探検新病院

 福岡都市高速で東浜付近を走ると,直線と曲線でかたどられた暖色の建物が偉容を見せます。これが建設中の九州大学新病院です。

 12月11日(月),玄界灘から寒風が吹き,ようやく福岡にも冬が訪れたと感じられた日,杉岡洋一総長が山田泰二施設部長の案内で新病院建設現場を視察しました。総長とともに建設進む新病院を回って見て,「これは皆さんに期待していただける病院ができつつある」という感を強くしました。(総務部企画広報室)

新病院はゴムの上に浮かぶ

 新病院は,国立大学の建造物として初めて,免震システムを採用した建物です。

 新病院が採用している免震システムは,建物の各柱の基礎部分に鋼板と天然ゴムを主成分とするラバーベアリング(Rub-ber Bearing )116基を置き,地震で地面が揺れた場合,このラバーベアリングがゆがんで建物の揺れやショックを最小限に抑えるというものです。そしてこの揺れも,特殊な形の鉄でできたダンパー(Steel Dumper )66基と柔らかな金属である鉛でできたダンパー(Lead Dumper )48基によって,ゆるやかにできるだけ早く収束されます。またライフラインの建物への引き込みには揺れしろを取っており,地下の配管も建物に吊るしてあります。一つのラバーベアリングには約1,000トンの重さがかかっているということでした。

 山田施設部長によれば,国立大学病院の建物は,一般の建物の約1.25倍の荷重に耐えられるように作ってあり,これに免震システムを採用した新病院の耐震性は,卓絶したものがあるということです。なおこのシステムの寿命は建物と同等の長さがありますが,途中で免震システムだけの入れ替えも可能です。このため,歴史的建造物の保存のために,建物の下に新たにこのシステムを入れる例もあるとのことでした。

病室は患者さんのために

 地下の基礎部分の次は5階へ上がり,病室(モデルルーム)を見ました。

 枕元にテレビが置かれた四つのベッドが入った部屋は,窓が大きく取ってあって明るく,ベッド間のスペースもゆったりしています。廊下の手すりに寄りかかって歩きながら具合を試していた杉岡総長は,病室の入り口の洗面台に向かうと顔を洗う格好をして「車椅子の人もうまく使えるようにお願いします」と,また個室のシャワー室では「付き添いの人も入りやすいように」と,長年患者さんに接してきた整形外科医の立場からアイデアを出していました。

 11階のデイ・ルームは患者さんの歓談のためのスペースです。外に向かって曲線を描いた窓からは,青く光る博多湾,穏やかな姿を見せる能古島や志賀島,東へ伸びる町並みが展望できて爽快でした。

展望

 現在の第T期棟の工事は平成13年10月の竣工,平成14年4月開院を目指して進められています。この中には手術部を初めとして中央診療部門の一部と620の外科系病床が入り,現病院の外来棟及び東病棟と接続して一つの病院として運営されます。

 そして第V期工事まで完了すると,地上11階,地下1階,高さ56m ,延べ床面積約12万m2の,文部科学省所管の全ての施設の中でも最大規模の病院ができることになります。


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