九州大学の同窓会組織は、部局別同窓会や地域別同窓会など、全国各地だけでなく国外にもあって活発に活動しています。それら同窓会相互の交流や連携の推進を目的に、「九州大学同窓会連合会」が発足したのが平成11年3月。以後、同窓会相互の連携や協力は積極的に進められており、「財団法人九州大学後援会」(仮称)の設立は、その大きな果実の一つです。
 このページでは、そんな同窓会をご紹介します。(投稿も歓迎します。)第2回の今回は、九州大学女子卒業生の会として、活発に、ユニークな活動を続けている「松の実会」です。

女子卒業生の会「松の実会」

会長 梁井迪子

「松の実会」の歩み

 九州大学を卒業した女性たちが学部を超えて集まり、九州大学女子卒業生の会「松の実会」を発足させて、早くも三十四年を迎えます。この誕生のはじめから参加してきたものの一人として、発足当時のみんなの若々しく張り詰めた、使命感いっぱいの表情をなつかしく思い出します。

 それは男女共学が当たり前となり、男性と同等に教育機会を恵まれる喜びを持って、女性の高等教育への進学が急激に進みはじめた時代でした。国立大学へも女子学生がぐんぐん入学してきましたし、六十年代にはじまったフェミニズム運動など女性の生き方の変化が確実に見えてきた時代でもありました。しかし一方で、大学を卒業しても女性は家庭に入ってしまうから税金の無駄使いだと、「女子学生亡国論」が出てきたりもしていました。

 そんな昭和四十一年の夏のある日、短大で教職についていた私のところへ「女子学生入学制限について話し合うから集まるように」と連絡があり、会場となった薬学部講堂へいくと、理系、文型、いろんな学部から先輩、後輩、また専業主婦も有職者もと、さまざまな人が、九州大学出身の女性という絆でたくさん集まっていました。学部や年齢の垣根を越えた、こんな広い出会いは、お互いに学生時代にも経験していなかった初めてのことでした。そこで、「女子学生が多くなると就職や研究者養成に支障をきたすから、女性の入学を規制するというのは、教育の機会均等からおかしい。薬学部だけの問題ではない。後輩のために反対しよう。またお互いにネットワークを作って情報交換をしながら助け合ったり、後輩の女性の進学や就職のためにもっと情報の提供をしていく必要がある。」など話し合いました。こうして九州大学女子卒業生の会結成の気運が盛り上がり、昭和四十三年五月の総会で第一代会長に中村栄子さん(文S二八)を選出して会としての活動を始めました。

 会長をはじめ幹事会を学部ごとにまわしており、今ではほとんどの学部が事務局を経験しています。会員の数も多くなり、総会や、年一回発行の会報も充実し、社会のさまざまの分野で活躍している会員の様子が、全国から聞こえてくるのはうれしい限りです。

女子学生の現状

 全国的に、年を追うごとに、女性の高等教育への進学率は高くなっており、一九八九年以来、女性の高卒後の進学率は男性を上回るようになりました。しかも、はじめは、短大、専門学校が多かったのですが、大学への進学率が上昇してきました。一九九〇年には女性の大学進学者と短大進学者の比はほぼ四対六だったのが二〇〇〇年には六対四と大学と短大が逆転しています。専攻分野も文系、理系共にずいぶん広がってきました。雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法の制定などで、女性の職種も広がり、専門職、管理職をめざす女性も増えてきたため、大学、大学院への女性の進学はもっと進んでいくでしょう。

 九州大学での女子学生の進出もめざましいものです。平成十三年度の入学者数二千三百七十一人中、女子学生は六百九十四人、二十九%です。しかも、全学部にわたって女性はチャレンジしています。九大法学部の四十一%が女子だなんて、この学生の親世代の卒業生には信じられないことでしょう。

 ただ数が多いだけではありません。女子学生はよくがんばっています。たとえば平成十三年、九州大学の目玉として新設された特別コース「二十一世紀プログラム」最終合格者は平成十三年度、二十名中、女子十五名、平成十四年度、二十二名中、女子十六名となっています。

 二十一世紀は女性の時代とも言われますが、二十一世紀の九州大学はどんなになっていくのでしょうか。

最近の活動

 現在、教育学部卒業生で事務局をしています。野田敦子前会長をはじめ薬学部の前事務局の努力で、天神の学士会福岡支部の中に事務局をおかせていただき、専従の事務局員(安藤房子、理S四十九)もでき、会員のお便りや会報の内容、総会報告などホームページも開設しました。
(URL http://soumuhp.ofc.kyushu-u.ac.jp/alumni/index.html)

 平成十三年度の総会を福岡市シーホーク・ホテルでひらきました。このホテルには宴会営業部主任の嶋田和泉さん(法H三)のほか二名の会員がいます。

 来賓として梶山千里総長をお迎えし九大の未来の展望などをうかがいました。福岡県副知事稗田慶子さん(医S三六)、福岡市助役坂本雅子さん(医S四二)に乾杯の挨拶などをしていただきましたが、会員の幅広い活躍を象徴しているようで嬉しい事でした。プログラムの中でシンポジウム「異色のキャリア−自分の行き方を探して−」として教育学部を出て税理士になった権藤説子さん(教S四九)をはじめ、出版社社長、村山由香里さん(文S五七)、(株)岩田屋の藤田宣子さん(文S五八)、タイ政府官公庁の陣内幸子さん(文H二)、国際協力事業団の上好貴子さん(理H十)、そしてシーホーク・ホテルの嶋田和泉さんに、これまでの歩みなどを話してもらいました。司会はRKB毎日放送の大村由紀子さん(文H一)です。若い世代の積極的で意欲的な働き方にふれて、刺激され、元気をもらうことができましたし、在学生や留学生の参加もあって、楽しい会となりました。(お仕事の都合で総会当日参加できなかった浜松赤十字病院皮膚科医師の中田珠美さん(薬S六二)、同時通訳の椋本由起子さん(文S五三)の記事はホームページに掲載しています。)

 こうして「松の実会」の歩みを振り返ってみても、この間の女性の生き方や、女性を取り巻く社会環境の変化の大きさには感慨深いものがあります。これまでに、この会の存在意義を問い直したことが何度もあります。しかし、私たちの受けた教育を会社に還元していきたい、そのために就職、賃金、身分などの差別、家庭生活、育児、介護などの状況など、お互いに助け合い、励ましあっていきたい課題が、まだ沢山あることを再認識してきました。

 職業の有無、既婚、未婚、子供の有無、年代の相違など、様々の環境の違いの中で、当面する課題も、参加できる時間その他も異なっていて、この会の運営自体が困難な課題を持っていますが、事務局会議や総会での会員の笑顔や、遠方からのお便りに支えられて、本当に、女性も男性も共に、真にのびやかに生きられる社会をめざして、より大きく活動していきたいと思っています。

(やない みちこ 昭和三四年教育学部卒)

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