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外国からみえた方々による九州大学訪問記

六本松と箱崎を通う間に見つけた“喜び”

比較社会文化学府 博士後期課程 黄英哲(台湾)

 4年前に名古屋大学を卒業し、就職のために母国の台湾に帰った後、4年後の今日、又チャンスに恵まれて再び大好きな日本へ戻れて嬉しく思っています。今回は結婚した私を引き受けて頂いたのは九州大学大学院比較社会文化学府でした。私の印象では九州大学は伝統と歴史のある名門大学です。しかし、九大に入学した後、ゼミと図書館利用のために、六本松と箱崎の両キャンパスに通うことに苦しんだ時期がありました。時々「キャンパスがこんなに離れていて、不便だな」と妻にぐちをこぼしていました。でも、妙なもので、最近天神経由で両キャンパスに通うことを楽しむようになってきました。研究生活の疲れには、両キャンパスの間の移動が気分転換の効果をもたらしているようです。天神を通る福岡の人々とバスに乗っている日本の人々を観察しながら、自分の研究は世の中の人にどのように貢献をするのかをいつも考えています。又、キャンパスが離れているお陰で、研究室ばかりではなく、研究室以外の空間でも物事を考える習慣を身に付けることができました。いつも両キャンパスの移動中考え付いたことを、部屋へ戻ったときに書き取ることを楽しみにしています。

 私の専攻分野は日本語語学と日本語教育学です。今取り組んでいる研究は実際の場面で行われている日本語会話を分析することです。このような研究にどのような価値があるかと言うと、会話における無意識に形成される仕組み、やりとりの技術の整理分析は日本語会話が上手になりたい日本語学習者にとって、有意義な作業であるということです。作業は大変ですが、やり甲斐のある研究だと思います。まず、日本語による非母語話者と母語話者との自然会話や母語話者同士の自然会話を録音します。会話データの使用許可を得たあと、忠実で厳密な文字化作業を行なわなければなりません。それから先行研究の理論を踏まえながら、会話資料の整理分析を行ない、場合によっては、統計数字で論点を証明することもあります。例えば、非母語話者側に上手な会話技術や不適切なコミュニケーションの仕方の整理は、これから日本語を勉強する学習者には参考になります。又、母語話者の日本人にとっては、非母語話者側の日本語使用の特徴を知ることは、日本語による円滑な異文化コミュニケーションにも繋がるでしょう。一方、日本語母語話者が会話で用いる会話技術の整理を通して、日本語の会話教育における見落とされてきた項目が取り上げられると思います。

 将来国に戻って今勉強していることを活かし、日本語教育の分野に携わりたいのですが、日本語会話の構造を理解する作業を進めていく一方、自分が母国語と母国文化をどれぐらい理解しているか気になってきています。チャンスがあれば、台湾の若者と一緒に、台湾の文化と言葉はどういうものかを、考え直していきたいと思っています。

 3年後に九大は新しいキャンパスへの移転作業にとりかかるそうです。一つにまとまった快適なキャンパスができるのを皆さんは楽しみにしているようですが、将来きっと今のキャンパスが懐かしくなると思います。九大キャンパスがひとつになっても、大学生や大学院生たちは教室や研究室に閉じこもって学問を進めるわけにはいかないでしょう。九大生の皆さん、素晴らしい都市があるからこそ、すてきなキャンパスライフができるのです。我々が住んでいる都市、もしくは社会に、自分の勉学や研究がどのように貢献できるのかを常に心に置いておきましょう。


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