インタビュー 「シリーズ九大人」
【九州大学総長・国立大学協会副会長】  梶山 千里


昭和39年九州大学工学部応用化学科卒。昭和44年アメリカ合衆国マサチューセッツ大学大学院高分子工学科博士 課程修了。Ph.D.(マサチューセッツ大学)、工学博士(九州大学)。平成12年九州大学大学院工学研究院長。平成13年 11月から九州大学総長。平成15年6月から国立大学協会副会長を兼ねる。専門は高分子構造・物性、有機材料。


持続的に変革する九州大学づくりを。
二期目を迎える梶山総長に聞く 。
平成十七年八月十日(水)、九州大学総長選考会議は、
次期総長候補者に現職の梶山千里総長を決定しました。
任期は、平成十七年十一月七日から
平成二十年九月三十日までです。(再任不可)
記者会見で、総長選考会議の
鎌田迪貞議長(九州電力株式会社代表取締役会長)は
選考理由として、
「九州大学は、法人化後様々な取り組みを行っており、
伊都キャンパスへの移転という大きな課題も抱えている。
今後とも大学が飛躍・発展していくためには、
梶山現総長に、これまでの実績を基に
引き続き改革に取り組んで頂くことが適切であると
判断した」と述べました。
梶山総長に、二期目を迎えての抱負を聞きました。

―まず、続投が決まっての感想を聞かせてください。

梶山 教育、研究、社会貢献、国際貢献そして新キャンパスづくりなどの重要課題におけるこれまでの取り組みを評価いただいたものと感謝しています。これらを継続して実行し、着実に成果を挙げることが、二期目の仕事の基本になります。
 九州大学総長のなすべきこと、目標は、はっきりしているのです。「九州大学を世界最高レベルのCOE(センター・オブ・エクセレンス:中核拠点)にすること」と、「アジアで最も知名度のある大学にすること」です。そのための仕掛けを作り具体的な行動を起こさなければなりません。やるべきことはまだまだたくさんあります。世界での競争は厳しいですから。

―再選が決まったすぐ後の記者会見で、「教育改革」と「部局の活性化」を重点項目に挙げておられましたね。

梶山 平成十三年十一月に総長に選出されて四年が過ぎたわけで、多くの分野で成果が上がりつつあると感じていますが、その中で、これから特に取り組むべき重要課題、なすべきことがまだ残っている分野も見えてきました。それが、「教育」と「部局の活性化」です。
 教育については、九州大学がどのような教育を行いどのような人材を育てようとしているか、きちんと議論して広く示す必要があります。もちろん、あるべき学生像を示したものとしては、九州帝国大学初代総長の山川健次郎が明治四十四年に行った訓話がありますし、各学部や二十一世紀プログラムは、教育理念や育成しようとする人材像をアドミッション・ポリシーとして示しています。それはそれでいいのですが、九州大学として、「九州大学は、社会の役に立つ、社会の評価に耐えうる、このような人材を育成し輩出する」と、明確で強いメッセージを社会に対して公にし、それをベースにした教育を実践する必要があると考えています。これは九州大学の個性、ブランドを考える上でも必要なことです。それと同時に、学生が大学に対してどのような教育を求めているかを調べ、それに応えていくことも真剣に検討しなければなりません。

―部局の活性化についてはいかがですか。

梶山 九州大学の改革を検討し実行する上で、しばしば直面する問題が、構成員の意識改革と、執行部と部局との情報共有の必要性です。大学が全体として元気であるためには、大学を構成する部局がまず元気であることが必要ですし、執行部と部局が密に連携して動いていることが大事です。私は部局長のみなさんにまず、九州大学の将来構想を反映した部局の将来構想を示してほしいと思っています。
 法人化体制では大学の個性が問われます。大学が自ら掲げた目標の達成度や成果についての第三者による評価が、直接大学運営の基盤を潤しもするし弱らせもする。これは、大学の運営を託された総長にとって、無視することのできない現実です。教育にしても部局の活性化にしても、できるだけ早い時期に学生や部局長と直接話し合い意見を聴く機会を持ち、大学運営に反映させていきます。

―伊都キャンパスでの教育研究も始まり、梶山総長の二期目は、九州大学にとっても新しい歩みが始まる時となります。

梶山 これは既に平成三年に評議会で確認し決定されていることですが、新キャンパスづくりは、単に大学が東から西へ移るのではなく、二十一世紀の高等教育のあり方や社会に対する九州大学の使命を考えた上での、新しい大学づくりなのです。水素利用社会実現に向けた研究など、すでに新キャンパスでなければできない研究や学術研究都市づくりが始まっており、それらを国や自治体、経済界なども強力に後押ししてくれています。その一方で、伊都キャンパスは、一般の方々が散策や催しに参加するなど知的日常生活の一部として利用することができるような開かれた魅力ある場所にしたい。とにかく、二十一世紀型キャンパスで、二十一世紀の市民づくりに貢献することが、社会に対する九州大学の責務です。

 しばらくは引っ越しや工事が続いて大変でしょうが、百年という単位の大学作りを行っているのですから、早く新環境を活かして教育研究を軌道に乗せ、世界的成果を挙げていってほしいと思います。地元の方々には、引き続き工事へのご理解と、教職員との末永い付き合いをお願いします。
 また、医学系地区の再開発も、生命関係分野の教育研究発展のために必要なことですから、新キャンパスづくり同様、着々と進めていきます。
 一期目は、「変革し飛躍する九州大学」を目標に掲げました。二期目は、これまでの成果を踏まえつつ、「持続的に変革する九州大学」を創りたいのです。


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