漫画学のススメ
日下 翠 著

日本人が思っている以上に,日本の 漫画は世界で広く受け入れられている。 我々が好むと好まざるとにかかわらず, 今や漫画は日本を代表する文化の一つ になっているのである。特にアジアの 各国では,いたるところで日本製のマ ンガ,アニメ,ゲームが溢れており, 旅行者を驚かせている。ところが,肝 心の文化の輸出元である日本での研究 はまだまだ不十分,どころか,ほとん ど無いに等しい。誰か研究してくれな いものか…などと同僚たちと話し合っ ていたところ,いつのまにか,それな ら私たちで講義でも始めよう,という 話になった。

しかし,研究するにせよ,教えるに せよ,何らかのたたき台が必要である。 まずテキストを作ってみよう,という わけで書いたのがこの本である(もっ とも,ついつい語り口がくだけすぎて しまったため,テキストと言うよりは 参考書のようになってしまったが)。 本書は三部に分かれており,それぞ れの内容は次のとおり。

第1部:漫画で読む文化。

少女漫画,少年漫画からそれ ぞれの文化を読み取る。

第2部:少女漫画入門。

少女漫画の代表的な作家と作 品を紹介。

第3部:中国語圏(大陸,香港,台湾) の漫画事情を紹介。

興味深いことには,中国大陸では日 本生まれのストーリー漫画を「新漫画」, 或いは「カートン画」と呼び,新しい 文化として認識している。これは逆に いえば,我々自身が日本漫画の特徴に あまりにも無自覚すぎたということな のかもしれない。

ともあれ,これからの漫画の研究に この本が何らかの役割を果たしてくれ ることを願っている。さらに,世代を 超えて出来るだけ多くの漫画ファンの方々 に読んでいただければ,著者としては 望外の喜びである。

(白帝社,2000年1月刊,305頁)
筆者:日下 翠(くさか みどり)
大学院比較社会文化研究科助教授

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