移転スケジュール決まる

 「新キャンパス・マスタープラン二〇〇一」で概ね十年間とされていた新キャンパスへの移転スケジュールを、最長で十五年間とした新しいスケジュールが示されました。スケジュール変更の背景やその効果について、キャンパス担当の有川理事(副学長)がご説明します。

新・移転スケジュール

理事(副学長) 有川 節夫

■進む新キャンパスづくり

 平成三年十月に福岡市西区元岡・桑原地区への移転を評議会決定して以来、十三年が経過した。この間、次々に生じた多くの難問を、学問の府としての学識と良識・見識に基づいて、環境や歴史的な遺産に十分に配慮しながら、ひとつひとつ慎重に解決してきた。新キャンパスの造成工事も、人文社会系等を予定している第U工区を除き順調に進み、工学系の研究教育施設や各種の基幹整備も行われている。また、福岡市による学園通り線の整備やJR新駅の設置等も進んでいる。そして、いよいよ平成十七年十月には、工学系の半分が移転し、平成十八年度中に工学系の残り半分が移転して、本格的にキャンパスとしての活動が始まる。

○工学系は平成17 年度後期から開校
○工学系移転後は用地再取得を優先
○平成31 年度を目途に移転完了の予定

移転スケジュール

※( )内数値の移転年度は,財政状況により変動することがある。
※【 】内数値は移転人数の概数を示す。

■現実的な新スケジュール

 一方で、新たな技術的・財政的な課題も明らかになってきた。第U工区の造成工事の延伸、すなわち、北部谷部の現状保存と丘陵部の削平に伴う残土搬出や福岡市土地開発公社が先行取得している用地の再取得、国の厳しい財政事情に起因した課題等である。これらの課題を解決するために、関係者一同、鋭意努力を重ねてきた。平成十七年度の概算要求についての文部科学省との協議の中で、こうした課題を十分考慮した合理的・効率的かつ具体的な移転スケジュールを詰め、平成十六年九月学内の委員会等に報告し、役員会で決定した。

 「新キャンパス・マスタープラン二〇〇一」に示しているこれまでの新キャンパスへの移転スケジュールは、主として教育研究上の便宜、各年度における建築や移転の規模 等を考慮して作られたもので、全体を三つのステージに分け、工学系の移転を皮切りにして、概ね十年間かけて移転することを想定していた。その間、全学教育の一部は一旦箱崎キャンパスに移転することにしていた。また、平成十四年四月に、移転開始時期を平成十七年度後期とすることを公表してきた。

 これに対して、別表に示すように、新しい移転スケジュールでは、まず工学系の移転を第Tステージの中の平成十八年度内に完了させる。第Tステージから第Uステージにかけては、第U工区の土地造成を行い、文部科学省から措置される新キャンパス関係予算の殆どを、用地の購入に割き、経年により生じる金利負担を軽減するため、用地再取得を早期に完了させる。そして、第Uステージ終盤の平成二十三年度より、理学系、人文社会系、全学教育、農学系等の建物の建築を再開する。第Vステージに入り、平成二十六年度からこの順序で移転を継続して行い、平成三十一年度中に移転を完了する。また、工学系の移転完了後、全学教育等の移転までに年数を要することや六本松キャンパスの跡地処分等を考慮して、平成二十年度を目途に全学教育を含めて六本松キャンパスの学生教職員全体が箱崎キャンパスの工学部跡に一時移転して、全学教育等への支障を最小限に抑えるようにしている。

 この移転計画は、国の財政事情や施設整備費補助金の規模・仕組みが現在と同様に推移するものとして、移転完了に要する最長の期間を示したものである。したがって、六本松キャンパス跡地の早期処分、国の財政事情の好転等によって移転計画が前倒しされることもある。

■移転再開に向けた整備

 第Uステージの期間では、福岡市土地開発公社による第U工区の造成や、福岡市による新駅から学園通り線への幹線道路の整備を始めとする各種の基盤整備が予定されている。また、民間による学生アパート等の生活関連施設の整備も進むであろう。大学側でも、センター地区に予定している各種施設の寄附金等による整備に取組むことになる。したがって、平成二十六年度に理学系からの移転が再開されるころには、キャンパス内外の施設群や道路、交通機関等の整備も進み、落着きと活気のあるキャンパスができていることになる。

 工学系の移転に合わせて食堂や学生寄宿舎も整備される。これらは運営を含めたPFIという新しい手法によって整備されるが、第一陣の移転から食堂が半年、学生寄宿舎が一年遅れる見込みである。その間、食堂に関しては、研究教育棟の情報学習室や理系図書館を利用して仮営業し、また、学生寄宿舎の整備の遅れに関しては、スクールバスの運行等で対応し、不自由を最小限に抑えることにしている。


この地図の作成にあたっては、建設省国土地理院発行の20 万分の1 地形図を使用した。

■新展開

 工学系の移転完了時には、学生教職員合わせて約四千三百人が新キャンパスに通うことになる。これは、大橋キャンパスや筑紫キャンパスの三〜四倍という規模である。創設以来約九十年をかけて整備してきた大小様々な施設群等も同時に移転する。したがって、その中には整備が少し遅れるものもある。また、造成工事・建設工事も行われているので、当初は若干の不自由や混乱も考えられる。しかし、既に(財)九州大学学術研究都市推進機構も設立され、水素キャンパスや新しいICカード、ユーザー・サイエンス等に関する野心的な実証実験も計画し、移転当初から新しい展開ができるような準備も進めている。この移転事業をポジティブに捉え、学生教職員の創意工夫によって、九州大学の創設時に果たされたように、新キャンパスにおいても本学を牽引し、新たな発展の礎を築いてくださることを願っている。

(ありかわ せつお 情報科学)
※本文は九大広報二〇〇五年一月号掲載


この地図の作成にあたっては、建設省国土地理院発行の20 万分の1 地形図を使用した。


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