社会から要請される英語能力を
―導入された英語学習システム NetAcademy―
言語文化研究院言語科学部門 助教授 鈴木 右文

NetAcademyを利用した授業風景

NetAcademyのトップ画面
http://gogaku.kyushu-u.ac.jp

リスニングの画面

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2003年6月、九州大学にオンライン英語学習システムのNetAcademyが導入されま した。これは、学内のコンピュータ端末から利用する英語教材で、リスニング・リー ディング・ライティングを訓練するシステムです。在籍する学生や教職員の皆さんに 利用の資格があります。運営は、情報基盤センターの協力を仰ぎながら、言語文化研 究院が担当しています。このシステムが導入された意義は大きく分けて二つあります。

一つは、学生に在籍全期間にわたって英語学習の機会を提供することです。本学を はじめ多くの大学では英語の授業が1・2年次で終了となりますが、本学では、高年次 の少数の希望者向けに、これまでにも言語文化科目Uや外国語コミュニケーションコ ースを提供してきました。これに加えて、誰でもいつでも利用できる英語学習システ ムが設置されたわけです。これにより、学生が在籍中にいつ英語学習の必要性を感じ ても対応できる体制ができたことになります。昨今では国際的な舞台でのプレゼンテ ーションや意見交換といった機会も増えていますので、このシステムを利用して、4 年間のコンスタントな学習計画を立てていただきたいと思います。

もう一つの理由は、国際英語検定試験です。英語学習には教養的な面と実用的な面 があり、いずれも総合的な英語力の開発のためには必要なものです。特に大学らしい 英語教育のあり方として、教養的な側面は不可欠ですが、一方で、実用的能力の証明 として、就職先の企業がTOEIC(Test Of English for International Communication)、 留学先の大学がTOEFL(Test Of English as a Foreign Language)について、一定 水準以上の成績を求めるケースが多くなってきています。しかし残 念ながら、大学で履修する英語授業の時間数は、実用的に十分な英 語能力を身につけるには不足していますので、NetAcademyを利用 して、大いに実用的な能力も身につけ、国際英語検定試験を目指し てください。NetAcademyはTOEICを意識した作りになっています。

九州大学に導入されたNetAcademyには、三つのコースがありま す。一つは「スタンダードコース」で、リスニング力強化50ユニッ ト・リーディング力強化50ユニット・TOEICテスト演習10ユニット の3部分からなり、リスニングの可変速、リーディングの速度設定など、コンピュー タならではの機能も豊かです。「初級・中級者のためのTOEIC テストスコアアップ コース」はスタンダードコースと同様の構成ですが、やや平易な内容となっています。 「IT時代の技術英語〈基礎〉コース」は、基礎的なライティングの訓練を内容とした ものであり、単文単位の和文英訳を中心に、正確な科学英語の作文に慣れることを目 的としています。

実際に利用するときは、学内にあるコンピュータ端末から http://gogaku.kyushu-u.ac.jp にアクセスしてください。利用にあたって必要な情報が掲載されています。 学生はこのページでパスワードを調べるだけ、教職員の皆さんも簡単な登録方法で利 用できます。現在千人を超える学生と、200名近い教職員が利用しています。全国で も、200に近い大学で導入されています。学内の端末からしか利用できないのは残念 ですが、自分のペースで、好きな時間に学習することができます。

このシステムは自習向きですが、私は授業でも週に1コマだけ実験的に利用してい ます。受講者が自ら行動を起こさなければ何も進まないので、講義に比べて主体的に 取り組むことができます。授業時間だけではこなしきれない分量のノルマが設定され、 受講者の頭は休む暇がありませんが、「個人のペースで学習できる」「リスニングのス ピード調節が良い」「受講してTOEICが受けたくなった」「ソフトとして非常によく できている」等の好意的な感想が寄せられていますし、授業期間の前後に実施したテ ストでは、目立った点数の伸びが見られました。もちろんその一方で、システムその ものにも、授業の運営にも、批判的な意見が寄せられていますが、それらを受けとめ て、より受講者の満足度の高い形の授業を目指したいと思います。

言語文化研究院は、授業自体の改善は当然のこと、教材の貸出、LL教室の開放業 務、授業ソフトの共同開発、検定試験による英語力測定プロジェクトなど、九州大学 における外国語教育の総合的デザインにつながる多くの活動をしています。今回のネ ットアカデミー導入も、学生や教職員の皆さんの英語学習に寄与したいとの願いが 込められたものです。

(すずき ゆうぶん/英語学)


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