インタビュー 「シリーズ九大人」


OBの活躍
僑聯海外優秀青年榮譽奬章受章インタビュー

平成15年3月に大学院生物資源環境科学府博士課程を修了し、現在、大塚製薬(株)製品技術部で活躍している呉 博聖氏が、本年台湾の僑聯海外優秀青年榮譽奬章を受章しました。8月に本学を訪れた呉 博聖氏に今回の受章について聞きました。

呉 博聖 氏
(生物資源環境科学研究科 平成15年卒)


―僑聯海外優秀青年榮譽奬章の受章おめでとうございます。受章した感想などお聞かせください。

 表彰されると連絡をいただいたときは、大変びっくりしました。
 私が受章した「僑聯海外優秀青年榮譽奬章」は、台湾から年に一回、海外で優れた活躍・活動をしている人物に対して行われるもので、毎年三月二十九日の(台湾の)青年の日に発表されます。今年の受章者は、私を含めて六名でした。私の場合、国際文化交流面での活動や、九州大学での博士号取得などが評価されたのではないのかなと思っています。今回の「僑聯海外優秀青年榮譽奬章」の表彰は、非常に光栄でした。

―呉さんは、学生時代どのような研究をされていたのですか。思い出話なども含めてお聞かせください。

 私は、台湾の国立台湾海洋大学を平成七年七月に卒業し、台湾で教師をしていました。平成十年四月に九州大学の大学院生物資源環境科学研究科修士課程に入学し、その後博士課程に進学して、在学中は食品中の生理活性物質の分析とその生理活性の評価に関する研究を行って、平成十五年三月に修了しました。実は私の父も九州大学農学部の卒業生なのです。親子二代、九州大学で学んだことになります。
 九州大学の大学院に入学し、留学生会館で一年間生活したときは、他の留学生とお互いの国の料理を教え合ったりして楽しかったですね。日本人の学生や地元の方々とは、色々なイベントを通じて交流できました。また、台湾同窓会の会長を務めたときは、福岡にある領事館の方とも知り合え、これら色々な方々との交流を通じて人間関係など社会生活面で大変勉強になりました。
 また、当時は、私があまり勉強好きでなかったこともあって、研究指導に当たっていただいた先生からは「勉強より商売が向いている」なんて言われたこともありました(笑)。

―呉さんの話し方で、九州大学での学生生活が大変楽しかったことが感じられますね。現在の仕事の内容や将来の抱負などがあればお聞かせください。

 今勤めている会社では、九州大学で行っていた研究を生かして健康食品の開発を行っています。一口に健康食品と言っても、色々なものがあるんですよ。
 将来の夢は、九州大学で学んだことを生かして、日本と台湾の架け橋となるような仕事がしたいです。あと九州大学は私と父の母校ですから、留学生に対する支援など何らかの形で貢献もしたいですね。これからも目標を実現するために、色々な努力を続けていきたいと思います。

―それでは最後に、今九州大学で学んでいる留学生に対して、メッセージをお願いします。

 そうですね。色々な国から留学している留学生同士でも自国の料理を教え合うなど交流を図り、日本人の学生や地元の方々とも積極的に交流を図ってもらいたいですね。私もそうでしたが、これらの交流を通じて色々なことを学ぶことができるし、その後の将来にも役立つことが多いからです。
 最初のうちは、言葉の違いや生活習慣の違いで戸惑うことも多いかもしれませんが、九州大学での留学生活をエンジョイしてください。




学生の挑戦

アキュメンバイオファーマ(株)代表取締役会長兼CEO

鍵本 忠尚 氏
(医学府博士課程眼科学専攻 2年)

―現役の大学院生で、この四月にベンチャー会社を起業されたと聞きました。起業の動機となったのは何ですか。

鍵本 九大病院で眼科の研修医だった頃に私が担当していた加齢黄斑変性症の患者さんから「産まれた孫の顔が見たい」と言われ、対処法がない病気のため、なすすべも無かった経験が発端です。私は、医学部に平成八年に入学し、現在医学府博士課程の眼科学専攻で生体の酵素の管理について研究しています。創薬ベンチャー会社を立ち上げたのは、そのほうが特効薬を早く患者さんのもとへ届けられる可能性が広がるからでした。
 加齢黄斑変性症とは、網膜の中心部にある黄斑部とよばれる組織が加齢に伴って色々な異常が発症する病気で、二〇一〇年には世界中で約一千万人の患者さんがいると言われています。私が立ち上げたベンチャー会社は、この加齢黄斑変性症の治療薬の開発を目的としています。

―なるほど。鍵本さんは幼い頃から「将来は医学の世界で働きたい」と考えていたのですか。

鍵本 いいえ、大学に入学する前までは違いました。両親は内科医なのですが、私は中学と高校で美術部に所属し、絵描きを目指していました。将来絵描きになりたいと考えていましたが両親の姿を間近でみていた影響で、医学部に進路を変更し、猛勉強しました。自分の今の環境に満足していますので、進路変更して良かったなと思います。

―絵描きから医師へ。あまり聞いたことがない進路変更ですね。現役の大学院生ですが、今までの大学生活で何か思い出となることはありますか。

鍵本 アメリカで約三ヶ月、イギリスで約一ヶ月研修を行っていた頃が思い出深いですね。同じ研究室で働いている研究者と日々接していると、常にグローバルな視点で研究しているなと肌で感じられました。きちんと自分の意見を主張し、プレゼンテーションのやり方が非常にうまかったんです。このとき経験したことが、今の仕事にも非常に役立っています。中学、高校で絵を描いていた経験も、頭の中で描くビジョンをビジュアル化して他者に説明するときに役立っています。何でも経験してみるものだと実感しています。

―外国で研究したという経験は、色々な場面で生きているということですね。今後の活動予定などお聞かせください。

鍵本 アメリカの研究機関と共同で、薬へと結びつけるための臨床治験に向けた取り組みを開始しました。これから色々困難な問題も出てくると思いますが、周りのスタッフに恵まれているので解決できると信じています。一日でも早く治療効果の高い薬を患者さんに届けられるよう、スタッフ全員で頑張っていきます。

―最後にこれから九州大学を目指す人と後輩に向けたメッセージをお願いします。

鍵本 色々なものに触れてみる。本人は気付かないことが多いのですが、周りには色々なチャンスが転がっており、そのチャンスの数だけ可能性があります。人と接し、物に触れ、自分の感性を磨いてみてください。「考えられるモノは考えられないモノの中にある」。自分の可能性を信じて、色々なことにチャレンジすれば目的が見つかると信じています。



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