文学部長 池田 紘一教育学部長 望田 研吾法学部長 内田 博文
(いけだ こういち 独文学)(もちだ けんご 比較教育学)(うちだ ひろふみ 刑事法学)
   
汝みずからを知れ!21世紀をになう君たちへA君へ
   
 高校までの諸君は,親や学校や世間の庇護のもとにあった。大学に入るということは,その庇護を離れ,何事も自分の頭で考え,自分で判断し,自分の責任で行動するということである。そのためにはまず自らを知らなければならない。自分はこうだという思い込みや外から貼り付けられたレッテルを捨て去って,自分自身と正面から向き合おう。
 しかし実は,これは至難の業だ。ただ自問するだけでは堂々巡りに終わる。自分を知るには自分を映す鏡が要る。その最高の鏡は書物である。古典である。第二の鏡は友である。真に語り合える友である。第三の鏡は多様な経験である。そしてこれらを通じて,自分にとって他者とは何か,社会とは何か,世界とは,歴史とは,自然とは何か,絶えず問いつづけよう。それが唯一自らに至る道である。大学で何を専門に勉強するかについても,その延長線上で,自らのしっかりした判断で決定しよう。
 新入生の皆さん,入学おめでとう。世紀の変わり目の大学入学,意義深いものがあると思います。しかし,この21世紀ほど混沌に満ちた世紀はないでしょう。環境問題をはじめ人間の心の問題に至るまで,頼りにすべき確実な「解答」はありません。大学自体がその「解答」を模索して日夜苦闘しているといえます。これから,皆さんはその模索に大学を構成する重要な一員として加わることになります。その中で皆さんは多くのことを学んでいくでしょう。ただ,大学での学びの基本はあくまで自分自身です。自分で課題を探し,チャレンジしていくことが大事です。先生,先輩も皆さんのチャレンジをしっかりと受けとめてくれることと思います。その学びを通して21世紀に飛翔するための足がかりを築いてください。  入学,おめでとう。少年弁護のメッカの福岡にあって,弁護士会との交流も日本一との理由で,故郷を遠く離れた私ども,九大の法学部を選ばれた君のことですから,今の心境はいかばかりでしょうか。いよいよですね。法曹への道は厳しいものですが,夢に向かっての苦労ですから,やり通せますよね。癒されない寂しさの救いを悪い大人や不良仲間に求め,さらに傷ついていく。私達の廻りには,このような悲しい子ども達の話が充ちています。新聞を賑わす一部の少年達だけが問題ではありません。「良い子」といわれる子ども達も,このような少年達の気持ちが分かるといっています。悪循環を断ち切ろうと悪戦苦闘している君の先輩達も,君が加わってくれるのを心待ちにしていることでしょう。私達も心から応援したいと思います。まだまだ話したいことは山程ありますが,今日はお祝いだけにしておきます。くれぐれもご自分を大事にしてくださいね。おめでとう。

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