五月十一日(火)の平成十六年度開学記念式で、法学部OBで前内閣官房副長官の古川貞二郎氏に名誉学位記の授与が行われました。
 本学九人目の名誉博士となった古川貞二郎氏は、昭和三十三年法学部卒、厚生事務次官を経て、平成七年二月から平成十五年九月まで、官のトップである内閣官房副長官として村山、橋本、小渕、森、小泉の五つの内閣を支え、その在任期間八年七ヶ月は歴代内閣官房副長官の最長在任記録となっています。
 開学記念式の後、古川氏は「日本の行政と課題」と題して講演を行いました。
(講演の要旨)
 国の役割としては、次の三つを挙げることができよう。
 @国家国民の尊厳を保持し国際社会における責任を果たすこと
 A国家国民の安全確保
 B国民の安心確保
 総理大臣の職は激務であり、行政組織や法の範囲の中で職務を執行しなければならない。歴代の総理には強い想いを持って就任され、志半ばで退陣されたという方も少なくない。しかし、ここ数年で行政手法は大きく変わり、政と官の関係も改善している。その一例をご紹介する。
記念講演を行う古川氏
 二〇〇一年五月十一日の熊本地方裁判所におけるハンセン病国家賠償請求訴訟判決について、政府は控訴しないことを決定した。判決を受けた閣議においては、諸事情から控訴やむなしということだったが、その翌日、五月二十四日の早朝、当時の福田官房長官から自宅に「どうかならないか」との電話があった。私は「検討します」とお答えして関係各省と相談し、「国家賠償法、民法の解釈の根幹にかかわる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにする」旨の政府声明を出すことで控訴断念が可能との確証を得、同日夕刻の小泉首相の控訴断念の記者会見、翌二十五日の政府声明につながった。政と官が知恵を出し合い、総理の想いを実現した例である。
梶山総長(左)から名誉学位記を受ける
 何事にも逃げまい、挑戦する気持ちを失うまいと今日までやってきた。
 権限と責任が乖離していることは現代の大きな問題。政治家やリーダーに限らず、言動に責任を持ち、実現に努力することが大切。
 私は、九州出身、九州大学出身であることに誇りを持って今日まできたし、それはよかったと思っている。
 親でも他人でも、自分以外の人のために何をしようと努めたかが、その人の評価の基準となるような社会でありたい。志を高く持っていただきたい。


患者さんの洗髪をしているところです

 五月十三日(木)九州大学病院は看護の日にちなんで第七回「ふれあい看護体験」を実施しました。これは、看護を志す人や看護に関心のある人等、一般市民に実際に病院で看護を体験していただき、健康を害している人の苦しみや不安を少しでも理解し、生命の尊さや看護の大切さ、そして看護がやりがいのある仕事であることを感じ取っていただくことを目的とするものです。
 今回は三十七名の高校生が参加し、十五の病棟に分かれて患者さんの部分清拭、足浴や散歩、自らも病院給食を体験したり、参加者同士で血圧測定を行うなどして、一日看護師の修了証が授与されました。



