クローズアップ
タウン・オン・キャンパスの形成にむけて
〜新キャンパス・センター地区基本設計を学内了承〜
新キャンパス計画専門委員会委員長・副学長 有川節夫
大学の顔を創る

 「知の時代」といわれる新世紀を迎え、九州大学は、本学の目指 す大学像にふさわしい研究・教育施設の整備、新しいスタイルのキ ャンパス生活を実現するため、二〇〇五年(平成十七年)より福岡 市西区元岡・桑原地区、志摩町、前原市への移転を開始します。糸 島半島の豊かな自然と都市近郊部にある利便性を活かし、産官学の 連携によって整備される九州大学学術研究都市のコアゾーンとし て、九州大学新キャンパスの稼働が待たれています。

 「九州大学新キャンパス・マスタープラン2001 」では、センター地区を、総合研究博物館、事務局 庁舎、全学教育施設等が立地する大学の中心的エリアとして位置づ けています。ここは、「大学の顔」となるメイン・エントランスとし て、また、学生・教職員が集うキャンパスの重心として機能する重 要な地区であり、周辺地域と連携した大学まち「タウン・オン・キ ャンパス」を形成するエリアです。 センター地区を中心に、「楽しみを感じながら学び住むことができ る、広く社会に開かれたキャンパス」を実現することが期待されて います。

 センター地区の形成は、移転第 二ステージ(二〇〇八〜二〇一一年頃)を目指します。

センター地区基本設計の了承

   新キャンパス計画専門委員会では、センター地区の基本設計を行 うにあたり、イースト・センター・ゾーンWG(WG長:竹下輝 和教授)とタウン・オン・キャンパスWG(WG長:坂口光一助教 授)の合同検討チームおよびコアチーム(コアチーム長:坂井猛助 教授)を設置し、二〇〇二年(平成十四年)八月に実施されたプロ ポーザル方式で建設コンサルタントとして指名された黒川紀章・日 本設計共同体(総括責任者:黒川紀章氏)とともに検討をすすめて きました。検討内容は、学外委員を含むマスター・アーキテクト委 員会(委員長:渡邊定夫東京大学名誉教授)の審議を経て、二〇〇 三年(平成十五年)六月の新キャンパス計画専門委員会および将来 計画委員会に報告し、了承を得ました。

 検討にあたっては、新キャンパス・マスタープラン2001 で設定した新しいキャンパス像や求められる性能に応えることを前提とし て、マスタープランで残されていたいくつかの課題に加え、委員等 の関係者から指摘された新たな課題を含む、複雑なプログラムを解 決することが求められました。センター地区は、周辺地域と連携し たまちづくり「タウン・オン・キャンパス」を形成する地区であり、 九州大学学術研究都市推進機構準備会議や地元におけるまちづくり の検討内容との整合をはかる必要があります。建設コンサルタント である黒川紀章・日本設計共同体は、著名な建築家と 組織事務所による建築・都市デザインの職能グループ であり、合同検討チームでとりまとめた多岐にわたる 学内の複雑なプログラムを理解し、優れたデザインを もって、学内の合同検討チーム、同コアチーム、施設部、新キャン パス計画推進室等の協力のもとで、「大学の顔」となるセンター 地区の課題に対する解答を導きだしました。

 センター地区では、国費による施設整備に加え、民間資金等によ る新たな整備手法により、地域連携、産学連携、国際交流を活性化 する施設の建設を予定しており、学内の教職員、卒業生、在校生は もちろん、経済界、国の機関、自治体、地元関係者等、多くの支援 に支えられることになります。事業の継続的展開と世界的学術研究 拠点形成のため、関係各位の支援を引き続きお願いする次第です。

(ありかわ せつお)

