トピック

─九州大学21世紀プログラム─
「特色ある大学教育支援プログラム」の採択をうけて
21世紀プログラム教育開発研究部門 教授 副島 雄児

1日がかりの高年次プログラム・ゼミを終えて。熱心な討論の後に参加者全員で記念撮影。
学生たちの顔に見えるのは、不安?自信?それとも希望?

文部科学省は、大学・短期大学における特色ある教育への取組を選定 し、これらを重点的に支援・公表することで、これからの日本における 高等教育の改革・改善の指針とすることを目的とした平成十五年度「特 色ある大学教育支援プログラム」を実施しました。各大学・短期大学等 につき一件の申請枠で七月に募集が開始され、書類審査、ヒアリング審 査を経て、この九月に採択結果が公表されました。申請には六つのカテ ゴリーが設けられ、(1)主として総合的取組に関するテーマ、(2)主と して教育課程の工夫改善に関するテーマ、(3)主として教育方法の工夫 改善に関するテーマ、(4)主として学生の学習及び課外活動への支援の 工夫改善に関するテーマ、(5)主として大学と地域・社会との連携の工 夫改善に関するテーマ、(6)その他のテーマ、について全体で六百六十 四件の申請が行われました。

九州大学は、高等教育総合開発研究センターを申請母体として「二十 一世紀プログラム―専門性の高いゼネラリストを養成する学部横断型教 育プログラム―」と題した二十一世紀プログラム課程への取組をカテゴ リー(1)に申請し、書類審査・ヒヤリング審査を通して高い評価を得 て採択されました。(1)への申請件数は百三十九件(うち国立大学二十 一件)、採択件数は十六件(うち国立大学三件)でした。

高年次(3年生)プログラム・ゼミの様子。1時間を持ち時間と して、この日は4人の3年生がこれまでの自分の学習成果を発表 した。発表に続いて担当教官、オブザーバー教官、プログラム学 生からは活発な質問・意見・アドバイスが寄せられ、発表者は今 後の修学活動の方向性を見出すことができる。

九州大学の二十一世紀プログラムは、全国的なレベルでみても新しい 教育理念と方法を実践に移している特徴的な教育課程であると言えます。 九州大学は高等教育の改善・改革に対して精力的な取り組みを行ってき ています。この中で、学部・学科の壁を低くした「自由学際系学部」構 想に端を発し、また、学部・学科の壁を越えた全学の専攻教育科目履修 を可能とした「総合選択履修方式」の導入を得て、二〇〇一年度には学 際的な修学形態を可能とした「二十一世紀プログラム」が実現しました。

二十一世紀プログラムの特徴は次のようにまとめられます。

学生募集人員は学士課程の各学部・学科から一名の枠の拠出によっ て設定され、各学年二十名程度。入学者選抜は一次・二次ともアドミッ ションオフィス(AO)方式を採用し、高い資質と意欲を備えた幅広い 向学心を持つ学生の発掘を目指している。

自らの学習上の関心に沿った学問分野の基礎科目を自ら組んだカリキ ュラムによって履修し、幅広い素養を獲得することが求められる。高年 次においては、学生自ら学習テーマを設定し、関連する学部学科の境界 を自由に横断しながら科目選択を行うことが推奨されている。

科目選択が単に離散的な知識教養の集合体にとどまる危険性を回避す るため、チュートリアル、プログラム・ゼミ、課題提示科目、二十一世 紀プログラム英語など、プログラム独自の特色ある開講科目によって幅 広い基礎知識の獲得とこれらの有機的な結合・相互作用を図り、現代お よび近未来の国際社会に直結する問題発見・解決能力を持つ人材の育成 を目指している。

九州大学の取組として全学的支援に基づいて行われており、実施運営 は全学教育機構に設置されている「二十一世紀プログラム実施委員会」 が担当し、全学レベルで選任された基幹教官、学生教育に参画する学内 協力教官・学外非常勤講師を組織し、個別指導的でありながら同時に学際 的な教育内容の提供を実現している。

