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外国からみえた方々による九州大学訪問記

韓国忠南大学校経商大学経済学科教授(専攻は農村経済、経済発展)
九州大学韓国研究センター客員教授

朴 珍道

 福岡に来てわずか三ヶ月ですが、すっかり九州が大好きになりました。

 九州はまず食べ物、とくに魚が美味しくて地酒が豊富。そして町が綺麗で空気が爽やか。しかも素晴らしい温泉がいっぱい。なによりも好きなのは、九州の人々の素朴で鮮やかな人柄。

 九州は生活の質からみれば多分日本一、あるいは世界のトップクラスに入るでしょう。

 私は一九八三年から一九八七年まで東京大学経済学部に留学した経験があり、福岡に来る前の私には、日本といえば東京のことでした。留学中はそもそも勉強で忙しくて生活を楽しむ余裕がないせいもありますが、ソウルや東京のような大都会の生活が私にはなかなか合いません。びっしり満員の電車で人と体がぶつかるのも嫌ですが、都市の雰囲気がどうもお金臭くて、人々が冷たく感じられます。福岡は自転車さえあれば大体三十分で市内のどこへでも行けるのでとても幸せです。しかも九州の人々には何となく親しみを感じます。以前に韓国人と九州人の遺伝子(DNA)がなんと七十%も一致するという話を聞いてなるほどと思ったこともありました。ソウルから福岡までは飛行機で一時間しかかからなくて東京より近いですし、釜山からは船でも三時間かかりません。

 こんな福岡の九州大学に韓国研究センターができたのはあまりにも当たり前で、少し遅かったなという感じがしないわけでもありません。韓国研究センターは、一九九九年七月一日に韓国国際交流財団による五年間で百万ドルを提供するという協定が九州大学との間に調印されたことをきっかけに設置され、二〇〇〇年一月十九日に開所式が行われました。二〇〇二年十一月に増築され、さらに韓国と九州との学術文化交流の拠点として充実した施設になりました。私はたまたま短期間ではありますが、なんと韓国研究センターの第一号客員教授になり、強い責任感を感じております。自分の研究のみならず韓国関係の統計資料の収集など、センターに実質的に役に立つ仕事をしたいと思っております。

 私の研究テーマは「農村地域の内発的発展に関する韓日比較」です。このような研究は実態調査という名目であちこちに旅行ができるのが魅力です。内発的発展というのは各地域が自然、歴史、文化など個性を生かして地域の発展をはかることですが、それは単に経済的発展だけではなく地域の文化、環境、共同体的価値を大事にします。九州は昔から自立心が強くて創意性に充ちていたので、内発的発展の素晴らしい事例が日本のなかでも多い地域です。 私は五年前に内発的発展で有名な湯布院町、大山町、小国町などを調査して韓国に紹介したことがありましたが、今回は福岡県の星野村と矢部村、熊本県の清和村と三加和町、宮崎県の五ヶ瀬町と日之影町などを歩き回りました。それぞれのムラが自分の個性をだして厳しい状況のなかで頑張っている様子を見て非常に関心しました。それから対馬に行って驚いたのは、本当に韓国と近いことです。対馬から福岡までが百五十キロで、釜山までは五十キロしかないのです。昔は済州島の海女たちが対馬まで来ていたという話を聞いて、一瞬国境とは一体なんだろうと思いました。

 福岡に来てすべてが幸せだということではありません。私が福岡に着いたのは去年十月一日でしたが、三ヶ月の複数のビザをもっていたので外国人登録をしませんでした。私は別に外国人登録を拒否するつもりではありませんが、義務でもないので、できればしたくないというのが本音でした。しかし外国人登録をしないと銀行の口座も開けないのです。銀行に迷惑をかけることは何もないのに、なぜできないかと不思議でたまりませんでした。もう一つ。十月はちょうど日本で北朝鮮の拉致被害者たちが帰国された時期でしたが、毎日朝から晩まで北朝鮮を非難する様子に、ちょっと寂しさを感じました。拉致という起こってはならない非人間的行為に対して怒って非難するのは当然ですが、昔、日本軍の挺身隊であったお婆さんたちが、今でもその真相解明と謝罪を求めて、毎週水曜日に駐韓日本大使館の前でデモをしていることにも、たまには関心をもってくれないかなと思いました。

 最後に余計なことを言ってしまいましたが、今後韓国と九州の間に本当に心温かい交流が深まるように私自身から頑張りたいと思っています。


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