■新キャンパス計画専門委員会におけるワーキンググループ等:WG(WG長、構成人数)
(1) 新キャンパス計画連絡会議(有川節夫副学長、24人):
各ワーキンググループの検討内容の調整を行います。
(2) ウエスト・ゾーンWG(大城桂作教授、24人):
ウエスト・ゾーンの地区基本設計に関する検討を行います。
(3) イースト・センター・ゾーンWG(竹下輝和教授、24人):
イースト・ゾーン及びセンター・ゾーンの地区基本設計に関す る検討を行います。
(4) 農場計画WG(名田陽一教授、10人):
農場計画に関する検討を行います。
(5) 福利厚生施設WG(石川捷治教授、13人):
運動施設、課外活動施設、宿泊施設等の計画について検 討を行います。
(6) 未来型キャンパスづくりWG(今泉勝己教授、13人):
交通、情報通信、エネルギー、水等の未来型キャンパスづく りに関する検討を行います。
(7) 情報通信基盤WG(廣川佐千男教授、8人):
情報通信基盤に関する検討を行います。
(8) 地域水循環WG(神野健二教授、17人):
新キャンパスを中心とした広域的な水循環の検討を行います。
(9) 境WG(島田允堯教授、13人):
環境影響評価に関する検討を行います。
(10) 緑地管理計画WG(小川滋教授、13人):
緑地の管理および計画に関する検討を行います。
(11) タウン・オン・キャンパスWG(坂口光一助教授、11人):
センター・ゾーンと周辺地域との一体的な大学まち「タウン・オ ン・キャンパス」の実現に向けた検討を行います。
(12) 文化財WG(有馬學教授、11人):
新キャンパス計画における文化財等(建物、銅像、樹木、埋 蔵文化財等)の保存活用その他について検討を行います。
(13) 交通計画WG(外井哲志助教授、11人):
移転過渡期を主とした交通計画に関する検討を行います。
(14) パブリックスペースWG(池田紘一教授、18人):
パブリックスペースにおけるサイン、ストリートファニチャー、ア ート等に関する検討を行います。
(15) 新キャンパス計画推進室(有川節夫副学長、27人):
新キャンパス計画専門委員会の付託した技術的、専門的事 項について関連部局と協議するとともに、施設部と協力して 検討を行い、必要な事項を処理します。
 このほかに、移転に伴う様々な支障をできるだけ抑えるための方 策に関する検討を行う「移転シミュレーション検討プロジェクトチー ム」、新キャンパスにおけるライフスタイルに関する検討を行う「ライ フスタイル・プロジェクトチーム」があります。

センター地区を東側から見る
センター地区基本設計の検討経緯と概要
新キャンパス計画推進室 助教授 坂井猛
施設部整備計画課 課長 山本隆
共同作業による課題への対応

 新キャンパス計画専門委員会では、「九州大学新キャンパス・マ スタープラン2001」の具体化に向け、二〇〇二年(平成十四年)五 月より一年間かけて、センター地区基本設計を検討しました。 検討にあたっては、まず、イースト・センター・ゾーンWG (WG長竹下輝和教授)およびタウン・オン・キャンパスWG (WG長坂口光一助教授)の合同検討チーム(文系、理系、人間 環境、言語文化、図書館、情報基盤センター、大教センター、センター群、病院地区、事務局 の委員により構成、十八名)、および同コアチーム(全学教育、 共同利用、福利厚生、新キャンパス計画推進室、事務局の委員 により構成、十二名)を編成しました。

 検討開始にあたり、空間的に解決する必要のある課題として、
(1)学園通線との交差、
(2)タウン・オン・キャンパスの形成、
(3)二〇mの高低差のある地形、
(4)大学の顔づくり、
(5)学園通線による分断、
の五点が示され、関係者ヒアリングをもとに設計の与条件を整理しました。

 二〇〇二年(平成十四年)八月には、プロポーザル方式によっ て黒川紀章・日本設計共同体(総括責任者:黒川紀章氏)を建 設コンサルタントとして選出するとともに、敷地や設計条件に 関する詳細な検討を開始しました。

 設計共同体と学内の検討から、新キャンパス・マスタープラン 2001をまとめる時点で不明確であった様々な課題への対応を 「施設整備に関する方針」としてまとめ、二〇〇二年(平成十四 年)十二月の新キャンパス計画専門委員会に報告し了承を得て、 検討をさらに進めました。方針は、以下の三点に集約されます。
(1)イーストゾーン、ウエストゾーンとの一体性に配慮するとと もに、全学の講義室を一体的、効率的に運用するなど、アカデ ミックゾーンの一体性に配慮する。
(2)民間資金の導入をはかる総合研究博物館、産学連携機能、地 域連携機能等を中心に、社会に開かれた九州大学の顔をつくる。
(3)学会研修機能、国際交流機能、居住宿泊機能等により、地域と 連携して国内外から集う拠点をつくる。

 こうした方針をもとに、設計共同体で作業した複数の配置計 画に関する検討を進め、さらには、マスター・アーキテクト委 員会や学内委員会における多角的な検討を重ねて、センター地 区基本設計は一つのかたちに収斂していきました。

センター地区基本設計の特徴

 センター地区基本設計は、主として以下のような特徴を持ちます。
(1)大学の研究・教育理念、求められる機能の実現:全学教育施 設の一体性を重視するとともに、学生・教職員の交流空間を二つ のプラザ、キャンパスモール、キャンパスコモン等に設け、オ ープンスペースとの融合をはかっている。
(2)歴史や伝統、自然景観の保全・形成:学園通線を挟み、東 西に勾配のある地形に沿ったかたちで建築群のスカイラインを 構成するとともに、グリーンコリドーや屋上緑化により、水環 境、生態系等の環境変化を少なくしている。
(3)安心・安全で快適なキャンパス環境の実現:無段差で水平移 動できるユニバーサルレベルを設定し、誰もが利用しやすくす るとともに、わかりやすいキャンパスを実現する。
(4)持続可能なキャンパス形成:環境負荷の低減に努めるととも に、維持管理が容易な計画とし、環境共生型の見える教材とする。

(さかい たける)
(やまもと たかし)

センター地区遠景
センター地区を南側から見る
センター地区総合計画図

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