新キャンパス第一ステージへ向けて
新キャンパス計画専門委員会委員長・副学長  有川 節夫

 九州大学は、半世紀近く稼働して きたわが国の高等教育システムが抱 える諸課題を正面からとらえ、新し いシステムづくりを模索しながら、 時代の潮流の先陣をきるべく、大学 院教育の飛躍的充実をめざす大学改 革を進めてきました。この大学改革 によって国際的・先端的学術拠点と しての大学の構築を進めるとともに、 それに相応しい研究・教育施設の整 備、新しいスタイルのキャンパス生 活を実現するため、福岡市西区元 岡・桑原地区、志摩町及び前原市に 新天地を求め、新キャンパス建設を 進めています。新キャンパスでは、 九州大学で蓄積された科学技術や学 術文化、多様な資料や施設などの開 放を通じて、地域社会との交流をこ れまで以上に深めることにしていま す。
 新キャンパス用地は、百万都市福 岡の西方に位置すると同時に、悠久 の歴史と自然に恵まれた環境にあり ます。九州大学は、大学改革による 新しい組織づくりと新キャンパス建 設をほぼ同時期に推進できる千載一 遇の機会を得て、恵まれた環境のも とに、二十一世紀の新しい大学の歴 史と伝統を築き、世界的レベルの知 の活動を展開していくことが大いに 期待されています。二〇〇一年三月 には、それまで新キャンパス計画に 関して学内で審議し、将来計画小委 員会で了承された内容をふまえて、 「九州大学 新キャンパス・マスター プラン二〇〇一」を評議会了承しま した。このマスタープランを前提と して、九州大学では、新キャンパス 計画専門委員会にウエスト・ゾーン WG(二〇〇二年十一月まで梶山千 里WG長、後任:大城桂作WG長) 及びそのコアチーム(コアチーム 長:坂井猛助教授)を設置し、MC M設計共同体(且O菱地所設計、シ ーザーペリ・アンド・アソシエイ ツ・ジャパン、且O島設計事務所)と ともに、工学系地区を対象とする施 設の具体的な検討を進め、学外委員 を含むマスター・アーキテクト委員 会(委員長:渡邊定夫・東京大学名 誉教授)の審議を経て、二〇〇二年 六月に工学系地区基本設計をとりま とめ、六月の新キャンパス計画専門 委員会および将来計画委員会に報告、 了承を得ました。

新キャンパス計画専門委員会
 本委員会は、新キャンパスの教育 研究施設計画等について検討するた め一九九二年に設けられた学内組織 であり、各部局の専門委員等によっ て構成され、新キャンパス計画にか かわるさまざまな検討を行っていま す。新キャンパス計画専門委員会に は、現在、十四のワーキンググルー プ等および三つのプロジェクト・チ ームがあり、焦点を絞った検討を行 うとともに、新キャンパス計画連絡 会議で、各々の検討した内容を調整 するシステムとなっています。

ワーキンググループ等:WG (WG長、構成人数)
@ 新キャンパス計画連絡会議(有川 節夫副学長、二十四人):各ワーキ ンググループの検討内容の調整を 行います。
A ウエスト・ゾーンWG(大城桂作 教授、二十四人):ウエスト・ゾー ンの地区基本設計に関する検討を 行います。
B イースト・センター・ゾーンWG (竹下輝和教授、二十四人):イー スト・ゾーン及びセンター・ゾー ンの地区基本設計に関する検討を 行います。
C 農場計画WG(福山正隆教授、十一 人):農場計画に関する検討を行 います。
D 福利厚生施設WG(押川元重教授、 十二人):運動施設、課外活動施 設、宿泊施設等の計画について検 討を行います。
E 未来型キャンパスづくりWG(太 田俊昭教授、十四人):交通、情 報通信、エネルギー、水等の未来 型キャンパスづくりに関する検討 を行います。
F 情報通信基盤WG(廣川佐千男教 授、八人):情報通信基盤に関す る検討を行います。
G 地域水循環WG(神野健二教授、 十六人):新キャンパスを中心と した広域的な水循環の検討を行い ます。
H 環境WG(島田允堯教授、十三 人):環境影響評価に関する検討 を行います。
I 緑地管理計画WG(小川滋教授、 十三人):緑地の管理および計画 に関する検討を行います。
J タウン・オン・キャンパスWG(坂口 光一助教授、十一人):センタ ー・ゾーンと周辺地域との一体的 な大学まち「タウン・オン・キャ ンパス」の実現に向けた検討を行 います。
K 文化財WG(有馬學教授、十一 人):新キャンパス計画における 文化財等(建物、銅像、樹木、埋 蔵文化財等)の保存活用その他に ついて検討を行います。
L 交通計画WG(外井哲志助教授、 十一人):移転過渡期を主とした 交通計画に関する検討を行います。
M キャンパス計画推進室(有川節夫 副学長、二十四人):新キャンパ ス計画専門委員会の付託した技術 的、専門的事項について関連部局 と協議するとともに、施設部と協 力して検討を行い、必要な事項を 処理します。

