必要なのは『物を作るのが好き』という純粋な気持ちと行動力

世界大会準優勝! 九大ロボコンチームかく戦えり

工学部機械航空工学科3年入浜紀之

工学部機械航空工学科3年大川内栄治

 私たち九州大学ロボコンチームは、機械系学科の運営する創造工房のプロジェクトとして、NHKが毎年開催している「NHKアイデア対決ロボットコンテスト大学世界大会」に参加することを主な目的として活動しています。平成十三年三月四日(日)に福島県郡山市で開催された「二〇〇一アイデア対決 ロボットコンテスト大学世界大会」に二度の審査を通過した国内十四チームに海外からの六チームを加えた二十チームが参加し、その中で私たちは準優勝に輝くことができました。

大会までの道のり

 その様子はMHK総合テレビで放送されました。放送では、一見無理なく勝ち進んだかのように見えますが、実は大会本戦よりも大会に参加するまでの道のりが非常に大変なのです。

 今回の大会の場合は、五月初旬に大会の要綱が届きました。まずメンバー全員が各々ルールを熟読した上でアイデアを出します。どうすれば面白いマシンになるか、どうすれば勝つことができるのかなど、それぞれ異なった意見がぶつかり合います。経験を積んだ上級生が堅実なアイデアを出すのに対して、新入生が新鮮な発想で上級生を驚かせることもしばしばです。それらのアイデアをミーティングで洗練します。次にそれらのアイデアの中から、似通ったアイデアごとのチームに分かれます。今度はそれぞれのチーム内でさらに戦略面なども含めて考えます。定期的にお互いのチームのアイデアを見せ合い、弱点を見つけたりしながら切磋琢磨することで、より良いロボットを設計することができるのです。また、実際に一部のアイデアの試作品を作ったり、体育館を借りて模擬戦を行ったりしてメンバー内のイメージをより明確なものにします。

 次に六月ごろからNHKに応募する書類の作成に取り掛かります。

 例年、面白いアイデアで複雑なモノを作ろうとしていたのですが、今年度は勝つことを目標としたため、出てきたアイデアは奇想天外なものではありませんでした。そのかわり、より具体的で見た人がイメージしやすいものを目指しました。書類の提出期限があるため、七月上旬は非常に忙しくなります。この書類により、まず一次審査が行われます。実はこの一次審査に合格するのも結構難しく、今回の大会では過去最高の五十八チーム応募した中から三十チームが合格しました。なお、私たちからは二チームが応募し、そのうち一チームが合格することができました。合格することのできなかったチームのメンバーも合格できた方のチームに合流してさらに具体的な機構や戦略を詰めていきます。この頃から様々な機構ごとに小さなグループに分かれ、それぞれの担当者を決めて作業の分担化を図ります。こうすることで全体的な作業の能率も上がり、個人個人が責任を持って取り組むことができます。各機構ごとに分かれた後も、他のグループの進行状況をミーティングで報告するなど、しっかりと把握して設計などの作業を進めます。

 実際の製作段階に入ると、上級生や指導員の方にしっかり教えてもらい、創造工房にある様々な工作機械や、学内の実験工場にある大型工作機械を使用します。電子制御部も含めて、それぞれの機構はできてからすぐに動くことはまずなく、何度となく改良を繰り返して完成度を高めていきます。毎年十一月の学園祭にマシンを展示するので、この頃までに一通り形にしなければなりません。

 学園祭が終わりテストランと改良を繰り返しながら、十二月に二度目の審査である事前審査が行われます。この事前審査を通過して初めて大会の本戦に参加できるようになります。ここで国内のチームは三十チームからさらに十四チームにまで絞られます。事前審査で合格したら、あとはより実戦に近い状況のもとで繰り返しテストランを行い、マシンの完成度を高めていくだけです。とは言っても事前審査の後から追加される機構もあったりして、基本的に忙しいことには変わりはありません。二月になると、試験で一時中断されていた作業も月末になってから再開され、急ピッチで最後の調整を行い大会に備えます。

本大会の様子

 大会前日には、マシンの調整を兼ねたテストランや番組のリハーサルが行われますが、各チームとも緊張と焦りの中で最後の調整を行います。三月四日、福島県のビックパレット福島で開催された大会本戦はトーナメント形式で行われ、私たちはシード校として二回戦から参戦しました。最初の試合は鹿児島大学との対戦でした。前日のテストランではかなりいい動きをしていたチームだけにメンバー全員緊張していましたが、その緊張感を吹き飛ばすかの様にビンゴ勝ちで駒を進め、続く神奈川工科大学、金沢工業大学も破って、三連勝という圧倒的な強さで決勝戦へと勝ち進みました。決勝戦では、残念ながらマシントラブルで、インドネシアのスラバヤ電子工学ポリテクニックに敗れて準優勝となりました。

準優勝の記念に会場の裏側で撮った、メンバー全員の集合写真

 大会後に開かれた他チームとの交流会では、九大チームの強さは話題となり、悔しがっていたメンバーにも自信と満足の残る結果となりました。

 今年度から、大学世界大会は「ABUアジア太平洋ロボコン」と名称が変わりました。すでにルールも発表されています。新たなメンバーを加えてまた忙しい一年になりそうです。最後になりましたが、私たちは始めからあんなロボットを作れるわけではありません。必要なのは『物を作るのが好き』という純粋な気持ちと行動力なのです。

(いりはまのりゆき、 おおかわち えいじ)

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