熱気あふれるパネルディスカッション風景

(左から)武田 健二氏、村上 孝三氏、小寺山 亘氏
 五月十四日(金)、東京の経団連ホールにおいて、二十一世紀COEプログラム拠点形成発表会「九州大学の挑戦:研究戦略と将来構想」を開催しました。当日は、大学関係者や産業界等から約三百六十人の参加者があり、独立行政法人科学技術振興機構などからも多数参加いただきました。
 発表会では、最初に、梶山総長による九州大学の将来構想についての説明、そして二十一世紀COEプログラム採択拠点を中心とした九州大学紹介ビデオの上映がありました。続いて、平成十五年度二十一世紀COEプログラム採択拠点リーダーである名和田新医学研究院教授、中尾充宏数理学研究院長、松藤泰典人間環境学研究院教授、村上敬宜工学研究院教授、栃原裕芸術工学研究院教授から、各拠点のプログラムの概要及びこれまでの取組について発表がありました。
 「産学連携の新しい展開に向けて」と題して行われたパネルディスカッションでは、パネラーの橋本正洋経済産業省産業技術環境局大学連携推進課長、古畑文弘大日本インキ化学工業常務取締役、武田健二日立製作所研究開発本部研究アライアンス室長、村上孝三大阪大学先端科学イノベーションセンター副センター長・大学院情報科学研究科教授及び小寺山亘九州大学知的財産本部長から、産学官連携の取組の現状についてそれぞれの立場からの発表があった後、モデレーターの中村伊知哉スタンフォード日本センター研究部門所長の進行により、産業界と大学の間、政府や地方自治体を含めた関係における連携の現状や”包括連携“を含めた今後の産学官連携のあり方について意見が交わされました。
(企画部研究戦略課)
梶山総長による将来構想の説明に続き、拠点リーダーによるプログラム概要の発表が行われた。
パネルディスカッションでの、(左から)中村 伊知哉氏、橋本 正洋氏、古畑 文弘氏経団連ホールには各界から
約360名の参加者があった。

 九州大学は、海外での情報収集・発信等の活動のために、九州大学海外オフィスを平成十六年四月、ロンドン、カリフォルニア(シリコンバレー)、ミュンヘン、ソウルの四カ所に設置しました。英国、米国、ドイツ、韓国における拠点的オフィスとして、今後、九州大学に関する情報を各国へ発信するとともに、情報収集、九州大学の諸活動への助言などを行います。
 各オフィスの所長は、次のとおりです。
ロンドン・オフィス(英国)
 山田 直(ただし)氏
 文部科学省科学技術政策研究所国際客員研究官
カリフォルニア(シリコンバレー)・オフイス(米国)
 松尾 正人氏
 日本ゼオン株式会社顧問(工学部OB)
ミュンヘン・オフィス(ドイツ)
 
 ミュンヘン大学名誉評議員(東京大学名誉教授)
ソウル・オフィス(韓国)
 朴 寛善(PARK KWAN-SUNパクカンソン)氏
 SY hitech 常務理事(工学部OB)
 六月十日(金)には、梶山総長、松尾シリコンバレーオフィス所長、山田ロンドンオフィス所長が出席して、また六月二十四日(木)には、朴ソウルオフィス所長が出席して、オフィス・プレート(伊万里焼)の授与が行われました。

(左から)松尾シリコンバレーオフィス所長、梶山総長、山田ロンドンオフィス所長
オフィス・プレートを授与される朴(Park)ソウルオフィス所長
【梶山総長の談話】
 これからは、九州大学の活動を学外にどう伝えるかが重要。各オフィスには、九州大学を海外に知らせる活動とともに、海外の学術情報や産学連携情報の収集、各国同窓会の組織化など大いに期待している。松尾所長にはすでに米国の同窓会を組織してNPOを立ち上げていただいた。山田所長からは毎月英国の大学事情など大量のレポートが送られてきている。今後さらにこのような海外オフィスの数を増やしていきたい。

【松尾所長の談話】
 アジアは米国を見ていると感じる。進んでいる部分は欧米から学び、それを料理してアジアで生かすことが必要。情報収集・発信などの他にも、米国大学との共同研究の橋渡しなど、九州大学をより強くするお手伝いをしたい。

【山田所長の談話】
 大学法人化という点でも英国の大学は先行例として参考になることが多く、競争と協力共存のバランスが取れている。九州大学とは、妻の曾祖父が九州帝国大学初代総長山川健次郎という縁があり、発展のために力を尽くしたい。

【朴所長の談話】
 私が總務副會長を務めている在韓國九州大學總同窓會には会員が約六百七十名いて、メンバーには、政界、官界、学会などのリーダーも多く、毎年定期總會を開催し、「同窓會消息」という機関誌を発行するなど、活発に活動している。他の拠点やオフィスとも連携して、九州大学のアジアでの活動の一助となりたい。


