新任部局長紹介

内田教授
法学研究院長・法学府長・法学部長
内田 博文
(うちだひろふみ)

  法律は人間社会の所産であり,それぞれの社会の状況を反映しています。なかでも,刑法は,特に,というと少し強調しすぎかもしれませんが,直接的・全面的にその社会状況を反映している法律の一つです。それは,刑法が規定する犯罪と刑罰について,ちょっと想像をめぐらせていただければ容易にご理解いただけることだと思います。ですから,その刑法を主として研究対象にする刑法学は,人間,社会,国家等々,人間社会を構成するあらゆるファクターを視野に入れ,そこに生起するあらゆる問題を考察の対象にしているといっても過言ではありません。そしてその分析のためには,これもまたこれまでのあらゆる学問的営為に学び,それを統合し,有効な方法を創造していかなければなりません。
  7 月に法学研究院長に就任された,わが内田博文教授は,この刑法学のわが国における第一人者のお一人であり,広い視野と鋭い分析力では定評があります。わけても現状を分析するための歴史的視点の重要性を強調され,学界における歴史研究をリードしてこられました。その主著『刑法学における歴史研究の意義と方法』(九州大学出版会)は,その集大成であり,現代日本における刑法現象の分析にいたる歴史研究の実践でもあります。
  その教授の幅広い学識と鋭い洞察力は,専門分野の研究以外のところでも遺憾なく発揮されてきました。学内の九州大学セクシュアル・ハラスメント対策委員会をはじめ,大学評価・学位授与機構評価委員会や法務省人権擁護委員制度調査検討委員会等々でのご活躍は,新しい時代の大学や人権擁護の在り方についての鋭い問題提起になっています。われわれは,内田教授が,大学をめぐる困難な状況の中で,法学研究院においてはもちろん,全学的にも強いリーダーシップを発揮されるものと確信していますし,期待もしています。(Y.O.)
伊藤教授
理学研究院長・理学府長・理学部長
伊藤 明夫
(いとうあきお)


  伊藤明夫先生は大阪大学の化学科出身で,大学院で生化学を専攻されました。大学院修了後は九州大学医学部生化学講座の助手,理学部生物学科の助教授を経,1989年に理学部化学科の教授になられました。先生は化学と生物学の視点から生化学を論じられる研究者で,研究内容とともに学界でも重要な存在となっています。「生物現象に立脚し,それをただの現象論にとどめないで,分子の目で論じる」という口癖には,多くの若者が惹き付けられてきました。
  先生の魅力は研究に対する情熱とその真摯な態度だけではありません。学生・大学院生の日々の研究への指導・助言をこなし,講義でも周到な準備と丁寧な解説で,聴衆を魅了します。学生実験でも実験室にやってきて学生を捕まえては議論をし,時には進路相談,また苦情受付など,まさに学生のなかに入っての教育を実践されています。
  先生は決して弱者の立場に立つことを忘れません。学生の立場に立って教育し,学生の悩みなどにも夜遅くまで相談に乗ってくれます。こういう性格の故,卒業生が絶えず研究室に遊びにきます。また,評議員で多忙な時でも,責任ある立場として地域の福祉活動にお力を注いでこられました。あの温厚そのものの姿のどこにそんなバイタリティーがあるのか,不思議でたまりません。
   日本はこれから激動の時代にはいり,大学のありかたそのものが日本の将来を左右するかもしれません。基礎科学を軽んじる風潮も見え隠れします。そのような中で伊藤先生は,あくまで人の痛みがわかる立場を貫いて日本のアカデミズムの発展を希求してくださると確信しています。(T.O.)
望田教授
教育学部長
望田 研吾
(もちだけんご)


  望田研吾先生のご専門は比較教育学であり,主としてイギリス,アメリカにおける中等教育の制度や改革に関して長年研究を積み重ねてこられ,わが国の比較国際教育学分野のリーダーとして活躍されています。しかし,先生のアカデミックな関心は英米のみならず,シルクロードに関する学際的共同研究による学校調査など,中国,台湾,マレーシア,シンガポールなどアジア諸国・地域にも向けられており,近年ではアジア諸国の教育の国際化について,現地研究者との共同研究に取り組んでおられます。
  ロンドン大学,カリフォルニア大学バークレイ校への留学をはじめとして,学校調査など海外での研究の豊富な経験をお持ちですが,英米的個人主義によるものなのか,それとも生来のおおらかな人柄からくるものなのか,どんな土地に滞在されてもマイペースを崩すことなく,淡々と作業を進めて行かれるその適応力には驚かされます(異国でよく道に迷うという噂もありますが)。ユーモアとジョークがお好きな"gentleman"であり,一方で留学生や院生に対しては生活面までも配慮されながら,きめ細かな指導をされています。
  最近ではアジア比較教育学会の創設に参画するなど,多くの地域的・社会的分野でも活躍しておられ,それにプラスして教育学部長の役目も加わるということで益々お忙しくなりますが,おそらくはマイペースでのりきっていかれるのではないかと予想しています。大学が大きな変革の時代にある今,先生のグローバルな視野からの学部運営による教育学部の一層の充実と発展が期待されます。(H.T.)



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