九州大学は,世界7カ国8大学に呼びかけ, 個々の大学が個別に模索している多くの共通課題を議論し, 知的存在感のある大学を目指した提言を行うことを目的に, 「大学サミット・イン・九州」を開催しました。

 中田実行委員長にその概要を御紹介いただくと同時に, 1日目の討論や,福岡,熊本,佐賀,山口4県の13校,約80名の高校生と九大学生30名が参加した, 2日目の高校生との対話集会の模様をお伝えします。

「大学サミット・イン・九州」を開催して

実行委員会委員長 中田 稔

 去る5月13日(土)〜14日(日)の2日間,九州大学主催による標記のシンポジウムが, 福岡シーホークホテルで開催されました。今や社会のボーダーレス化は急激に進み, 大学の運営や研究・教育のあり方は 自国の基準だけでは社会の要求にこたえられない状況にあります。 そんな中で開催した「大学サミット・イン・九州」には, 九州大学をはじめ世界の9大学のトップが一堂に集い, また日本国内の大学からの参加も得て, 21 世紀の大学像について論じ合う記念すべき国際シンポジウムとなりました。 以下にその概要を報告します。

タイムリーだった開催

 本シンポジウムの目的は,世界8カ国の主要大学のトップが一堂に集い, 大学の社会貢献のあり方をはじめ,研究・教育から大学の運営に至る幅広いテーマについて, 様々な課題を論じ合うことにあります。 第1日目の学長サミット会議, 第2日目の高校生との対話集会及び今後の交流計画策定会議というふうに 終日にわたるフル回転の企画となりました。

 九州大学は,1981年にフランスのボルドー大学との間で大学間学術交流協定が締結されて以来, 着実に国際交流の実績を積んできており, 現在では様々なレベルでの交流協定を含めると実に22カ国,115件余りという状況にあります。 相手国の分布を見ますと,アジアをはじめ,欧米から中南米に及ぶ極めて広い範囲に拡大しており, その中からこれだけ大規模に世界の主要な大学の総長等を招聘するのは初めての試みであり, 大学が全世界的に展開していく中で将来のあり方を提唱するプロジェクトを, 本学が中心になって企画し,実施できたことは,極めて有意義であったと思います。

 今回のテーマは,大きく分けて「経営・運営」,「研究・教育」の二本を柱に, 研究資金の確保や社会貢献のあり方をはじめ,教育と研究のバランスや優秀な研究者の確保, 高等教育の国際化への対応など,個々の大学が模索している多くの課題を論じ合いました。 まさに我が国では国立大学の独立行政法人化が論じられている真っ最中でもあり, 各国の拠点大学においてこのような問題にどのような対応がなされているのか, 貴重な情報交換の場ともなりました。

 このような試みは余り例が無く, そして21世紀を目前に開催されるとあって非常にタイムリーな企画であること, さらにアジアの玄関口と言われる福岡において開催されること等, 数々の特筆すべき特色ある企画となりました。 中でも2日目に行った「高校生との対話集会」には、 外国の大学の総長等に直接質問できる機会とあって,九州全域からの多数の高校生に加え, 本学の学生や大学院生らも出席しました。

高校生の熱意に感動

 現役高校生たちから寄せられる率直な意見や質問は, 出席された各国の大学長らに強い印象を与えました。 同じ世代の子供たちが社会面をにぎわす事件の主役になっている一方で, 我先に手を挙げ前に居並ぶ世界の学長さんから何かを学ぼうとする好奇心に満ちた真摯な姿, いずれも現代の若者のリアルな実像です。 今社会的に重大な課題を投げかけている若者,将来の大学生予備軍の一断面像が見えたことも, 今回の企画で図らずも得ることのできた収穫といえます。 彼らに対して,世界の大学情報だけでなく, まずは九州大学の多面的な情報をこのような機会を作って伝える必要性も痛感されました。

 さらに,今回招聘した皆さんの発案により, 今後の大学のあり方や大学改革の方向性に資するべく, 今回の議論に基づく共同宣言(和文,英文)がまとめられ, 第1日目の最後に杉岡総長から発表されました。

九州大学を世界にアピール

 大学の置かれている状況は,その国の歴史,社会経済システムなどにより, それぞれ特色を有しています。 したがって全ての大学に当てはまる絶対的なモデルは無いものと考えてよいわけですが, どのような状況にあれ,世界中の大学が新しい世紀を目指して研究と教育を充実し, 社会のため世界のため貢献できる大学像を求めていることは間違いありません。

 今回のシンポジウムを通じて,世界の大学間の連携がいっそう強められ, 国際友好の実が挙がるであろうし,まもなく開催される「九州・沖縄サミット」の開催により, 世界中が九州・沖縄に注目する時期に,蔵相会合の舞台となる福岡で開催できたことは, 九州大学を世界にアピールする格好の機会になったものと思われます。

 また2011年には,本学は開学100周年を迎えることになりますが,今回の企画は, 世界に躍動する国際社会で指導的役割を果たす九州大学の姿を様々な形で表現しながら, 開学100周年行事に向けた企画の一環として位置付けられるものとなります。 今後次々と展開されることになっている国際交流事業のスタートをきる企画として, 評価できるものと思われました。

 本シンポジウムの実施に当たっては,文部省からの御援助を頂き, また福岡県,福岡市など地域からの御支持があったことを記して, 関係方面に感謝の意を表したいと思います。 「大学サミット・イン・九州」実行委員会の諸氏には, お忙しいところ短時間の間に用意周到な計画づくりに御尽力をいただいたこと, そして,本シンポジウムの骨格を精力的に議論し, 形作られた準備委員会(姫野薬学研究院長他4名で構成)の諸先生方にも 多大な御苦労をおかけしたこと, 加えて事務局にも並々ならぬお世話をいただいたことに謝意を表します。 参加された世界の学長さんは, このような意義ある企画を積極的に進めた九州大学の見識の高さを評価されましたし, また高校生を含めた参加者の並々ならぬ熱意, 接遇に努力を惜しむことのなかった日本的配慮など, 数えれば限りが無いほど九州大学の素顔が世界の目に触れた有意義な数日間となりました。 実行委員長を務めさせていただいた者として,心から感謝申し上げます。 (なかた みのる 歯学研究院長)


(参加大学と参加者)
*中国清華大学
Prof.Dr.Zhicheng Guan (副学長)
Dr.Yunzhong Jiang(国際協力・交流部副部長)
*フランスロベール・シューマン大学
Prof.Dr.Daniele Alexandre (副学長)
*ドイツミュンヘン大学
Prof.Dr.Andreas Heldrich (学長)
Prof.Dr.Axel Schenzle (副学長)
*韓国釜山大学校
Prof.Dr.Jae- Yoon Park (学長)
Prof.Dr.Yooshin Kim (教授)
ソウル大学校
Prof.Dr.Jong- Chun Woo (大学院長)
Prof.Dr.Jong- Keun Park (学長補佐)
*タイタマサート大学
Prof.Dr.Naris Chaiyasoot (学長)
Ms.Wanida Phankaeo (事務局次長)
*イギリスグラスゴー大学
Prof.Sir.Graeme Davies (学長)
Prof.Dr.Rick Trainor (副学長)
*アメリカミシガン大学
Prof.Dr.Michael D.Kennedy (副学長)
Prof.Dr.Steven M.Whiting(ヨーロッパ研究センター長)
*日本九州大学
Dr.Yoichi Sugioka(総長)
Prof.Dr.Toshifumi Yada (副学長)
Prof.Dr.Yosaburo Shibata (副学長)

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