中山 幸(なかやま みゆき)
法学部4年 平成12年度海外留学派遣学生
留学先でいろんな人に会ってほしい。
 お二人目は、法学部四年生の中山幸さんです。中山さんは授業料不徴収と単位互換を原則に一年間の交換留学を行う九州大学の派遣留学制度で、平成十二年八月から平成十三年五月まで、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンにある協定校、ライス大学へ留学していました。九州大学が学生交流協定(部局間協定を除く)を締結している海外の大学は、現在十一カ国三十九大学にのぼります。平成十二年度の派遣留学生は全十五名。この派遣制度と表裏一体の関係で、九州大学は英語による短期留学プログラム(JTW:Japan in Today's World )を実施しており、海外にある学生交流協定校から優秀な学生を受け入れています。中山さんは、このJ T W 生のチューターを留学の前後ともに務めています。J T W チューターは、日本にやってきたJ T W 生の勉学や生活をサポートする学生パートナーのことで、現在では三十五名(学部一年生から大学院生まで)と三年前の約二倍に増えています。フィールドスタディへの参加、ニューズレター編集など、最近では積極的にその活動を広げており、国際交流の掛け橋として大いに貢献しています。
 J T W チューターと留学の両方の経験をお持ちの中山さんに、お話をうかがいました。

Q …法学部の四年生。どのような勉強をして いますか。

中山…政治学の薮野祐三教授のもとで、フィー ルドワークを中心としたゼミに参加していました。 例えば政党やN G O 団体にインタビューに行って、 まとめて発表します。とても新鮮な体験で、予 想したとおりとても面白いです。薮野先生のゼ ミや講義を取るうちに、地域主義に興味がわき ました。

Q …留学の動機をお聞かせください。また、数 ある協定校の中からアメリカの大学を選んだ 理由は何ですか。

中山…私には、日系アメリカ人の親戚がいて、も ともとアメリカには親近感を持っていました。外 国語が英語しかできないというのもアメリカを 選んだ理由の一つですが(笑)、日本と違って多民 族国家であるアメリカで、いろんな人と会ってみ たいと思ったのが大きな理由です。

Q …J T W のチューターをしていらっしゃ ったと伺いましたが、そのきっかけは?

中山…高校生の頃一ヶ月ほどイギリスで ホームステイをしたことがあり、違った環 境で学ぶことの面白さを知り、いつか本格 的に留学したいと思っていました。大学三 年生の時、たまたま留学生課が行っている 海外留学説明会に参加しました。そこで チューター制度があるということを知り、 外国の学生と知り合える良い機会だと思 い応募しました。
空港に到着した留学生の出迎えは、チューターの大切な仕事の一つ。

Q …J T W のチューターというのは、どん なことをするのですか。

中山…まず、留学生が到着する空港に迎 えに行ったり、宿舎となる国際交流会館の 周辺や大学の中を案内したり、外国人登 録のお手伝いをしたり。また、日々の生活 や勉学の中で何か問題が起こった時には、 一緒に解決したり、九州大学で留学生活 を送るための様々なサポートをします。そ の他に、チューターと留学生が協力して、バ ースデーパーティーやハロウィーンパーティー を開いたり、留学生センターが主催する行 事に参加したりして楽しく交流をしてい ます。

Q …チューターをしていて良かったことや 困ったことを教えてください。

中山…チューターを始めて最初の頃は、恥 ずかしかったり、文化の違いにとまどったり、 なかなかうまくパートナーの留学生と接 することができませんでしたが、少しずつ お互いにうち解けてきました。一年が終わ る頃には、チューターと留学生という関係 を超えて、友だちとして接することができ るようになりました。そのとき担当した イェール大の学生とは、今でも付き合いが 続いています。チューター体験を通して、様々 な国の人と出会い、言語のみでなく、その 国の人がもつ文化や社会を知ることがで きました。また留学生と友だちになれた ことで、よりその国に対して関心を持つよ うになりました。

