国際交流 5

JICA研修員受け入れ十五年

歯学研究院に国際協力功労賞

 九州大学はこれまで、「地熱」「石炭」「歯学」の三つのJICA集団研修コースの委託を受け、多くの研修員を受け入れてきました。本年七月に歯学研究院が国際協力事業団より国際協力功労者として表彰されたのを機に、現在も続いている「歯学集団研修コース」をご紹介します。
歯学部附属病院矯正科検査室での、筋電図に関する実習風景。

 国際協力事業団(JICA)という言葉は既に新聞紙上等で馴染みのあるものになってきつつあると思われますが、国際協力事業団が行っている事業には幅広いプロジェクトがあります。青年海外協力隊や専門家の派遣などはよく知られている事業でしょう。一方で、日本に各分野の人材を招聘して専門技術を修得してもらうという逆の方向の事業もあります。その中に、国際協力事業団が大学などの団体に委託して行う集団研修コースという事業があり、現在九州大学が委託されている唯一のコースが「歯学集団研修コース」です。

感謝状を受けるコースリーダーの中田教授(左)

 「歯学集団研修コース」は昭和六十三年度(一九八八年)から始まった歯学領域における唯一のコースであり、これまでに研修を受けた研修員の総数は百七十二名、出身国は四十一ヶ国(アジア、中近東、アフリカ、中南米、大洋州、旧東欧地域からなる)を数えます。歯科医師を対象とし、講義・実習は英語で行われますが、六ヶ月の研修期間のうち、最初は日本語や日本文化・習慣に関する基本的知識を学ぶ一般オリエンテーションが実施されています。その後四ヶ月以上に及ぶ技術研修期間中は、九州大学内での講義・実習だけでなく、歯科医師会・保健所の歯科検診等の公衆衛生事業、他大学や医療機関の見学なども行っています。歯学全般の知識習得だけでなく研修員各々の専門分野での最新情報やテクニックを与えるために、個々の診療科での見学という時間も設けています。最近は、歯学部学生のボランティア活動の場としても意義あるものとなっています。今年度までで十五回実施してきましたが、研修員のなかには更なる研究のために日本へ留学し博士号を取得した者や、母校等の学部長などとして活躍する者もいますし、当研究院の教官を母校へ講演のために招聘するなど、同コースをきっかけにした研修修了後の交流も盛んになっています。また、本学部とインドネシア大学歯学部、モンゴル医科大学歯学部との学術交流協定は、この研修コースがきっかけとなって結ばれました。これらの成果を踏まえ、平成十一年(一九九九年)には、研修員も交えて、歯学部(大学院重点化以前の名称)が「歯科保健向上に寄与する国際協力のあり方」に関する国際シンポジウムを主催し、歯科保健分野における国際連携の一翼を担うことができたと自負しています。

 このような長年の交流実績と国際協力活動が認められ、本年七月三十一日に当歯学研究院が国際協力事業団より国際協力功労者として表彰され、感謝状を贈呈されました。当日は、コースリーダーとして発足から十五年間にわたり「歯学集団研修コース」に携わってきた中田稔教授が、当研究院の代表として東京の国際協力事業団本部での贈呈式に出席し、感謝状と記念品をいただいてまいりました。この表彰は、国際協力事業団が行う国際協力業務に長年にわたって協力し、特に功績があったと認められた個人及び団体を対象に、昭和五十年度から行われ、昨年度までの受賞者(累計)は四百六十八名、二百十九団体に上っています。本年度は個人二十五名と十四団体が選定されました。歯学におけるこうした表彰は、今回が初めてと聞いています。

 本コースは、国際協力事業団の規則により今回をもって改廃されることになっています。私ども歯学研究院として、新年度から「歯学教育研修コース」として内容を一新して、発展途上国の国際保健に関わる人材の育成に貢献すべく準備を進めています。

 本コースは当歯学研究院における国際協力の一部であり、その他にも学術交流協定や現地調査、共同研究の実施など、様々な活動を続けています。私たち歯学研究院の教職員は、このような地道な活動の積み重ねを大事にしていきたいと考えています。

(文責:歯学部教育研究支援室 太田 里恵子)
歯学部内のJICA研修室での講義

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