21世紀プログラムコンピュータ室(六本松地区)で談笑するプログラム学生。コンピュータ室は、 学習・種々の作業・人生相談(?)などあらゆる活動の場でもあり、プログラム学生の学生生活のよ り所となっている。 21世紀プログラム専攻教育科目「課題提示科目」の受講風景。課題提示科目では、多彩な講師陣 によって多種多様な講義が展開され、プログラム学生はこれらを通して自分の修学目標を定め ることができる。

九州大学の二十一世紀プログラムは、教育理念とその実践方法もさる ことながら、運営形態においても、これまでにない新しい手法を導入し ています。しかし、実施三年目の発展途上のプログラムであることも事 実で、今後の体制整備と展開に注目を集めるところでもあります。この 様な時点で「特色ある大学教育支援プログラム」の採択を受けたことは、 二十一世紀プログラムの将来的な展開にとっては重大な意味を持つこと となるでしょう。ここで、九州大学における二十一世紀プログラム課程 のこれまでの「実績と成果」、「問題点と課題」を総合評価し、これらの 結果を全国へ向けて広く公表することが重要となります。今後、高等教 育総合開発研究センターを中心とした二十一世紀プログラム教育開発研 究が一層積極的に進められることが期待されますし、また同時に、これ を資源として九州大学が二十一世紀に求められる大学教育のあり方を探 求し続け、日本の大学教育における先導的な役割を果たすことが期待さ れていると言えるでしょう。

「九大広報」ではこれまでに二十一世紀プログラムと二十一世紀プロ グラム学生が何度も紹介されています。今回は「特色ある大学教育支援 プログラムの採択をうけて」という条件つきで、二十一世紀プログラム 学生の声を集めてみました。留学先からの声、転課程学生の声とともに、 在学生二名に声を聞かせてもらいました。九州大学の二十一世紀プログ ラムへの積極的な取り組みとともに、二十一世紀プログラム学生たちの意 気込みと不断の努力が結集し、実を結ぶことが期待されます。

(そえじまゆうじ)

21世紀プログラム学生の

3年生 河村 茜さん
(アメリカ合衆国ケンタッキー州 Berea Collegeに留学中)


「What is your major?」「I've not decidedyet.」「Double major…」こんな会話が、普 通に行われるアメリカ。21世紀プログラムの特色ある教育課程も、アメリカにあればいた って普通なこと。日本において、21世紀プログラムの存在が一般に認められることを願い つつ、アメリカの学生のように日々勉強し、活発に活動する学生とならなければならない というプレッシャーも感じています。

3年 丸尾 圭祐さん


これまでは立ち上がったばかりのプログラムということで、存在するだけで評価され るようなことが多かったと思います。しかし、3年が過ぎた今、学外・学内を問わずさまざ まな視点から批判・評価を受け、プログラムとしての完成度を上げていく段階に入ったと 思います。今回の採択はその良い契機になるのではないでしょうか。一学生として身の引 き締まる思いがします。

2年 坪田 裕美子さん


21世紀プログラムは設立3年目で、「教官と学生でプログラムの将来を模索しながら作 っている」という感じです。それだけに大変な面もありますが、自分たちで21世紀プログ ラムを変えていく楽しさとやりがいを感じています。今後は、私たちが行っている取り組 みをホームページ等で紹介し、より多くの方々にこのプログラムについて知ってもらえ れば、と思っています。

2年生 濱田 恵子さん
(平成15年度理学部地球惑星学科より転課程)


特色のある、21世紀プログラム。私はその‘特色’に魅力を感じ、転課程しました。 学部と違い学びたいことを学べるという自由さに加えて、あらゆる場面で主体的に選 択し行動することが求められている点は予想以上のものでした。21世紀プログラムの 一員となり、そして今回の採択を受け、このプログラムの特色を生かし発展させてい くのも、自分達学生なのだと改めて感じています。


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