お世話になったルームメイトと
Q …留学先での生活の様子を教えてく ださい。

中山…ライス大学では学生は基本的に寮 に入ります。最初の学期は、ルームメイトが以前にライス大学から九州大学へ留学 していた学生で、いろいろと助けてもらい ました。そのおかげで特に困ったことはあ りませんでしたが、ルームメイトを持つのは 初めてで、自分の英語力が十分でないため に意志の疎通がうまくできなかったり、生 活時間が異なるために生じる不便さ、例 えば部屋の電話など共有しているものを どう使っていくか、そのような問題はあり ました。そんなときは、「分かってくれるだ ろう」ではダメで、ちゃんと意志を伝えない とイライラが募るばかりです。
 勉強については、行く前に先輩や留学経 験者から話を聞いていたのである程度覚 悟はしていましたが、思った以上に大変で した(笑)。専門の政治の科目の他にアメリ カでしか受けられない授業を取りたいと 思い、ダンスや多文化理解の授業も受けま したが、毎回課題が出され、発表やレポー トはしょっちゅう、学期中に最低二、三回は 試験があるなどで、毎日夜中の二時、三時 まで勉強していました。特に、比較政治や 国際政治の授業はテキスト数冊に副読本 も数冊あって、読むだけでも一苦労でした。 これは当たり前のことかもしれませんが、 日本の政治は日米関係を中心とした国 際政治なのに、アメリカではヨーロッパ諸国 との関係に比重が大きく、ヨーロッパと比べ て日本にはそれほど比重が置かれていな いと感じました。
 また、どうしても授業についていけなく なって「分かりません」と先生に相談しま した。すると、「後でいっしょに解決しよう」 と分からない所を個別に指導してくださ り、以後いろいろ気にかけてくださるよう になりました。学生と先生との距離が、日 本よりも近い感じがしました。
 学生は、みんなすごく勉強していて、夜 中の二時、三時までというのは当たりまえ でした。授業への取り組みはもちろん、授 業に登録すると必ず評価が結果として 残るので、登録の段階からとても真剣です。 それと勉強をする環境が充実していると 思いました。例えば図書館は二十四時間 開館していて、学生はずっと居て好きなだ け勉強できます。勉強できるスペースも充 実していて、学生の勉学をサポートすると いう面では、九州大学よりも体制が整って いると感じました。

Q …留学中に一番嬉しかったことは何で すか。また、一番辛かったことは?

中山…嬉しかったことは、留学した当初、 周りは知らない人ばかりだったのに、ルーム メイトがバースデーパーティーを開いてくれ て、寮のみんながお祝いに来てくれたこと です。それから、滞在中に旅行して、九大 でチューター時代に友人になったアメリカ 人学生と再会できたことも嬉しかったこ との一つです。勉学面では、がんばった分は ちゃんと評価してもらえたこと。授業中に 先生から「今日は大丈夫?」とか「ついて 来ている?」などと声をかけてもらえるよ うになったこと。
辛かったことは・・・やっぱり一番は勉強で しょうか(笑)。日本が恋しくなることはあ りましたが、留学期間が決まっていたので、 「帰りたい!」とは思いませんでした。逆に、 日本に帰る際に、仲良くなった友だちとお 別れしなければならなかったのは、とても 辛かったです。

Q …留学前と留学後を比べて、自分自身 にどのような変化がありましたか。また 「交換留学生」として、留学の経験をど のように九州大学で活かしていきたいで すか。

中山…自分ではっきり実感するような変 化はないのですが、英語を使うことに抵抗 はなくなりました。「間違ってもいいから、 とにかく何か言え」というように(笑)。
今年もチューターをさせていただいてい ます。ある程度英語は使えるようになっ たと思いますし、自分自身が留学中に言 葉が通じない苦労、異国で学ぶことの大変 さを体験しているので、日本に来た留学生 の皆さんの気持ちが分かるのでは、前回チ ューターだったときよりも助けになれるの ではないかと思います。

Q …最後に、これから留学しようと思っ ている学生へアドバイスをお願いします。

バースデーパーティーに集まってくれた寮のみんなと

中山…どこの国に留学しようと、外国に 行けば、文化の違いなど学ぶことはたくさ んあります。本当に様々な考えを持った 人がいます。留学先でいろんな人に会って ほしいと思います。それは、自分には大い に意味のあることでした。
 友だちを作るには、言葉のハンディがあ るわけですから、日本にいる時よりも努力 して積極的に自分をアピールすることが 大切です。分かってもらおうと働きかけて、 興味を持ってもらう。いったん興味を持た れたら、いろんな人が話しかけてきてくれ ます。
留学は確かに大変なこともたくさんあ りますが、期間は限られています、自分が 楽しむことのできる留学をしてください。

来年四月の大学院進学が決まっている 中山さん。英語を完璧にするため、自分 の研究を深めるためにも、再び留学でき ればと思っているそうです。修士課程修 了後は、国連やN G O などの国際機関 で働きたいとのこと。将来、国際舞台で 活躍されることを期待しています。

※海外派遣留学制度やチューターにつ いてのお問い合わせは、留学生課 (0 9 2 ー6 4 2 ー2 1 4 3 )へ。


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