人材育成は大学の最も重要な使命の一つです。全学教育、専攻教育を含む学士課程教育及び大学院教育において、
人材育成という原点に戻って教育改革を行うべきです。人材育成の原点とは、
1)感動できる感性を養う教育
2)社会に役立つという意識を持たせる教育
3)社会性、人間性、国際性を身に付けさせる教育
4)倫理観を身に付けさせる教育
5)創造性・独創性を生み出す教育
6)資格を取得させる教育
のことです。
今後の日本社会では、受益者側に立った政策、施策が行われるべきです。受益者とは、行政では住民、企業では消費者、利
用者であり、大学では学生です。法人化後の九州大学でも学生の側に立った教育方法の改善が行われるべきです。学生の
側に立った授業とは、学生が理解でき、上記の1)〜6)を実現するための工夫がなされていることです。授業方法の改善として、
1)週複数回授業による理解度の向上
2)プレースメントテストの実施と習熟度別クラス編成(英語、数学、物理、化学等)
3)学生による授業評価と評価結果の活用
4)全学FDの実施
5)問題提起型授業による独創性・創造性の啓発
6)授業のIT化とe-learning教育の実施
7)授業科目のコード化
8)インターンシップの実施
9)留学生に対する外国語による授業の組織化と一元化等
が挙げられます。九州大学は、今後学生に授業内容を習熟させ、どのような学生を育てたか(アウトプット)だけでなく、どのよう
に社会に役立っているか(アウトカム)という評価に耐えられる人材育成を行うことができるよう、教育改善を行っていきます。.
九州大学の教育制度の特色である「21世紀プログラム」の6年間一貫教育と国際性を育むための制度の確立や、「学
府・研究院制度」を利用した新教育組織(学府)の立ち上げ、それをトリガーにした新教育・研究組織の構築がなければ、九
州大学の教育制度の特色を活かすことはできません。幸いにも「21世紀プログラム」は、文部科学省の平成15年度の「特色
ある大学教育支援プログラム」に採択され、新しい展開と充実、さらにその考え方を基礎とした全学的展開を図っているとこ
ろです。また、平成15年度は、「学府・研究院制度」の特色を活用して6研究院と2研究所の教官の協力により、システムバイ
オテクノロジーやゲノム研究者の育成、DNA診断・治療に関するベンチャー企業家の育成をも目差した「システム生命科学
府」をスタートさせました。
日本の国立大学は、従来、社会人教育にほとんど貢献してきませんでした。一度大学を卒業した後に大学で勉強するこ
とを希望する社会人のキャリア・アップ、資格・技術・法律知識の更新あるいは身に付けた専門と異なる専門職大学院への進
学など、バラエティーに富み、深くて広い知識を身に付けた社会人の育成は、法人化後の国立大学の重要な社会貢献の一
つです。18才就学人口減少による人材発掘として、社会人の再教育と優秀な留学生の獲得が、今後九州大学としても重要
な教育政策と戦略になります。平成13年度に、九州大学は社会人教育あるいは専門職大学院として、医療を統合・調整・組
織化できる人材育成のために、医学系学府に「医療経営・管理学専攻」を設置・スタートさせましたし、平成15年度には、技
術の分かるアジアビジネスに精通したMBA育成のため「ビジネススクール」を開校しています。また平成16年度は、実務プロ
セス重視で真の法曹育成を目差して「ロースクール」を開校します。今後、九州大学の専門職大学院として「感性・デザイン
スクール」、「経営者育成スクール」、「知的財産管理者養成スクール」等の社会人教育コースを実現したいと思っています。
さらに、各学府で特色ある寄附講座を獲得することも、九州大学の教育研究戦略として重要な課題となります。
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