高原牧場サマーキャンプで得たもの

農学部附属農場高原農業実験実習場 場長
増田 泰久

大分県久住町の標高950m の高原にある農学部附属農場高原農業実験実習場では毎年夏休みに,一般家族を対象に体験実習を3 泊4 日で行っています。今年は5 回目になり,10 家族30 人が参加しました。本年度は文部省の大学開放推進事業経費の配分を受けることができました。
久住高原の豊かな自然の中で,牛の世話や草地内の散策を楽しみ,夜は流れ星に歓声をあげながら,澄み切った空気のすばらしさを堪能しました。ソーセージや乳製品の試作をしたり,地域の農家での作業も体験しました。このサマーキャンプは農学部の院生,学生を中心とし,他大学を含めたボランティアで企画,運営するのが特徴です。
この取り組みは,農学を研究し学ぶものとして,自然環境と農業に対する社会的な理解を広げることが今何よりも重要な責務であるという認識に基づくとともに,企画・運営する学生が自らが学問することの意味を問い直す機会となることを目的としています。したがって,この活動は単なるサービスとしての大学施設の開放ではなく,農学部,農場の果たすべき使命の1 つと位置付けています。
学生スタッフに指導を受けながら牛の身体を洗う
その成果は参加者からのアンケートで十分に読み取ることができます。
「大学・学部の理解とその延長にある産業や職業の理解,興味とつながるこの様な企画が存続すること,他にもひろがっていけば良いなと心から思いました。」「農業や畜産とは日頃縁遠い生活をしていますが,今回のキャンプを通して興味が出たことと,様々な体験を通して,農業や畜産に携わっておられる方々があるから,私たちの食生活が成り立っているとあらためて感じました。」「高原農場の方々や学生さんたちが,農の将来を考え,希望を持って生き生きと基礎的な研究に従事し,日々活動されている様子を見て,本当に頼もしく立派に見え,うらやましく感じました。」「大学の施設をこういうふうに多くの社会人や子供たちに開放して,交流をもっともっと持ってほしいし,持つべきだと思います。何度でも参加できれば参加したいと強く思って帰りました。」「九大生の人柄に触れ,お別れする日が辛かったほどです。何かに打ち込んでいる時って,魅力的ですよね。九大生のすばらしさが随所に感じられて,『私もがんばろう!』って思いました。この催しをこれからも続けてくださることを切に願っています。学生さんも我々もお互いの『心が成長』するからです。」「暗い悲しいニュースばかり耳にする中,日本の将来は子供たちの未来は,と不安が募る一方でしたが,『この人たちがつくっていく社会は,きっと優しくて安心できるものだろうな』と思わせてくれる方々に出逢えたのは大きな喜びでした。」「大自然の中で温かい心に包まれ,やがて人間のためにはかなくなる生命に触れ,思いきり身体を使って遊び,娘は『何か』を持って帰ってきたようです。こんな素晴らしい成長の機会を与えてくださってありがとうございました。」

(ますだ やすひさ)


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