写真は、農学研究院の田中浩雄教授がこの制度を利用して訪れたMID SWEDEN UNIVERSITY。
(上)あちこちに配置される落ち着いた団らんの場。
(下左)入るにはIDが必要な同大学の研究棟。
(下右)地下道で結ばれる同大学の一部。

 農学研究院は、国際交流による教育・研究の活性化を目的に、一定の条件を満たした教官に対し、1年以内の海外研修を与える「農学海外特別研究員制度」を平成13年度からスタートさせた。これは、米国等で通称サバティカルリーブ(*)と呼ばれている長期有給休暇制度を、本部局向きにアレンジしたものである。

 農学研究院では、従前から文部科学省在外研究員の派遣について、世界水準の教育研究者の育成を目指し、効果的な選考方法を検討していたが、長期(甲)在外研究員の応募を原則45歳以下に絞り、かつ、選考に当たっては部門間の機会均等を図りつつ、内容による実質審議と若手を優先する方向へと内規を改正した。

 これを受けて、本制度は、応募から閉め出される中堅以上の教官の長期海外渡航の機会確保と、本研究院の中・長期計画に取り上げられた教育・研究活性化のための研修策の具体化である。制度の概要は、「農学研究院の教官は、在籍期間10年につき、1年以内の海外研修を1回行使できる。決定は、本研究院国際交流委員会が行う。なお、経費は各人の努力で用意し、私費、公費の制限を設けない。」というものである。一見当然のことで、本制度がなくても支障はないと感じられる方も多いと思われる。しかし、各種派遣制度等に応募し決定した渡航の場合と異なり、自発的に長期海外研修をする場合に、大義名分の弱さ(?)により不在中の職務補充等で悩んだり、途中で諦めた先生方も多いのではないだろうか。永年勤続表彰にリフレッシュホリデーなる年休使用の休暇がセットされているのは何故であろうか。本制度は、これらのことを考えていただければ、その意味するところがお分かりいただけるのではないかと思う。

 本制度の利用者は、これまで教授1名(2ヶ月間)、助手1名(1年間)であるが、後者については、資格取得早々の出発であった。ここに帰国された先生の報告書の一部を紹介したい。「農学海外特別研究員として、2ヶ月近く研究と調査に“ほぼ”専念できたことを先ず感謝する。(中略)それでも、研究概要欄(報告事項の一部)に記したような種々の新しい考えや知見、研究手法を得、また建物や薬品の管理、研究室の運営、さらには一般社会の違った習慣やシステムの一端を体得できたことは大変有意義であった。本制度の目的は『帰国後の教育・研究の活性化を促すこと』とされているが、程度の差はあれ、必ず活性化を促すことができると確信するので、できるだけ多くの教官が活用されることを希望する。」

 研究者派遣による教育・研究の活性化を図るには、上述のように一方で派遣効果の可能性が高い若手教官に重点を絞り、他方で逆に個々の自助努力により全員の派遣を助長させる制度の整備を図る等、個々の課題に対し現場レベルでの規制と緩和の再構築を進めていくことが重要で、このような地道な改革への取り組みの一つとして本制度の制定が大きな成果をもたらすのではないかと思われる。

 ベテラン教授の「近い内に是非利用したい。」との声や、中堅助教授から制度の問い合わせ等もあり、今後利用の増加により、本研究院の教育・研究がますます活性化されることを希望している。

(文責:前農学部庶務掛長 吉竹 正長)
(*)サバティカルリーブ:大学教員などに、研究のために一定期間与えられる長期有給休暇。サバティカルイヤーともいう。

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