人文科学研究院長 池田 紘一(いけだこういち)

 新人文科学研究院長になられた池田紘一先生は,文学部をこよなく愛する文学の徒である。 ご専門のドイツ文学研究では,ゲーテからトーマス・マンに至る広い範囲をカヴァーされ, 長年従事されてきたC.G.ユングの錬金術心理学のご研究は, 先頃大著『結合の神秘』(全2巻,人文書院)の訳業に結実された。 教育者として無類の情熱をもって学生を文学の世界へと導いておられる姿は, そこに観取される人間精神の生き生きとした営みを,自ら体現されているかのようである。 授業・酒席を問わず,先生の滔々とした熱弁に魅入られる学生も多いが, この上ない聞き上手でもいらっしゃる先生を前に,大人しい学生たちも, いつしか自分で考え他者と語り合う悦びを覚えている。

 昨夏福岡で開催された国際学会「アジア地区ゲルマニスト会議」での大会委員長の役目や, 文学部における長年の改革,特に大学院重点化に当たって執られたイニシアティヴなど, 学内外で果たしてこられた数々の重責は,先生のお力を見事に示している。 また,平成9年度より文部省からの委嘱で行われた 「コア・カリキュラム(文学分野)の研究・開発」プロジェクト (拠点・九州大学文学部,国私8大学が協力)では, 人文学の意義や理想のあり方をめぐって全国の先生方と熱く議論され,議長として, 日本の文学部教育の将来にむけて根本的な提言をまとめることに尽力された。

 21世紀へと歩み出す文学部・人文科学府・人文科学研究院の長として, 真の人文学的精神の実現にむけて,池田先生がこれから遺憾なくリーダーシップを発揮されることを, 一同が期待している。(N.N.)


人間環境学研究院長 竹下 輝和(たけしたてるかず)

 竹下先生は,抜群の洞察力と行動力を備えたプランナーであり, オープンマインドが身上の優れたコーディネーターでもあります。 少々喧嘩っ早いのはご愛敬で,底抜けの明るさと話題の豊富さが多くの人を惹き付け, 幅広いネットワークを築いています。

 先生の専門は,建築計画学です。 研究室では,(1)生活原点主義,(2)技術の先端性,(3)学際的視点,を基本理念として, 社会に貢献する計画技術の洗練と計画者の養成に取り組んでいます。 研究テーマは,住宅や施設の単体計画はもとより, 居住文化,環境デザイン,住環境整備,住宅地管理へと広がり,最近では, 産学共同研究である「地域開発における環境・エネルギー支援システムを活用した 高質都市計画の創造的構築に関する研究(NEDO 新規産業創造型提案公募事業)」 を主査として取りまとめ,目下,グリーンビルディング設計理論の展開に夢中です。

 先生は,研究成果の社会還元を重視し,これまで数多くの計画提案を行っています。 地方分権が進むなか,自治体の住宅政策や地域のまちづくりへのアドバイザーとしても活躍し, また,アーキテクトとして実作も多く,なかでも福岡県で初の単位制高校「県立博多青松高等学校」, 高齢の住み手に配慮した建替え住宅「背振人形の家」は, フィールド調査に裏打ちされた計画理論を実現した作品として学会等から高い評価を得ています。

 大学院人間環境学研究科が発足して3年目を迎え,研究院・学府体制へと移行する状況にあって, 学際的学問分野としての研究・教育活動のさらなる充実に向けて, 竹下先生のリーダーシップが大いに期待されます。(T.S.)


経済学研究院長 細江 守紀(ほそえもりき)

 細江守紀先生は経済学研究院経済工学部門経済システム解析講座の教授です。

 先生は九州大学理学部を卒業後,本学経済学研究科を修了されました。 1981 年に本学に着任後,2 年間のハーバード大学での留学において, 数理経済学の世界的権威であるジェリー・グリーン教授と知己になられました。 帰国後,当時の日本では欧米に比べ,ゲーム理論の経済学への応用研究が遅れていましたが, 先生は情報の経済学やゲーム理論による経済分析に関する研究書を相次いで執筆されました。 それらはいずれも学界において高い評価を受け, 数理経済学者としての地位を不動のものとしました。 その後は研究領域を広げられ, 産業組織論,国際貿易論,企業経済学,公共政策,法と経済学,環境経済学の諸分野において 先駆的研究を続けられております。また,日本経済学会常任理事,西日本理論経済学会事務局幹事, 日本学術振興会専門委員などを歴任され,学会などでも重責を果たされております。

 先生の研究スタイルは,ミクロ的な経済現象を最先端の経済理論により解明するというもので, 先生の研究室には最新のジャーナルやワーキングペーパーが所狭しに理路整然(?)と 保管されています。また先生は教育にも大変情熱を注がれてきており, 既に多数の研究者を輩出しております。先生の熱血漢溢れる教育ぶりはつとに有名で, 昼夜,休日を問わない指導には鬼気迫るものがあります。 しかし,そのような厳しい指導をされる先生も, 宴席などでは博多出身らしく博多弁を交えての軽妙洒脱な会話で周りを楽しませてくれます。

 21世紀を目前にし,国立大学を取り巻く環境も大変厳しい中,本学のより一層の発展のため, 冷静な頭脳と温かい心情とを併せ持つ先生に経済学研究院の舵取りをしていただけることは 誠に喜ばしい限りであり,ご尽力いただけるものと期待しています。(I.M.)


薬学研究院長 姫野 勝(ひめのまさる)

 姫野先生は本年4 月に薬学研究院長に就任され,ご活躍が期待されております。 姫野先生の主要なご研究は“リソソーム機能に関する細胞生物学的研究”であり, 動物細胞内の重要なタンパク質分解の場所であるリソソームが どのような機構で形成され制御されているのかについて分子細胞生物学的, 生化学的手法を駆使して精力的に研究を進めておられます。 先生は早くからリソソームを構成する主要な糖タンパク質群(LGP群)の重要性に着目し, これらの膜タンパク質群を発見,同定し,遺伝子クローニング法により 次々に分子構造を解析し世界に先駆けて論文を発表してこられました。 そして電子顕微鏡を用いる免疫組織化学法によりLGP群の輸送機構についての 基礎生物学的研究を推進してこられました。 これらリソソーム研究に一連の研究は既に国際的にきわめて高い評価を得ておりますが, 最近の研究では,LGP 変異遺伝子を用いた細胞内発現によりリソソームタンパク質輸送機構の解析, さらに今後は個体レベルの発生の分野にまで次々と展開しており, 先生のご研究はますます大きな広がりをもって発展することを期待しているところです。

 先生の研究に対する基本姿勢は若い頃と変わり無く, 大学院学生と夜遅くまで(時には酒を飲みながら)熱心な議論を展開することで 研究を進めていかれるというものです。 また大変面倒見の良い人情味のある方で,多くの卒業生が帰省の折には必ず先生の研究室を訪れます。 そして現在でも先生は学生と肩を並べてしばしば実験台に向かわれております。 一方,学会活動も積極的で日本細胞生物学会,日本生化学会の評議員を歴任されており, またこれまで多くの国際シンポジウム(COE)等の招待講演をこなされております。 先生は幅広い趣味をお持ちですが, 殊に先生のテニスプレイヤーとしての実力は並々ならぬものがあり, 学内のテニス大会では年齢を感じさせないその華麗なプレイぶりには皆感心しております。

 これから姫野先生が積極的な行動力により 重点化大学院大学としての薬学教育・研究の発展にますます寄与されますよう 期待しているところです。(Y.N)


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