水循環系保全整備計画について 新キャンパスが建設される土地は、従来は雑木林を中心とする丘陵地で、付近に流れる水崎川や大原川、杉山川といった河川の源流域であり、かつ周辺地域で利用されている地下水にとっての貴重な水源地域ともなっています。このようなことから、新キャンパス建設に伴う造成工事や建築工事によって地下水や地表水の循環バランスを損なうことは、地下水の利用や自然環境に大きな影響を与えるのではないか、という懸念がありました。そこで、九州大学では平成十二年に行った環境影響評価の中で地下水の保全に関する基本的な方針を示すとともに、昨年七月には具体的な対策内容や対策量を明らかにすることを目的として、水循環系保全整備計画を作成しました。※ このような取組みは、環境保全に対する関心が高まっている現在においても、全国的にも例のない極めて先進的な取組みです。ここでは、整備計画における地下水保全対策の内容を紹介します。
地下水への影響と保全対策
木を伐採するなどの造成工事などによって、雨水浸透量は新キャンパスの敷地全体(二百七十五ヘクタール)の平均で十三%程度減少することが予測されます。この数字は緑地として保全される約四割(百ヘクタール)の敷地も含んだものですので、造成地(百七十ヘクタール)だけで見ると約二割の減少となります。保全対策にあたっては、この減少する雨水浸透量を造成工事前と同等以上に回復することを目標としました(開発前後の水収支については図を参照のこと)。対策の具体的内容は次のとおりです。すなわち、雨水の浸透を阻害するようなアスファルト舗装などはできるだけ行わないこと、人や車の通行上舗装せざるを得ない場合もバスなどが通行する幹線道路を除いては原則として透水性の舗装を採用すること、また、建物周辺に設けられる集水ますや排水管、側溝なども原則として貯留や浸透の機能を有する構造とすることなどです。排水管には水を浸透させるための穴を空けたり、集水ますの底を砕石にするなどして水が浸透しやすい構造としたりといった工夫をします。さらに、排水管が通過する近くの駐車場やグランドの地下には、プラスチックのブロックなどを敷き詰めて空洞をつくり、周辺に降った雨を一時的に引き込んで貯水し、時間をかけて地下に浸透させる工夫もします。
■対策の実施状況など
今年十月の第一期の移転に向けて建設工事が進められている各種建物の排水設備には、既に浸透性の設備が導入されています(写真@・A参照)。また地下の貯留浸透施設も、その第一号が理系図書館の駐車場予定地で現在建設中です(写真B参照)。 (にいだ ひろし 水資源工学)
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新キャンパスでは様々な新しい研究開発プロジェクトが計画されています。水素キャンパス構想もその一つです。 平成十六年八月には、福岡県と九州大学が中心となって、産業界、大学、行政が連携して安全で環境にやさしい水素エネルギー社会の構築を推進することを目的とする「福岡水素エネルギー戦略会議」が発足しました。九州大学はこの戦略会議の活動の核になって、技術的な課題を解決するとともに、新キャンパスを水素利用社会のモデルとして世界に示そうとしています。 平成十七年一月二十八日(金)、新キャンパスの工学系研究教育棟の北側で、燃料電池自動車の燃料補給施設である「九州大学水素ステーション」の起工式が行われました。平成十六年七月には、九州大学、九州電力(株)、三菱商事(株)、(株)キューキ、福岡県産業・科学技術振興財団の五者が、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に採択されて「水素ステーション」の研究開発を行っており、起工式には関係者約三十人が出席しました。 水素ステーションは国内では首都圏を中心に十数カ所建設されていますが、九州ではこれが初となります。 |