式典・講演

総合研究博物館 創設記念式典と講演会

挨拶する湯川館長(中央)。左は本間研究調整官。

 三月十六日(金)、創立五十周年記念講堂の大会議室で、総合研究博物館の創設記念式典並びに記念講演会が開催されました。

 式典で挨拶に立った杉岡総長は、次のように述べました。

 「九州大学には、開学以来約一世紀に亘る研究活動によってもたらされた、西日本やアジアを中心とした貴重な学術標本約七百四十二万点があります。現在各部局に分散しているそれらの散逸を防ぎ、一元的に管理保存することを目的の一つとして、多くの方々の御尽力により二〇〇〇年四月に九州大学総合研究博物館が設置されました。今後は、湯川淳一初代館長のもと、本学の将来にとって価値ある研究博物館として機能することを期待しています。」

 総長挨拶に続いて、湯川館長、文部科学省研究振興局学術機関課の本間実研究調整官、京都大学総合博物館の瀬戸口烈司館長、福岡市博物館の桑原敬一館長の挨拶がありました。

 創設記念式典に引き続き、国立歴史民俗博物館の佐原眞館長と、ミシガン大学自然史展示博物館のエイミィ・ハリス館長が記念講演を行いました。


開学記念式典と講演会

 本学の開学記念日である五月十一日(金)、創立五十周年記念講堂で記念式典が催されました。

 式典では、杉岡総長が九州大学の現況を説明したのに続いて、感謝状贈呈、名誉教授称号記授与、チャレンジ・アンド・クリエイションプロジェクト(C&C)総長賞並びに奨励賞授与、ロボコン二〇〇一チームへの学生表彰が行われました。

 翌十二日(土)には、福岡銀行本店大ホールで、記念講演会が催されました。

 まず、C&C総長賞報告会として、総長賞の薄本豪(うすもとたけし)さん、奨励賞の時津裕子(ときつゆうこ)さん、近藤哲哉(こんどうてつや)さんが、それぞれ受賞研究の発表を行いました。薄本さんは発表の冒頭で「学生のアイデアを取り上げ応援してくれる九州大学を誇りに思います」と述べました。

 続いて、人文科学研究院の菊竹淳一(きくたけじゅんいち)教授が「博多の美術」と題して、総合理工学研究院の片山忠久(かたやまただひさ)教授が「熱くなる福岡」と題して講演しました。

 今回は、講演に続いて「高校生との対話集会」が行われ、福岡、佐賀、熊本から高校生約六十名と杉岡総長、柴田副学長、部局長や講演者などが参加しました。「学力が低下したと言われますが、高校での履修科目はむしろ減ってきています。」「知識よりも意欲の問題。意識して読書したり友と語ったりして、自分の考えを簡潔に人に伝える力を付けてほしい。」など活発なやりとりがありました。


ノーベル賞 白川博士が講演

 「導電性ポリマーの発見と開発」で二〇〇〇年のノーベル化学賞を受賞した白川英樹筑波大学名誉教授が、四月十四日(土)「ノーベル賞と高分子科学」と題して九州大学で講演しました。

 講演は、白川博士の研究者仲間であり高分子学会会長である梶山千里(かじやまちさと)九州大学工学研究院長の要請で実現したもの。会場となった箱崎キャンパスの創立五十周年記念講堂は、約二千名の聴衆で満員となり、特に九大生、高校生など若者の多さがめだちました。

 白川博士はまず、実験の「失敗」理由をつきとめようとしたことが新発見につながり、共同受賞した米国の異なる分野の科学者とそれを発展させてノーベル賞受賞につながった経緯を説明。「いろいろな人の研究の積み重ねが新しい発見につながる。科学の研究は時間がかかるものなのです。」と話しました。講演の後、会場の聴衆との質疑応答があり、相次ぐ熱心な質問に、白川博士は丁寧に答えていました。

講演要旨

 ニュートンやレントゲンなどには、探し求めていたわけではないが偶然がきっかけですばらしい発見や発明をする能力(serendipity)があったと言われる。それは教育によって得られるものか。パスツールなどは、「偉大な発見の種はいつでも漂っており、それを待ちかまえている心にだけ根をおろす」と言っている。教育や学習により、そういう心は育てられるのではないか。

 若い人は頭が柔軟なうちに、できるだけいろいろな研究をやったらいいと思う。いろいろなことを観察し、整理し記録する。予想と違うことはしょっちゅうだ。それを単なる誤りとして片づけず、よく調べる。そういう習慣を今のうちに身につけておくといい。

(「研究の醍醐味は?」の質問に一言)
これまで誰も分からなかったことが分かるようになることです。


グローバリゼーションは地域をみながら辻先生講演

 五月十六日(水)国際ホールにおいて、東京大学名誉教授でミュンヘン大学の名誉評議員である辻●(●は王へんに星)(つじひかる)先生が、「教養への旅」と題して講演しました。カフカの日本への紹介者としても有名な辻先生の講演は、軽妙な語り口で、歴史や社会問題など周辺事情にも触れつつ、これからの「教養ある」個人や国の在り方にまで広がりました。

 講演の後は会場の学生たちと質疑応答が行われ、最後に、ミュンヘン大に留学した際に辻先生にお世話になった法学府博士課程三年の釜谷真史(かまたにまふみ)さんが花束を贈呈しました。

講演要旨

 翌十七日(木)、辻先生は六本松キャンパスで「二十一世紀プログラム」の学生に特別講義を行いました。学生からはドイツの環境行政、交通事情、学校制度などについて質問が相次ぎましたが、第二次世界大戦に関する日独の歴史教育の違いが話題となった辺りから講義は広がりを見せ始め、十六日の講演内容とつながり、次のような言葉で結ばれました。

 十九世紀、欧米はアジアやアフリカなど各地域の文化を無視するやり方で「野蛮人」への侵略を行った。日本も何かというと西欧ばかりを比較の対象としている。この状態を元に戻すのにどれだけ時間がかかっているか。そのしっぺ返しをどこかで受けるのではないかという恐怖を感じている。

 二十一世紀の地球を保持するためには、そこから脱する必要がある。欧米を捨てろというのではない。欧米唯一で見捨ててきたかもしれない地域の文化の意識を持つべきだと考える。欧米と地域の両面を同時に見ながらグローバリゼーションを進めることが、教養だと思うし、二十一世紀にやらねばならないことだ。

21世紀プログラムの学生たちと

※21 世紀プログラム
「21 世紀を担う専門性の高いゼネラリスト」育成を目指して九州大学が今年度創設した。学生は特定の学部に属さず、個別指導のもと、学部を横断して学ぶことができる。選抜はアドミッション・オフィス方式で行われ、第I期生は20名。




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