平成11年12月にマスタープラン策定作業を開始して以来,大勢の関係者の方々と意見交換,情報交換を行いながら検討を進めてきた。プランの検討には,MCM設計共同体の専門家と世界的に活躍している建築家シーザー・ペリ氏に加え,米国のキャンパス計画の専門家集団として名高く,世界各地でキャンパス計画を手がけているササキ・アソシエイツが協力事務所として参画し,画期的で実現可能性の高いプランを策定することができた。また,九州大学の教官,新キャンパス計画推進室,施設部等の専門家集団による共同作業もこのプランの作成過程で大きな役割を果たした。
様々な政策転換や構造改革が進行し,極めて流動的な現在の我が国の社会的背景と,国立大学のあり方が問われ,大学の組織体制や運営の改革が推進されている最中でのプランづくりは,九州大学のみならず国立大学の新世紀に向けた明確なビジョンの必要性を痛感しつつ作業を進めた。
新キャンパスにおける骨格形成と土地利用等の物的環境(ハードウエア)づくりの指針となるマスタープランの検討においても,その拠り所となるのは建学の精神や研究・教育の理念である。今回の場合,「九州大学の改革の大綱案」や学府・研究院制度を拠り所として,その理念を実現するための環境づくりを重点目標とした。
こうして検討されたマスタープランの大きな特徴は,計画目標や計画方針・戦略の独自性とその計画方針・戦略に基づき形成されるアカデミック・ゾーンの空間構成の新規性にある。
マスタープランの内容は,計画条件(2,3章),「新しいキャンパス像」として整理したビジョン(4章),計画概念をビジュアルに整理した計画目標・方針・戦略(5,6章),新キャンパスの環境を支える骨格形成とインフラストラクチャーの計画(7〜9章),計画方針・戦略を検証し,具体的なイメージを提示した空間モデル(10章),整備,管理・運営方針(11,12章)といった章立てで構成している。
キャンパス像,計画目標,
計画方針・戦略の共有
一般に,キャンパス・マスタープランは,専門家の間で計画課題や空間イメージを共有することに主眼が置かれ,専門的な記述内容となっているが,今回は,将来像,目標像,計画方針等を全学レベルで共有することに主眼を置き,内容構成や記述においても,一般に理解しやすい形式とすることに努めた。それでも,カタカナが多くなったのは,専門用語の日本語ボキャブラリーの少なさによるところが大きい。
また,これまで九州大学では,研究者参加型の新キャンパス計画を進めてきており,その路線を継承しながら今後も整備を推進していくことを念頭に置いた計画目標や方針・戦略を提示している点が特徴となっている。
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