会議の概要
[初日]
オープニングセッション
 会議初日のオープニングセッションでは、ま ず実行委員会委員長である吾郷眞一九州 大学法学研究院長が開会を宣言し、杉岡洋 一九州大学総長が開会挨拶を、山崎広太郎 福岡市長が来賓挨拶を行いました。
杉岡総長開会挨拶要旨
 「二十一世紀はアジアの時代」という言葉 は、市場経済の観点におけるアジアの魅力を 述べたものであることを認識しなければな りません。情報社会の出現が、地域独自の価 値観を失わせかけていることも事実です。ア ジアで暮らす一般庶民にとっての「アジアの時 代」の真の意味を提示し、そのためにアジアの 大学がどのような役割を果たすべきか。これ が第一回から今回に続く基本理念です。 今回は、アジアの活力を再認識する場と もするため、この基本理念を産業界や自治 体など学外へも発展させ、大学と社会との 国境を越えた連携のネットワーク構築が協議 されます。
 また、九州大学が提唱した相互のネットワ ークポイントの設置についても、すでに賛同を 得ています。これは、「点」と「点」の交流を「面」 の交流に拡大することで、学生や研究者の相 互交流を円滑にするとともに、研究の活性 化と学際的な研究分野の創造に寄与すると いう考えを具体化したものです。 この会議が、活発な意見交換と提言の場 として、記念すべき成果を得られることを祈 念します。

山崎福岡市長来賓挨拶要旨

釜山大学校のPark 総長と山崎市長(右)
 福岡市民を代表して、心からの歓迎の意 を表します。アジアとの学術文化交流を積 極的に推進している福岡市も、アジアの大学 が一同に会するというこのすばらしい試みに 大きな関心を持っています。有意義で心地よ い福岡滞在となりますよう希望しています。

基調講演・特別講演

Naris タマサート大学学長
 まず、タイのNaris Chaiyasoot タマサート 大学学長が、「グローバリゼーション、資本主義 と高等教育」という演題で基調講演を行い、 「大学の世界規模化、企業化、資本主義化に よってもたらされる可能性のある負の面、例 えば画一化による文化的個性の喪失、教育研 究のビジネス化、学問の自由への制限などの リスクにも注意しつつ、アジアの教育指導者で ある我々はそのリスクを責任を持って回避し、 文化的伝統の継承とグローバリゼーションを、 バランスよく進めなければならない。」と注意 を喚起しました。
 続いて杉岡総長が、お互いの価値観を尊重 しながら共同で地球全体が抱える問題を解 決していくという、真のグローバリゼーションの 体現者であり続けた大学と、産官の連携構 築について基調講演し、「私たちアジアに暮ら す人間にとって、アジアが豊かになるためのひ とつの可能性として、アジアの大学の連携や 産官学の連携があると私は考えます。そして、 その可能性を支える大きな力として、私たち が共有するアジア的価値観があると信じてい ます。」と述べました。
 最後に、吉本孝一九州経済産業局長が「加 速するアジアとの連携」と題して特別講演を 行い、九州経済の国際的な動向やアジアの経 済との深い関係を説明し、「今ほど産学連携 が重要な時はありません。アメリカ経済の隆 盛には、産学連携による新産業の創出が大き な役割を果たしました。その意味でも、アジ アの大学に注目しその役割に期待しています し、積極的に支援したい。」と述べました。


10 月3 日の事前ミーティングで顔を合わせた参加者

分科会とパネル展示

14 社が参加したパネル展示
 講演後、参加者は理系と文系に分かれ、そ れぞれの問題について討議を行いました。各 分科会では、各国の大学から、現在おかれてい る状況や取組みなどについて発言が相次ぎ、 内容の濃い討議が展開されました。
 今回は、昼食及び休憩の部屋が、同時に参 加企業のパネル展示会場となっており、参加 者はリラックスした雰囲気の中、展示されたパ ネルに見入り、各社の説明を興味深く聞いて いました。参加したのは福岡の地元企業から 全国規模の企業まで、全十四社に上りまし た。


麻生知事のスピーチ
 会議後のレセプションでは、麻生渡福岡県 知事が、流ちょうな英語で次のように挨拶し ました。
 「福岡県はアジア諸国との交流、協力を希 望し、多くのプロジェクトを推進しています。 大学にはその中で重要な役割を果たしてく ださることを期待しています。福岡は『アジ アウィーク』誌からアジアで最も美しい都市に 選ばれました。短い滞在ですが、福岡の人や 街を楽しんでください。この会議で培われる 協力関係が、アジアと世界に寄与することを 希望します。」

[二日日]
分科会のまとめ

 翌五日は福岡県、福岡市及び北九州市か ら、産官学連携の取組みについて紹介があり、 次に、前日の各分科会からまとめの報告があ りました。
 理系分科会報告者の村岡克紀九州大学 総合理工学研究院教授は、「二十一世紀の問 題は、三つのE …economy (経済)、environ ment (環境)、energy (資源)と言えます。こ れらの困難に共同して立ち向かうためにも、 アジアの大学ネットワークを構築する必要が あるのです。」と述べました。
 また、文系分科会報告者の吾郷委員長は、 「グローバリゼーションの負の側面に抗していく には、アジア地域間での研究協力が必要です。 また、相互理解のためには、相互に尊重しあ うことが必要です。」とまとめました。 その後、産学官連携の追求「国を越えての 連携の方策の討論」というテーマで、実際にア ジアの国々で大学での研究や教官、学生の交 流、共同プロジェクトなどを支援している国際 協力銀行(JBIC)及び国際協力事業団 (JICA)から事業説明が行われ、参加者からは、 具体的な協力支援についての質問がなされ ました。

クロージングセッション
 杉岡総長は、次のように会議を総括しま した。
 「今回は、前回のテーマを基本的に継承し、 国を超えた連携の方策が議論されました。 もちろん各国は様々な異なった問題を抱え ていますが、グローバル化した世界にあって、ア ジアの地域性を主張しうるものを共有して もいます。その基盤を確認することで、人類 全体への学問的貢献も可能になります。 私たち大学人は、前世紀の負の遺産を新 世紀に残さないだけでなく、過去の偉大な遺 産を継承して発展させる二十一世紀になる よう、叡智を出し合わなければなりません。 そのために今回相互にネットワークポイント を設置することを提唱しました。これは研 究の活性化と新しい学際的な研究分野の創 造に寄与することを目的とするものです。 今回の会議の成果が、アジアの大学間の協 力関係展開に寄与できることを、心からの慶 びといたします。」
 最後に会議は、次回開催校である韓国釜 山大学校のPark Jae Yoon 総長の「一度だけ ではなく二度にわたって、アジアの大学間の連 携を強化するためにこのような会議を開催 し偉大な貢献を果たした杉岡総長に尊敬の 意を表します。」という言葉で締め括られま した。
 第三回会議はワールドカップ・サッカーが終 わった後の二〇〇二年十一月六日から八日の 間に、釜山大学校で行われる予定です。

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