TOPICS
01
戦略的教育研究拠点として
三つのセンターを新設・拡充

 世界最高水準の教育研究拠点(COE)を目指す九州大学は、重点的に推進する戦略的教育研究拠点としていくつかのセンターの新設・拡充を計画していますが、平成17年4月、そのうちの3センターの新設・拡充を行いました。

(未来化学創造センター)

 21世紀COEプログラム「分子情報科学の機能イノベーション」(拠点リーダー/新海征治工学研究院教授)は、分子の持つ「情報」という特性に着目し、「情報」と「ナノテク」を結びつける新しい分子情報学という学問の創造を目指しています。
 「未来化学創造センター」は、ここで得られた成果をフル活用し、未来化学産業として期待される「情報」、「新物質」、「光」をキーワードとするナノテクを基盤にした化学研究の推進と、得られた新物質・新技術をすばやく実用化へ結びつけるためのトランスレーショナル研究を展開します。
 また、アジアや福岡の組織等との連携により、産学連携の推進、新産業の創出、そのための人材育成など、社会貢献も積極的に進めます。新キャンパスを核に形成される学術研究都市に、ナノテクを中心とした「産学連携交流センター(仮称)」の設置が計画されており、「未来化学創造センター」と福岡市の間で、具体的な相互協力などの検討が進んでいます。

(システムLSI研究センター)

 技術の進歩によって小さなチップがひとつのコンピュータの役割を果たすことができるようになり、パソコンだけでなく、携帯電話やPDA(携帯情報端末)、デジタルカメラやデジタルテレビ、自動車の車載システムなど、システムLSIは日常生活で広く利用されています。
 平成13年4月に設置された「システムLSI研究センター」(センター長/安浦寛人教授)は、システムLSIの特に設計技術の方向性を明確にし、21世紀の社会のデザインに技術の側面から指針を与える活動を展開してきました。
 福岡県と共同で進める「シリコンシーベルト福岡プロジェクト」では、知的クラスタ創成事業による研究のピーク作り、システムLSIカレッジにおける教育事業、産官学連携による地域の総合半導体産業の構築を行っています。また、「全学共通ICカード導入プロジェクト」では、ICカード化した1枚の学生証や職員証で、安全に複数のサービスに対応できるといった新しい認証システムの構築、さらにそれを携帯電話や交通機関のカードと連携させるなどの研究を進めています。
 「システムLSI研究センター」は、専任教員を増やすなどにより研究開発機能を強化し、これまで進めてきた諸プロジェクトをいっそう強力に推進していきます。

(バイオアーキテクチャーセンター)

 バイオアーキテクチャーセンターは、生物生産、生物材料、生物機能をキーワードとした「生物機能デザインに基づいた物質生産プロセスの開発拠点」を構築しようとしています。
 ゲノム全塩基配列解読プロジェクトの進展により、ポストゲノム科学として遺伝子・タンパク質・代謝産物などの網羅的解析が始動し、生物学が新しい局面を迎えています。生物機能を高度に利用するためには、生体機能のネットワーク構造を理解することが不可欠です。生命の青写真は遺伝子ではなく、ネットワーク構造であるとすら言われ始めました。この新しい概念を実用生物に適用する世界初の研究組織を構築することで、画期的かつ実用的な生物生産システムおよび生体物質デザインシステムの構築を目指します。
 さらに、バイオ産業との大型産官学連携を可能にする大規模研究プラットフォーム構築による社会・産業への貢献を目指します。新技術の開発に向けて、世界有数の質量分析メーカーである(株)島津製作所から専任教授が着任するなど、バイオアーキテクチャーセンターは、実用レベルの研究を目指した連携を行っていきます。



TOPICS
02
法学研究院とミュンヘン大学
法学部の取り組み

 2005年3月3日、九州大学西新プラザにおいて、「多文化社会における法概念の受容と衝突」と題するシンポジウムが開催されました。九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト(P&P)の助成を受けた「多文化社会における法概念の受容と衝突」の研究活動の一環として行われたものです。
 この研究は、九州大学法学研究院およびミュンヘン大学法学部の教員を中軸とする研究グループによって進められています。グローバリゼーションが進む現代社会の中で、一方では国際レベルにおいて文化の多様性を保持すること、他方ではそれぞれの国の国内レベルにおいて多文化の共存と接触・対話を実現することがますます重要性を増しています。その中で法が果たすべき役割を考察することがこの研究の課題です。
 3月3日のシンポジウムでは、5人の講演者(ドイツ側4名と九州大学1名)の講演を受けて、九州大学及び西南学院大学の教員がコメントを行いました。ミュンヘン大学の3名の教授による講演は、それぞれ異なった分野に関するものでした(「プログラム」参照)が、そこには、「欧州統合により強まるヨーロッパ法の影響力とドイツ国内法との緊張関係」という共通の問題意識がありました。また、ザーランド大学教授のキウジ氏(ミュンヘン大学で教授資格を取得)は、ローマにおいて外人がどのように扱われていたかを、市民権や民族間取引といった、現代的関心からも興味深いテーマに沿って検討し、ローマ法が、外人を取り込むことで、さらなる展開を続けたことを指摘されました。最後に、本研究代表者の河野俊行教授が、2003年に採択された無形遺産条約・現在議論中の文化多様性条約の論点を紹介し、全体の議論を締めくくりました。各講演・コメントの後では、参加者による非常に活発な議論が繰り広げられました。
 今後私達は、このような日独の共同研究・共同作業の取り組みを一過性のものと終わらせるのではなく、継続的に発展する交流基盤の構築へと進んでいきたいと考えています。本研究作業の実績を背景に、新たな教育分野を構築し、九州大学・ミュンヘン大学共通の講義題目として成立させて継続的に並行実践していくことを当面の目標としています。この実績により九州大学がこの分野における国際的先端的教育研究拠点となることを目指して、今後とも活発な研究活動を展開していきたいと思います。

(法学研究院助教授 角松 生史)

プログラム

@ハインツ・シェッヒ
 ミュンヘン大学教授
「死亡幇助の法的諸問題」
   ディスカッサント
   解説/土井政和(九州大学教授)

Aティツィアナ・J・キウジ
 ザーランド大学教授
「ローマにおける外人像―
 法のモザイクを彩る小石達」
   ディスカッサント
   解説/西村重雄(九州大学教授)

Bミヒャエル・ケスター
 ミュンヘン大学教授
「ドイツ法と欧州共同体法の
 緊張関係の中における約款法」
   ディスカッサント
   解説/河内宏(九州大学教授)

Cダグマー・ケスター=ヴァルチェン
 ミュンヘン大学教授
「平等取扱と契約自由」
   ディスカッサント
   解説/釜谷真史(西南学院大学専任講師)

D河野俊行
 九州大学教授
「グローバリゼーション、文化と国際法」
   ディスカッサント
   解説/吾郷眞一(九州大学教授)


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