新谷恭明・折田悦郎編
海鳥社
A5判256ページ(2002.3)
しんややすあき・大学史料室副室長・
大学院人間環境学研究院教授
おりたえつろう・大学史料室助教授

◎著書紹介

大学とはなにか

―九州大学に学ぶ人々へ―

 九州大学の大学史料室を中心に本書を刊行しました。国立大学では初の低年次教育における大学論、「大学とは何か―ともに考える―」(総合科目)の講義録をもとにしたもので、大学、特に本学に学ぶ若者たちに大学で学び研究することの意味を伝えようとしたものです。言うまでもなく、現在の大学は様々な問題を抱えています。例えば、大学自体が新たな変革を求められる一方で、学生たちにも大きな変化が見られるようになりました。何よりも大きいのは、学生自身のなかに自らが〈知〉の主役であるという自覚が欠落してきたということです。このような状況をどうすれば変えられるか?自らが学ぶ(九州)大学というものについて知るというところから始めるべきであろう、と私たちは考えました。それはまた、教官の側にとってはCOE(注)の原点を学問的に確かめる作業でもありました。

 ところで総合科目の講義や本書の編纂には、常に大学史料室にある史料・情報を最大限に活用しました。本学がCOEとして発展していくとき、大学の事務文書を収集し、大学の歴史や組織について研究するアーカイブセクション(大学史料室)の果たす役割が極めて重要であるということを再確認した次第です。

古河鉱業からの寄付を基に創設された九州帝国大学工科大学(1914年)
『大学とはなにか』の第9章「地域社会と大学─九州大学の場合を主として─」 〈159頁〉に掲載されている写真。
九州大学大学史料室蔵。

 なお本書は昨年10月に第1回総長賞を授与された九州大学教育研究プログラム・研究拠点形式プロジェクト(P&P 11頁参照)「低年次教育における九州大学史カリキュラム開発に関する研究」(研究代表者新谷)の成果の一部であり、出版にあたっては多くの人たちの御協力を得ました。なかでも出版・資料提供等において、梶山千里総長、杉岡洋一前総長、柴田洋三郎前副学長、本部事務局企画広報室の御尽力を得、財団法人九州大学後援会(大野茂理事長)からは出版助成を頂きました。厚く御礼申し上げます。

 講義録をまとめるという形をとっていますが、それだけではなく、広く大学論・大学史の出版物となるように心がけたつもりです。本書が九州大学の学生だけではなく、教職員にとってもアイデンティティ確認のための材料になることを望んでいます。そしてさらには、高校生・予備校生等、九州大学を目指す人たちにも読んでもらいたいと思っているところです。

 以下に、本書の目次を掲載します。

(注)COE:卓越した教育研究拠点。Center of Excellenceの略。

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