Topic
2
二十一世紀COEプログラムに四件が採択

 二十一世紀COEプログラムは、「我 が国の大学に世界最高水準の研究教育 拠点を学問分野毎に形成し、研究水準 の向上と世界をリードする創造的な人 材育成を図るため、重点的な支援を行 い、国際競争力のある個性輝く大学づ くりを推進すること」を目的として、 文部科学省が平成十四年度から開始し た事業です。国公私立大学から五分野 四百六十四件の申請があり、九月三十 日、次のような結果が出されました。

(採択)
 生命科学二十八件
 化学・材料科学二十一件
 情報・電気・電子二十件
 人文科学二十件
 学際・複合・新領域二十四件
 合計百十三件

九州大学からは、次の四つのプログ ラムが採択されました。

生命科学
 統合生命科学(拠点リーダー:藤木 幸夫理学研究院教授)
化学・材料科学
 分子情報科学の機能イノベーション (拠点リーダー:新海征治工学研究 院教授)
情報・電気・電子
 システム情報科学での社会基盤シス テム形成(拠点リーダー:前田三男 システム情報科学研究院教授)
人文科学
 東アジアと日本:交流と変容 (拠点リーダー:今西裕一郎人文科 学研究院教授)

 来年度は、「医学系」「数学、物理学、 地球科学」「機械、土木、建築その他工 学」「社会科学」「学際、複合、新領域」 の五分野が公募されます。

二十一世紀COEプログラム
「東アジアと日本:  交流と変容」について
人文科学研究院長 今西 裕一郎

 このたびの二十一世紀COEプログ ラムの審査において、人文科学研究院 と比較社会文化研究院とが合同で案を 練り申請したプロジェクトが、人文科 学分野の一件として認められたことを、 当事者の一人として率直に喜びたい。 プロジェクトの組織は、諸般の事情 を勘案して、拠点部局は比較社会文化 研究院、拠点リーダーは人文科学研究 院から出すという、いささか変則的な 形をとることになった。

 ありとあらゆる分野・領域において、 国際化・グローバル化が唱えられ進行している今日にあってなお、隣国韓国 や中国を中心とするアジア諸国と我が 国との関係が必ずしも円滑とはいえな い状況を、いかにうち破っていくかは、 二十一世紀の日本が取り組むべき大き な課題である。

 そのような状況は、近代日本の対外 政策の錯誤に起因する面が多いとはい え、より根元的には、欧米追随にエネ ルギーを注いできた明治以来の近代日 本国民一人一人の、近隣アジア諸国に 対する関心の偏りと薄さの結果であり、 近代日本のアイデンティティ形成にお けるひずみの後遺症にほかならない。

 ヨーロッパがあってアジアあるので はないのと同様、まず日本があって、 しかる後にアジアがあるのではない。 「日本」とは、先史以来絶え間なく流動 してきたアジア地域の無数の渦巻きの 中の一つ、の謂いである。

 本プロジェクトはこの ような観点から、新たな 日本のアイデンティティの在処を模索すべく、個 別の実体としてのアジア や日本ではなく、相互に 変容をもたらし促す「関 係」としての「東アジア と日本」について、先史 以来近代に至るまでを研 究対象とし、本学の誇る 考古学、歴史学、言語学、 史料学(文献学)の叡知を総合して明 らかにしようとするものである。

 ところで、二十一世紀COEプログ ラムは、従来の科学研究費による助成 とは異なり、たんに研究成果を挙げれ ばよいというものではない。求められ るのは、二十一世紀を担う若手研究者 の育成であり、その育成のための研究 教育拠点の形成である。比較社会文化 研究院と人文科学研究院とが共同でど のような拠点を作り上げてゆくのか。 検討と模索はまだ始まったばかりであ る。学内外の御支援をお願いする。

九州大学本『蒙古襲来絵詞』(附属中央図書館所蔵)


前のページ ページTOPへ 次のページ
インデックスへ