トピックスA


地震火山観測研究センター

2. 地震火山観測研究センター

理学研究院附属地震火山観測研究センター長
鈴木 貞臣
表札を掲げる大川理学研究院長と鈴木センター長
表札を掲げる大川理学研究院長(当時、左)と鈴木センター長

地震火山の観測研究拠点

   1990 年−1995 年雲仙普賢岳の噴火時において活躍した「島原地震火山観測所」は,本年度,平成12 年4 月より理学研究院附属「地震火山観測研究センター」に改組されたので紹介します。
   大被害の記憶もまだなまなましい雲仙普賢岳噴火の防災観測拠点として,また粘性の大きいデーサイト・マグマ噴火に関する世界的研究拠点としての活躍が実績として評価され,この度発展的に設置されました。国家的プロジェクトである地震予知計画によって,今まで東京大学地震研究所(共同利用)を地震観測研究の本センターとして,北から北海道大学,東北大学,名古屋大学,京都大学に地域センターが設置されていました。この度,九州大学に地域センターとしての役割を持つ「地震火山観測研究センター」が設置されたことにより,地震観測研究の拠点が全国的に整備されたことになります。これにより,当センターは九州に展開する16 カ所の微小地震観測点や9 カ所の雲仙火山観測点を,衛星通信や専用通信回線を利用して定常観測を行うとともに,それを含めた全国観測網の観測データを用いて,地震予知及び火山噴火予知の基礎研究を行う九州地域における拠点としてスタートしました。研究対象は九州地域にとどまらず,例えば雲仙普賢岳におけるデーサイト・マグマ噴火の観測経験は,同じくデーサイト地質である北海道有珠山の本年3 月末から始まった噴火活動の観測に生かされています。また本年6 月末から始まった三宅島の噴火活動と伊豆諸島の群発地震活動の観測には,雲仙普賢岳でGPS 観測の経
験をつんだ当センターの研究者が派遣され,活躍しています。

全国地震観測網用の衛星通信アンテナ
全国地震観測網用の衛星通信アンテナ

2つの研究分野

    当センターは九州地域の地理的・地学的特徴を生かした,他大学にはない「地殻熱活動観測研究分野」と「背弧総合観測研究分野」よりなる2 つの研究分野で構成されています。図に示されているように,「地殻熱活動観測研究分野」は密度の濃い詳細な観測により,伸張応力場での活発な地殻熱活動を解明し,地震や火山噴火発生に至る準備過程を研究します。そのため雲仙火山や別府−島原地溝帯を主たる研究対象として,島原地震火山観測所が行ってきた研究を継続して行っています。「背弧総合観測研究分野」は新設の研究分野で,九州−琉球弧を中心に,東シナ海や,朝鮮半島,アジア大陸,台湾を視野に入れた広域の地殻変形過程を研究します。1995 年兵庫県南部地震を引き起こしたと考えられているアムールプレートの検証も研究対象です。そのため,平成12 年度末には海底地震計を導入して,海域での地震観測ができるよう準備しています。

大都市圏の強振動観測

   1995 年兵庫県南部地震が阪神淡路大震災を起こした教訓から,平成10 年8 月の測地学審議会建議や平成11 年4 月の地震調査研究推進本部指針において,震源域における強震動の予測に関する研究や,強震動予測手法の高度化に関する研究の重要性が指摘されています。そのため平成11 年度の補正予算で,「大都市圏強震動総合観測ネットワークシステム」の導入が認められ,当センターは人間環境学研究院(都市・建築学部門)と協力して実行しています。その一部として,福岡市や北九州市等の大都市をもつ福岡県の協力を得て,オンラインによる強震動波形データの収集システムを完成しつつあります。これらのデータは,箱崎キャンパス内理学部1 階中央につくられた強震動観測室に集められ,県の業務の障害にならない限りできるだけ広く有効に活用し,その成果を社会に還元することにしています。平成12 年5 月26 日,「附属地震火山観測研究センター」の表札が強震動観測室前に掲げられました。

組織・運営・将来

   「地殻熱活動観測研究分野」と「背弧総合観測研究分野」のそれぞれの分野に教授1 名,助教授1 名,助手1 名と,「背弧総合観測研究分野」に客員教授(㈼種)1 名のポストが認められ,その人事が現在進行しています。これらの教官は,平成12 年度から始まった研究院制度により,理学研究院・地球惑星科学部門の地震学火山学講座に所属し,地球惑星科学専攻の大学院学生の研究指導を行っています。
   「地震火山観測研究センター」にはこれらの教官が併任として勤務しています。さらに当センターには,島原地震火山観測所から継続して,2 名の技官が観測に従事しています。
   2 つの研究分野の内,「背弧総合観測研究分野」は新設ですが,現在,「地殻熱活動観測研究分野」と一緒に旧島原地震火山観測所の建物に勤務しています。
   今後は観測研究のみならず大学院学生の教育にも重点を置くため,将来構想として元岡新キャンパスに「地震火山観測研究センター」の本部を置くことを考えています。そこでは「背弧総合観測研究分野」が広域の地殻変形過程に必要な観測や強震動観測を行い,一方,旧島原地震火山観測所を分所として,「地殻熱活動観測研究分野」が雲仙火山の観測を責任もって継続することを考えています。

(すずき さだおみ 地震学)

組織図


雲仙普賢岳におけるペネトレータ地震計の投下実験
雲仙普賢岳におけるペネトレータ地震計の投下実験


地震発生元

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