基調講演を行う曹兆敏 上海交通大学科学技術処副処長
 知的財産本部は、六月四日(金)に北九州市のアジア太平洋インポートマートで『国際技術交流セミナー』を開催しました。本セミナーは、上海交通大学との共催で行われ、九州の地場企業やアジアビジネスに関心のある日本国内企業と、中国などの海外企業とのビジネスマッチングや技術交流促進の拡充を目指しており、地元企業、自治体、マスコミ、大学関係者など約百二十名が参加しました。
 セミナーは、小寺山亘理事・副学長兼知的財産本部長の開会挨拶にはじまり、曹兆敏上海交通大学科学技術処副処長による「中国市場が求める九州との産学連携」と題した基調講演、國吉敏彦九州大学客員教授兼清華大学客員教授による講演「最近の中国市場の動向〜中国市場で求められているものとは〜」が行われました。
 さらに、「九州地域企業にとっての中国ビジネスとは〜上海交通大学―九州大学間の成功事例に見る新たな価値創造の試み〜」と題したパネルディスカッションでは、パネラーとして、曹兆敏氏、國吉敏彦氏に加え、実際に中国に進出した九州地域の企業の代表として松島徹(株)松島機械研究所代表取締役、村地紳一郎大電塑料(上海)有限公司総経理が参加し、谷川徹知的財産本部副本部長の進行により、中国ビジネスにおける現状や留意点並びにアジアビジネスにおける大学の関わり方や今後の技術移転について意見が交わされました。
 また、隣接する西日本総合展示場では、六月三日(木)〜五日(土)の会期で「アジア産業交流フェア2004」が開催され、昨年に引き続き上海交通大学と合同でブース展示を行い、両大学による国際連携の取り組みを紹介しました。

 五月十七日(月)、第一回総長選考会議が開催されました。
 国立大学法人法によれば、学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて文部科学大臣が行いますが、その申出は総長選考会議の選考によるものとされています(国立大学法人法では「学長選考会議」)。
 この日は議長に鎌田迪貞九州電力(株)代表取締役会長(経営協議会委員)を選出し、総長の選考方法などについての審議が始まりました。
【総長選考会議委員】
● 経営協議会において選出された委員(7名)
石原  進…九州旅客鉄道(株) 代表取締役社長
鎌田 迪貞…九州電力(株) 代表取締役会長
倉地 幸徳…(独) 産総研年齢軸生命工学研究センター長
近藤 秋男…全日本空輸(株) 最高顧問
重渕 雅敏…東陶機器(株) 取締役会長
竹嶋 康弘…福岡県医師会会長
藤井 龍子…前内閣府情報公開審査会委員
● 教育研究評議会において選出された委員(7名)
植田 信廣…大学院法学研究院長
荻野 喜弘…大学院経済学研究院長
大城 桂作…大学院工学研究院長
前田 三男…大学院システム情報科学研究院長
山本 健二…大学院歯学研究院長
正山 征洋…大学院薬学研究院長
今石 宣之…先導物質化学研究所長

 平成十六年五月二十日(木)、フレンドシップ奨学生証書授与式が行われました。
 この奨学金制度は、世界各地域・各界における重要かつ有力な人材として将来を嘱望される卒業生を輩出している有力大学の学生を本学に招き、国立大学法人として展開する本学の世界戦略の中で、将来にわたってその国の指導者として、本学の良き理解者たる人材育成を図ることを目的としています。平成十六年二月二十日に国際交流委員会において承認されました。
 この奨学金制度に基づく受入れは今回が初めてで、フランスの三つのグランゼコールから本学に留学した五名の学生に対して、総長より奨学生証書が授与されました。
 なお、フレンドシップ奨学金制度の詳細については、下記URLをご参照ください。

http://www.isc.kyushu-u.ac.jp/intlweb/


プロバンス大学副学長(フランス)
 5月12日(水)、Michel Giraudプロバンス大学副学長が、九州大学を訪れ柳原理事(国際交流・留学生担当)と懇談しました。
 Giraud副学長は、大学間交流に関する意見交換を行うため本学を訪れたもので、今後の大学間交流について、積極的な意見交換が行われました。


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