宙空環境研究センター構想とは
設置準備委員会委員長・理学研究院 教授 湯元 清文
※宙空(ちゅうくう):地表からおよそ8万km上空までの地球磁場が支配する領域

宇宙の天気予報

 有限な地球資源に起因するエネルギー,食料,人口,地球環境の諸問題の解決方法のひとつは,人類の生活圏を宙空まで拡げることである。21世紀には,人間活動が宇宙空間を求め拡がり,また,地球の磁場強度が小さくなりつつあることから,太陽からの宇宙放射線や荷電粒子流による生体への被ばく,人工衛星の宇宙線被ばくによる故障や通信障害,高緯度地方での送電線のショートやブラジル磁気異常帯への宇宙線の異常降り込み,地球環境や生物への悪影響,さらにスペース・デブリ(宇宙のゴミ)など宇宙活動への大きな障害など,“宇宙天気”の予測・警報に関わる基礎研究の教育研究が非常に重要となってくる。

 これらの教育研究を発展させるために,九州大学では平成12年度に発足させた「学府・研究院制度」を活用し,部局横断的で新しい学際的研究分野を創成するための柔軟な協力研究体制の設置が可能となった。理学研究院,総合理工学研究院,工学研究院,システム情報科学研究院等で,これまで長年蓄積してきたグローバルな地上ネットワークの観測手法と地上プラズマ模擬実験に統計理論解析などを組織的に導入した新しい「宙空環境研究センター」を設置し,21世紀の人類の生活圏となる宙空の環境に関する基礎研究分野の創成と発展により,国際的な貢献が大いに期待されている。

(ゆもと きよふみ 太陽惑星系科学)

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