C&Cにはぜひ挑戦してほしい。
受け身な過ごし方は、してほしくありません。
薄本 豪(うすもと たけし)
経済学府 修士課程1年

薄本さんは、平成十二年度、学生の自主研究や調査プロジェクトを助成するチャレンジ・アンド・クリエイション・プロジェクト(※1C&C)に「インターネットを利用したマッチングシステムによる就職活動支援事業構想」が採択され、その成果が特に優れていたとして総長賞を受賞しました。受賞式での笑顔と、「総長賞に単位はついていないのでしょうか。」の発言がユニークだった薄本さんを、C&Cプロジェクト室のある※2創造パビリオンに訪ねました。

Q…この部屋は、C&Cプロジェクトの研究のための部屋ですか。

創造パビリオン内のC&Cプロジェクト室で

薄本…C&Cに採択されると、この部屋を自由に使ってよいのです。私は講義のないときは大体ここにいて、勉強したりプロジェクトの案を練ったりしています。

Q…薄本さんの研究は、パソコン上で求人票を見たり、面接の予約をしたりするシステムでしたね。現状の不満を改善しようという意欲の感じられる、学生の就職活動に役立つ、とてもよくできたシステムだなと思いました。C&Cへの応募のきっかけなど教えてください。

薄本…学生は、会社のことをよく知らないで就職を決めているのではないか、会社も学生のことをもっと知りたいに違いない、もっとお互いをよく見ることのできる仕組みはできないものかと考えたのがきっかけです。

 システムは三つに分かれています。まず、企業の担当者と学生が直接会って話ができる場所、「就職サロン」の予約・予約状況閲覧システム。次が電子求人票で、どんな仕事ができるのか、どんな人がいるのか、福岡で働くことができるのかなど、自分の欲しい細かい情報の載った求人票を検索できるシステム。そして先輩たちの体験や情報を蓄積して活用できるシステムです。成果発表したのはまだデモ版でしたが、今ある企業と来年度からの実用を目指して、「就職サロン予約システム」を共同開発中です。これらのシステムが稼働すると、学生はいろいろな企業の情報を得て、納得した上で就職できるようになるのではないかと思います。

Q…総長賞を取ったときの「単位も欲しい」という感想が記憶に残っているのですが、学部学生時代はいかがでしたか。

薄本…高校時代は部活動の剣道と勉強だけでしたので、大学では多くの人と知り合いいろいろなことをしたいと思いました。そこで、九大に入ると専門学校に通ったり学生の団体を作ったりして大学の外での活動が多くなり、卒業間際に「単位が欲しい」状態になったのですが(笑)、いろいろな貴重な体験ができたし、九大生以外の幅広い年齢の仲間ができました。目的を持って、自分が楽しいと思うことをして過ごしたと思っています。その中で、面接対策を兼ねた就職を考える会をやっていて、どうしたら自分の能力や適性を生かせるのか、自分はどんな仕事をしたいのかなどについて考え、現状は企業と学生の関係はフェアでない、お互いの本当の姿を見ることができないと考えるようになりました。友人の中には、その会社や仕事への情熱はあるのに、表面的な評価をされて、希望がかなわない人がいました。 そこで、もっとよく学生を見ることのできる場所が作れないかと考えた結果が、あのシステムです。

Q…なるほど。しかし、薄本さんにそういうことを気付かせる場所が、九大の外だったのは少し残念です。

薄本…九大にも、もっと学生たちが交流できる場所があるといいと思います。文系の学生と理系の学生がもっと交流できる、学生の集まる場所があるといい。

Q…建設中の「学生交流プラザ」がそういう場所になることを期待しています。後輩たちに、これまでの体験から、伝えたいことはありませんか。

薄本…まず、C&Cは、自分の専門に関係なく自分のやりたい研究をやって、応募して採択されれば、研究室や助成金などで援助してもらえる九大ならではの制度です。応募は自由ですから、ぜひ挑戦してほしいと思います。それから就職では、学生は商品で企業は買い手です。自分の特性や価値をアピールしなければなりません。そのためには、自分がどんな能力を持っているのかをまず考えて、それを発揮してほしいと思います。受け身で勉強したり就職活動をしたりという過ごし方はしてほしくありません。それと、できるだけ多くのいろいろな人に出会ってほしいと思います。

Q…これからやりたいことは?

C&C総長賞報告会でのプレゼンテーション

薄本…ベンチャー的な新しいサービスを生み出したいです。すごい技術も、世の中に認められないと買ってもらえない。世に出るための計画を立てたりプレゼンテーションしたり、新規事業をやる人やプロジェクトのサポートをしたいと思っています。第三者との結びつきによって、あるものが膨張する瞬間があります。あいつの所に行けば、広がる、膨らむ、面白くなる。そういう存在になりたいんです。

 C&C成果発表会での薄本さんの発表は、研究成果自体が非常に魅力的だったのはもちろんですが、テンポよく明快で、聴き手の理解を促し共感を呼び起こす秀逸なプレゼンテーションでした。五月十二日、開学記念講演会とともに開催されたC&C総長賞報告会での、「学生のアイデアを取り上げ応援してくれる九州大学を誇りに思います」との発言も印象に残りました。ただ、評価されたにもかかわらず、九大では三つのシステムのうちの一つしか実現できないのが悔しくてたまらないそうです。近い将来、どこかでフルスペック版が稼働することを期待しています。

※1
C&C:学生から自主研究や調査プロジェクトを募り、選ばれた年間約10件それぞれに、助成金50万円と、創造パビリオン内の研究室(共同)が提供される制度。1998年に設けられた。

※2
創造パビリオン:産学連携業務の推進やベンチャー企業の育成、学生の起業家精神発揚などを目的に2000年3月設置。(株)産学連携機構九州のオフィス、C&Cのプロジェクト室、レンタルラボなどが入る。


前のページ ページTOPへ 次のページ
インデックスへ