[新任部局長紹介]

新任部局長紹介は、本年度新たに部局長に就任された方々を、近くにいる先生や学生が、御紹介するコーナーです。

システム情報科学研究院長

前田三男(まえだみつお)

 前田三男先生の御専門は、レーザーの開発と応用です。特に可変波長レーザー、紫外線レーザーの開発、及びレーザー分光法の工業的応用研究に一貫して取り組んでこられました。色素レーザーやエキシマーレーザーの開発ではその草創期から研究をリードされ、多くの独創的な装置を世に出されています。また、成層圏オゾン観測用のレーザーレーダーを世界に先駆けて開発されており、この方法は現在成層圏オゾンの世界的な標準計測法となっています。このような業績に対して、多くの学会賞を受賞されるとともに、関係学会の要職を多数務めてこられました。一方、大学の講義では電磁気学を長く担当されておられます。電磁気学は学生にとっては避けて通れない難解な科目の一つですが、学生からは大変分かりやすいとの評判を聞いています。

並列・分散処理システムの
ソフトウェア開発風景

 さて、先生を語るには趣味について語らないわけにはいきません。大変多趣味なのですが、この数年は映画に凝っておられます。自宅にホームシアターを設置して、一千本の映画を見るプロジェクトに着手され、その成果を三册の映画評論単行本として集大成されています。また、パソコンを使った映画編集にも凝っておられ、幾つかのオリジナルドキュメンタリーを完成させておられます。これらは、恒例の自宅での忘年会・新年会で披露されておられます。先生の趣味はいずれも玄人はだしであることには誰しも感心しますが、私がそれ以上に驚くのは、あの多忙な先生が、どうして時間を作られているのかいうことです。また、警固の自宅から大学まで徒歩で通われていることもつとに有名であります。

 先生はこれまでも先端科学技術共同研究センター長として、産学連携の推進に大きな役割を果たしてこられました。大学変革のこの時代に、持ち前の物事の本質を的確に捕えられるセンスの良さで、今度はシステム情報科学研究院長として我々を引っ張っていただけるものと大いに期待しています。

(T.O.)
総合理工学研究院長

森永健次(もりながけんじ)

 「有田焼をこよなく愛し、世界一最も多くの種類の酸化物を融かし続ける男」森永健次先生は高校時代タモリと同級生だったこととは無関係に、本学工学部冶金学科に入学後、非鉄精錬の大家であられる恩師の門を叩き、酸化物一筋の研究(人呼んで「酸化物屋」)を開始されました。当時先生は酸化物が高温で融けた状態(融体)の性質を知るために、融体と構造が似ているガラスをよく作製されていたそうです。このとき先生がガラスの持つ無限の可能性に魅せられたことは想像に難くありません。

総合理工学府本館等

 一九七〇年代後半、先生は学際の理工系学科として新設された本部局の非晶質材料工学講座の助教授になられた(またもや“非”を冠する講座です)直後、旧西ドイツ学術振興会招聘研究員としてベ ルリン工科大学に出張されました。一年後、独国・恩師の口癖である“Was Neues?”を胸に刻んで帰国された先生は、研究の主体をガラス、セラミックスへ展開されました。その成果として、日本金属学会功績賞及び日本セラミックス協会学術賞を受賞されました。

 さらに一九九〇年代に入ると、先生は日本学術振興会素材プロセシング第六十九委員会の委員長として御活躍されると同時に「二十一世紀は光の時代。故に未来はガラスで面白くなる」を合い言葉に光機能材料の研究へと展開を図られました。これに呼応するかのように本部局も改組を迎え、現在先生は総合理工学研究院融合創造理工学部門固体材料物性工学講座無機光機能材料工学分野、総合理工学府量子プロセス理工学専攻の教授をされておられます。

 学際の無限の可能性に魅せられた先生は、「未来は総理工で面白くなる」ためにどのような“Was Neues?”を志向されておられるのでしょうか。ワクワクしながらその一員としてお手伝いさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

(T.M.)
応用力学研究所長

小寺山亘(こてらやまわたる)

 小寺山先生の御専門は海洋工学です。応用力学研究所の海洋大気力学部門において、海洋観測用のブイシステム、係留系に関する研究を始めとし、海洋構造物や海中機器に関する多彩な研究テーマに取り組まれ、常に第一線で活躍して来られました。最近では特に、環境問題の対策を考える一手段としての観測用海中ビークルの開発研究に重点をています。これまでにも日本海等を対象とする海洋観測プロジェクトに精力的に取り組まれ、多くの成果を上げて来られました。観測航海では必ず御自身も船に乗り組み、先頭に立ってこれらのプロジェクトを牽引して来られました。研究を机上の理論だけに終わらせず実際の物に反映させ、さらにこれを実用の物として役立てていく過程では様々な困難に出会いますが、これらを乗り越えていく先生の実行力にはいつも敬服いたします。

超伝導強トロイダル磁場実験装置
TRIAM-1M

 御自身には厳しい研究を課される先生ですが、大変親しみやすいお人柄で、航海中でも実験の合間には先生の周りに自然と人が集まって来ます。御趣味テニスで、お忙しい日程の中でも日頃時間の許す限り練習に打ち込まれ、腕前もかなりのものと伺っています。我々若い世代から見ても、どこからそんな元気が出て来るのだろうと不思議に思えるほどバイタリティー溢れる先生です。

 先生はよく「みんながハッピーでないといけない。」とおっしゃいますが、海洋大気力学、基礎力学、プラズマ・材料力学と多彩な研究内容を擁する応用力学研究所の所長として、所内全体の充実を考えてその行動力を発揮され、御活躍されることと思います。

(S.Y.)
機能物質科学研究所長

今石宣之(いまいしのぶゆき)

 今石宣之先生の御専門は、化学工学で微少重力下での物質・熱の移動現象や単結晶育成について研究されています。微少重力というとなじみが薄いかもしれませんが、毛利さんや向井さんが搭乗したスペースシャトルの中などでの殆ど重力が無い状態のことで、その環境での液体や気体また熱の流れがどうなるかという研究を行っておられます。この研究から、例えば将来の宇宙ステーション内での新素材の作成などの際に重要な情報を得ることができます。また、半導体作成に必要な薄膜形成技術についても精力的に研究されており、先日も化学工学会から研究賞を受賞されるなど、その研究水準の高さは内外に広く認められています。

ピッチ系炭素繊維のSTM像

 先生は若かりしころ二年ほどアメリカのBrown大学で博士研究員をなさり、現在も、かの地で知り合った世界各地の第一線の研究者と親交深く、教え子を留学生として受け入れたりもなさっておられます。当時の写真を見せていただいたのですが、ジーパンにTシャツ姿で毛髪のみならず顎鬚も蓄えておられ、大学の研究者というよりも戦場写真家の様相を呈しているなと(心の中で)思いました。一 瞬の好機を見逃さないという研究者と写真家との共通点がそう思わせたのかもしれません。その好機を掴む眼光の鋭さは、当時も今も全く変わっていません。そのせいで怖いと誤解(?)を受けるかもしれませんが、本当は人情深く学生やスタッフのことを心から気遣ってくださる優しい(?)先生であります。

 大学変革期の中で、研究所のあり方が問われ、また研究環境の整備及び人材育成など困難な問題が山積みされていますが、今石先生ならリーダーシップを発揮され研究所を発展させるとともに必要な改革を進められていくと確信しています。

(Y.A.)

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