 高校生が進学先を検討する時期として多いのは高2の3学期。しかし学部・系統別に、芸術系と医歯薬系(1年次)、次いで教員養成系は早い。大学はそれを踏まえた情報提供を。

[ Webによる広報]

 インターネットは既に高校における進路指導の主役だが、大学ホームページは一般に情報更新の遅さ、大学の都合による構成などが不評である(九大も例外ではない)。改善の5要点は、 1)ターゲット=「学校で利用する高校生・教員」に定める、 2)ゲートウェイ=高校の進路指導ストーリーやキーワードに合った入口を用意する、 3)コンテンツ=高校生が目的の情報に辿り着きやすい構成にする、 4)コミュニケーション=手続きのオンライン化や照会先の明示を進める、 5)メンテナンス=常に最新情報を提供できる全学的な体制を整え ること、である。

[ 学生満足度調査]

 ある大手通信教育講座の受講経験を持つ大学生14,600名を調査したところ、講義等の教育関連項目を中心に、大多数が入学前のイメージと実際の大学生活との間にギャップを感じている。全国15の国立総合大学の中で九大は、進学動機としての実利(職業、学歴)志向が著しく、総合的な満足度が低く、入学前イメージとのギャップは小さい傾向がある。文理の比較では、理系の方が授業について入学前後のギャップ感が大きく、教員に対する満足度が低く、大学全般についての満足度も(就職状況を除き)低い傾向にある。

 アドミッションポリシー(入学者受入れ方針)を始め、将来の学生に対して大学自身を説明しなければならない場面は増えています。我々はそうした活動をする中で、大学やその周辺から発信される情報の内容、伝達のされ方、受け止められ方を常にモニタリングし、フィードバックする必要性を痛感しています。ここで紹介された内容のすべてがあらゆる人々の賛意を得るとは思いませんが、大学人としてハッとさせられることや、直ちに活かせる指摘もあり、全体として有意義な会であったと思います。今後も九大にとって良質な情報の収集・普及に努めます。

(たけや しゅんいち、 わたなべ てつじ)
※朝日新聞社『大学ランキング2001』の元データ(九大広報第15号参照)の1つです。

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