学部学生及び大学院生の自主研究プロジェクトを助成する全学事業 “チャレンジ&クリエイション(C &C )プロジェクト”。
99年は,全9件のなかでとりわけすぐれた成果をあげた新井洋君と市浦英明君の2 名に, 5月11日の開学記念式典で総長賞が授与され、受賞記念報告も行われました。
「大学を創造,挑戦,そして起業の場に」というC &C プロジェクトの呼びかけにこたえて, 独創的でチャレンジングなテーマに挑んだ両人の受賞記念報告は, 「九州大学は今、若者らしいみずみずしい発想と行動によって大きく変わりつつある」 という感銘を参加者一同に与えてくれました。
新井君(総長賞最優秀賞)と市浦君(総長賞優秀賞)のお二人に, 受賞に当たっての気持ちを語っていただくとともに,
現在進行中の「箱崎商店街活性化プロジェクト」チームから,現況報告をしてもらいます。

【総長賞最優秀賞】

「誘導電流の非対称性を利用した磁気浮上推進装置」

工学部電気情報工学科4 年 新井 洋

 私は自らが考案した新しい誘導方式によるタイヤの要らない磁気浮上式自動車の研究を続けている。 誘導方式を使用すると地上側には複雑なシステムを設置しなくても, 薄い金属板を敷設するだけで浮上することが可能であるが消費電力が膨大となる。 数年前に独学で学問を学び実験を繰り返している時, コイル内部での漏電により生じる磁気特性を発見し, この特性の探求から消費電力を大幅に抑えることができる誘導方式を考案した。

 教育において独学は重要なものと考えているが,現在の大学生の多くは長い間, 親や教師,教育制度の拘束の下に目的も関心もなく教育を受け続けてきたためか, 学問を独学で学ぶ術を体得していないのではないかと感じる。 確かに,授業では教わらないような試験問題以外の知識を習得しても (それが自分の専門分野であっても), それを評価するシステムが大学等に存在しなければ努力しても表向きには意味がないことも それを助長する一因であろう。 その点,九大にC&C という学生の独創的研究を評価助成するシステムがあるのは有り難い。

 適切な表現ではないだろうが,日本の大学はバブルではないかと思う。 高校生が進学する理由は「成績が良いから」「みんな進学するから」「給料が高くなるから」 「まだ働きたくないから」「遊びたいから!」etc 。 一方の大学生の多くは,バイト,遊びに明け暮れて試験直前に勉強するだけである。 真面目な学生であってもカリキュラムをこなすだけの消極的な者も多い。 少子化が進む一方,進学率は年々上昇し,今や大学は大衆化し巨大なレジャー施設と化している。 ここを巣立った我々若者に21世紀の日本を支えていけるのだろうか。

(あらい ひろし)

【総長賞優秀賞】

「環境浄化能を有する光触媒ゼオライトシートの創製」

生物資源環境科学府 森林資源科学専攻 生物材料機能学講座 生物資源化学研究室 博士課程1 年 市浦 英明

 この度は,総長賞優秀賞をいただき,ありがとうございました。 本プロジェクトは,学部時代から一貫して行っている研究です。 「この研究を実用化して地球環境に貢献できれば」と思っていた時にC&Cプロジェクトの存在を知り, 実用化へのきっかけとなれば,と応募した次第です。

 本プロジェクトの概要ですが,紙を作る技術を応用した抄紙システムを用いて 粉末状のゼオライトならびに酸化チタンをシート状にすることを最大の特徴としています。 ゼオライトは,現在問題となっている環境汚染物質を選択的に吸着・除去することが可能な物質です。 また,酸化チタンは紫外線を照射すると強い酸化力を発揮し,有害物質を分解することができます。 そこで,この二つの物質を複合化し,その相乗効果により, 吸着→酸化→無害化の一連のプロセスを連続的に発現する 新しい環境素材を創製することを目的としています。 本プロジェクトにおいて,ゼオライト・酸化チタンの収率ならびにシート強度の向上, 有害物質の分解の効率化を目標に掲げて研究を進めてきました。 試行錯誤を繰り返しながら,最適な調製条件,シート強度付与法を見出すことができ,さらに, このシートによる有害物質の効率的分解が可能で,実用化への期待がもたれました。 今後は,総長賞受賞を励みとして実用化へ向けてさらなる努力を続けて行きたいと考えています。 最後に,このような機会を与えてくださった杉岡総長並びに坂口助教授をはじめとする VBLのみなさまに深く感謝いたします。

(いちうら ひであき)

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