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平成十二年度に、全学大学院重点化完了とともに九州大学が初めて設けた「学府・研究院制度」。新たな教育プログラムや専攻、
センター、機構が誕生するなど、その成果は教育・研究両面で着実に現れています。
ここでは、矢田副学長に、「学府・研究院制度」がどのように機能しているかを組織的側面から解説していただき、成果の一つである
「医学系学府の医療経営・管理学専攻」を、医学研究院の信友教授にご紹介いただきます。
学府・研究院制度における
教官の担当について
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副学長 矢田 俊文
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一、学府・研究院制度の導入と新専攻・新センターの設置
九州大学では、平成十二年度において全学
の大学院「重点化」を行うとともに、わが
国ではじめて「学府・研究院制度」を導入し
ました。これは、大学院の教育研究組織で
ある「研究科」を、教育組織としての「学府」
(Graduate School)と教官の研究組織であ
る「研究院」(Faculty)に分離し、それぞれ独
自の論理で編成することができるようにした
ものです。とはいっても、戦後の大学院制度の
整備とともに半世紀近く続いてきた「研究
科」の編成を全く白紙にもどして大幅に再
編することは、戦後築き上げた若手研究者
の育成システムを崩壊させることになりかね
ません。ですから、新しいシステムを導入した
からといっても、学府と研究院との関係を一
挙にバラバラにすることは、九州大学の研究
教育の蓄積を受け継ぎ、より発展させるため
には決して合理的ではありません。ほとんど
の学府と研究院の関係が一対一の関係になっ
ているのは、こうした理由からです。他方で、
教育組織と研究組織が極めてリジッドに一体
不可分となっていると、新しい人材の養成とい
う教育組織の再編が研究組織の強い「慣性」
によって阻害されたり、逆に、新しい学問分野
の登場に対応した研究組織の機動的な再編
が教育組織の「安定性」を理由に不可能にな
りがちです。現に、多くの大学でこうした悩
みを抱えています。学府・研究院制度の導入
による教育組織と研究組織の分離は、こうし
た硬直性を打破し、二十一世紀においてます
ます流動化する、新しい人材養成の必要や
先端科学分野の登場に、大学の組織が柔軟に
対応できるようにしたものです。
学府・研究院制度の導入によって、比較社
会文化学府の教育が、対応する比較社会文
化研究院に所属する教官だけでなく、人文
科学、法学、経済学、言語文化などの複数の
研究院に所属する教官が正式の担当教官と
して教育にあたることができるようになりま
した。また、本制度のもとでは、学府の中の「専
攻」と研究院の中の「部門」では、その構成を
異にすることができます。人文科学府と人文
科学研究院、理学府と理学研究院、工学府と
工学研究院では、専攻と部門は大きく異なっ
ています。「部門」単位では、国内外の学会を
強く意識した構成となっており、「専攻」では
未来の学際分野を担う人材の育成に重点を
おいた編成となっています。
さらに、平成十三年度からは、こうした学
府・研究院制度を活用した新しい組織が二つ
誕生しました(第1 図)。一つは、医学系学府
に医療経営・管理学専攻の修士課程が設置
され、その学際的な性格から医学研究院だけ
でなく人間環境学研究院、法学研究院、経済
学研究院、薬学研究院、健康科学センターな
ど五つの研究院、一つのセンターに所属する教
官が、その所属を変更せずに正式の担当教官
となっています。いままでであれば、医学研究
院以外の四つの研究院の教官は所属を移動
しなければなりませんでしたが、新しいシステ
ムのもとでこうしたことが可能となりました。
これらの四つの研究院の教官は、いままでどお
り、それぞれの研究組織に属して同質の研究
集団とともに研究するとともに、それぞれの
関係学府の博士課程を担当することができ
ます。もう一つは、システム情報科学、経済学、
工学の三つの研究院に所属する教官が、それ
ぞれの研究院に所属したまま、新しい学内共
同教育研究施設であるシステムL S I 研究セ
ンターを設置し、ここでシステムL S I の共同研
究をすることができるようになりました。他
大学では、関係する教官の所属を新センター
に移さなければ、設置できませんでした。平成
十四年度概算要求では、こうしたシステムを
活用して、韓国研究センター、宙空環境研究セ
ンター、物性科学研究センター、電離気体科学
研究センターなどの設置を構想しています。
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