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創立90周年を迎えた演習林

農学部附属演習林長今田 盛生
農学研究院教授

 農学部附属演習林は、大正元年(西暦一九一二年)に朝鮮、樺太に設置されて以来、現在は福岡、宮崎、北海道にあわせて七千ヘクタールを超える森林を持ち、森林に関する教育研究の場として活用されてきました。平成十四年度がその創設九十周年の節目にあたるのを記念して、平成十四年十月一日(火)、福岡リーセントホテルにおいて、九州大学演習林九十周年記念国際シンポジウム、式典並びに祝賀会が開催されました。 シンポジウムでは、大学研究林の運営に関わる四名の方々、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・神沼公三郎教授、韓国慶尚大学附属演習林長・金鍾甲教授、台湾大学演習林長・王亜男教授、九州大学演習林研究部長・小川滋教授による講演が行われました。神沼教授は、変革の波に洗われている日本の大学演習林をとりまく現状と問題点、並びに今後の展望を、詳細なデータとともに示されました。金教授は、旧九州大学演習林であった慶尚大学演習林を管理されており、その森林の現況について紹介されました。王教授は、旧東京大学演習林であった台湾大学演習林の現況と、演習林を活用して実施されているエコツーリズムと自然教育の内容について紹介されました。小川教授からは、九州大学演習林を利用したプロジェクト構築の事例が紹介されました。

90周年記念国際シンポジウム 演習林では、中高生を対象とした
体験授業なども行われている
 

 続く記念式典では、演習林長の式辞、梶山千里九州大学総長の挨拶につづき、元演習林長の宮島寛名誉教授、篠栗町の臼井徳義町議会議長より御祝辞をいただきました。また、長年各地演習林の林野看守をお引き受け下さり、演習林の維持管理にご協力いただいた方々へ、私が演習林長として表彰状をお渡ししました。

記念祝賀会

 最後の記念祝賀会では、坂井克己農学研究院長の挨拶の後、元演習林長、竹下敬司名誉教授の乾杯の音頭を皮切りに、旧林学科卒業生の方々、林野看守の方々、篠栗町、福岡県の自治体関係各位、全国演習林協議会から北海道、東京、宇都宮、玉川、静岡、京都、鹿児島、琉球の各大学の先生方、梶山総長はじめ九大教職員の方々、演習林新旧職員など、総勢百名を超える新旧学内外の方々が、大いに歓談されました。また、この九十周年を機会に、「九州大学演習林九十年史」並びに樹木図鑑「九州大学の森と樹木」の出版が行われました。「九州大学の森と樹木」はすでに一般にも販売されています。

 シンポジウムでの先生方の講演、式典並びに祝賀会でいただいたスピーチ、祝賀会で新旧学内外の方々が交わされた会話の数々、いずれをとっても、広大な面積の森林を長年にわたり研究教育のために維持管理することの大切さ、それを成し遂げて来られた先人の苦労と仕事の重みを考えさせられるものでした。出席した職員一同、これまでの成果を踏まえつつ、より価値の高い演習林を構築し、後世に残すための決意を新たにした一日でありました。

(いまだ もりお 森林計画学)

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