プロジェクトチーム:PT (PT長、構成人数)
@ 移転シミュレーション検討PT(押 川元重教授、二十二人):移転に 伴う様々な支障をできるだけ押さ えるための方策に関する検討を行 います。
A ライフスタイルPT(山口裕幸助 教授、六人):新キャンパスにお けるライフスタイルに関する検討 を行います。
B 共用スペース運用検討PT(荒殿 誠教授、十五人):新キャンパス における共用スペースの運用等に 関する検討を行います。

環境賞受賞

環境賞トロフィー
 二百七十五fの広大な丘陵地を開 発するにあたって、以上のように、 学内外の研究者、専門家の参加型ワ ーキンググループによって、キャン パス用地の分析と計画の検討を行い、 生態系や埋蔵文化財など、でてきた 課題を一つ一つ検討し、必要に応じ て計画にフィードバックしてきまし た。特に、学内外の英知を結集して 大規模事業における環境との共生を 積極的に進めた点、および、大規模 開発の範となる画期的な事業として 注目に値するだ けでなく、今後 の土木事業の行 うべき先進的な 事例を示すもの として高く評価 され、九州大学 と福岡市土地開 発公社が進めた 本プロジェクトに対して、二〇〇二 年五月に土木学会より環境賞が贈ら れました(十六頁参照)。

九州大学学術研究都市 推進機構準備会議の設立
 (社)九州・山口経済連合会、福 岡県、佐賀県、福岡市、前原市、志 摩町、二丈町、浜玉町、九州大学等 によって結成された九州大学学術研 究都市推進協議会(大野茂会長)が 「九州大学学術研究都市構想」を二〇 〇一年六月にまとめ、同構想に関連 するシンポジウムを東京や福岡で開 催しました。その後、九州大学の新 キャンパスを中心とした新しい学術 研究都市の形成に寄与するため、学 術研究都市構想の推進及びその推進母体としての九州大学学術研究都市 整備推進機構(仮称)の設立準備を 行うことを目的として、二〇〇二年 五月に九州大学学術研究都市推進機 構準備会議を設立することが了承さ れました。
 準備会議は、福岡市中央区天神の アクロス福岡にオフィスを構え、「ス マートダウンタウン福岡(知識をベ ースとした自律的な二十一世紀型都 心)」の形成、企業・研究所の集積、 知の交流・連結・発信拠点「HST (Human, Science and Technology Station)」や企業・コミュニティの活 動を展開する場「ほたる(分散型地 域核)」の整備等、新しい学術研究都 市づくりに向けて精力的に検討を進 めています。

 マスタープランの具体化にあたっ ては、委員会等の関係者、アンケー トや現地調査、竹の伐採作業等に関 わっていただいている教職員と学生 の皆さん、様々なかたちで関与して いただいている行政の方々、財界や 地元住民の皆さん、造成工事を進め る福岡市土地開発公社、工学系地区 基本設計のコンサルタントであるM CM設計共同体、調査・工事に関わ っておられる企業各社に多大のご努 力をいただいており、誌面を借りて あらためて謝意を表します。また、 九州大学の新たなページを飾ること になる工学系の新キャンパス施設建 設と二〇〇五年後期の第一期移転に 向けた関係各位の深いご理解及びご 支援をひき続きお願いします。

(ありかわ せつお)

鳥瞰
工学系地区


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